君が好きだから無敵
5
翌日、朝一番の授業で箒の飛行訓練が始まった。
この授業はスリザリンとレイブンクローの合同だ。
「箒の横に立ったら箒に手を翳して。『上がれ』と言いなさい!」
マダム・フーチの言葉でみんなが一斉に声を出し始める。
「上がれ!」
クラリスの箒はじれったく地面をゴロついた。
その横でアギが一発で箒を手にした。
「アギ、すごい!」
「俺、箒に乗るの好きなんだ」
アギは照れくさそうに笑う。
「どうしても上がらないのなら手で持って」
まだもたつくクラリスにフーチの言葉が刺さった。
「〜〜っ上がれ!」
クラリスの意地のこもったかけ声でようやく箒が手に収まっる。
「やったなクラリス」
「まったく、強情なやつだよ……」
ぼそりと嘆いたクラリス。
マダム・フーチはみんなが箒を手にしたのを確認して声を張り上げた。
「これから箒の扱い方を説明します。
さあ、箒をこうやって握って…………」
箒について一通り教えたところで、さあ実践してもらいますよとフーチが声を張り上げる。
「1、2、3で地面を強く蹴り、2メートルほど浮上したら少し前屈みになってそのまま降りてきてください。箒はぐらつかないようにしっかり押さえるように。
では、1、2、3!」
トンっと一斉に地面を蹴る。
クラリスは慣れない浮遊感に少し取り乱したが直ぐにハッとなって箒を握る手に力を込めた。
「体を少し前に傾けて!ゆっくり降りてくるんです!」
ゆっくりと箒が高度を下げる。
地面に足を着けるとみんなワイワイとはしゃぎ始めた。
「はいはい、皆さんまだこれからですよ。
次は移動もしてもらいます。
やり方は変わりませんよ、箒と体の向きを変えるだけです……――」
生徒達はフーチの言葉に熱心に耳を傾けた。
「……次!スリザリン!」
マダム・フーチのかけ声でスリザリン生は箒に跨る。
今は、ペアを組んでパートナーのもとへ飛び、その周りを一周して元の場所に戻るという訓練の最中だ。
「始め!」
クラリスはトンと地面を蹴り前に飛んだ。
みるみるパートナーの女の子が近くなってくる。
彼女の横を体を傾けて曲がろうとすると、勢い余ってパートナーにぶつかってしまった。
少女は倒れ、取り乱したクラリスも箒から手を離し地面に転がった。
「ごっごめん!大丈夫!?」
「うん。だってあんた、ちっともスピード出さないんだもン」
不思議な雰囲気の少女は何事もなさそうに立ち上がった。
「ラブグッド、無事ですか?」
コクリと頷くルーナ。
ピンピンとしたその様子にフーチはホッと胸をなで下ろす。
「安全運転が幸いしましたね。
でもエルブレル、次はもっと高度を上げなさい……スレイダ、私はパートナーの頭上で宙返りしろなんて言ってませんよ!」
マダム・フーチが向こうではしゃいでいたアギを怒鳴りつける。
ちょっとした擦り傷や衝突はあったものの、クラリス達の飛行訓練は無事に終わった。
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