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君が好きだから無敵
2



「ミスターエルブレル、杖は見つかりましたか?」

「は、はい……ごめんなさい……」


息を乱して謝るクラリスにマクゴナガルはふぅ、とため息をついた。


「スリザリン1点減点です。
2人共、席にお着きなさい」


2人が席に着くなり、くるりとアカネがこちらを向いた。


「1点で済んでよかったね。
僕が先生に伝えたときはもっとすごい形相してたんだよ。
そりゃもう眉間に杖が挟めるくらいに……」

「ミスターキョウゴク、なんなら授業が終わるまで教科書を読み上げてもらっていても構いませんが?」


マクゴナガルの注意が飛び、アカネはゲッと口を閉じた。





「くそぉ……どんだけ杖振らせる気だよ……」

「あんな簡単な呪文に時間かけすぎだっての……超退屈ー……」


授業を終えマクゴナガルが教室を去るとアギとアカネはぐったりと机に突っ伏せた。


「そのくせちょっと私語しただけで減点だし……」

「授業なんてそんなものだろ。いいから早く魔法薬学の支度をするぞ」


ジャックがスパッと言い捨てると、2人は深くため息をついた。








「クラリス、出来はどうだ?」

「……薬ってゆうかスライム」


何を間違えたんだろう、とクラリスは鍋を火から下ろして不思議そうに首をひねる。

クラリスの作業を隣で見ていたジャックは、何か言いたそうな顔で規定外の量を投入された薬草の余りを見た。



「……ミスターエルブレル」


教室を見て回っていたスネイプがエルブレルの薬の成れの果てを見て顔を顰める。
スリザリン贔屓な彼も少し寛容しきれなかったようだ。


「私はスライムじゃなく傷薬を作るように指示したはずだが?」

「僕もちゃんと傷薬を煎じたつもりだったんです……」


苦手なスネイプのきつい視線にクラリスが視線を下にさまよわせながら答える。

スネイプは不機嫌そうに早く鍋を洗えと言い捨てグリフィンドールのもとへ歩いていった。



「クラリス、さっきのは薬草を入れすぎただけだ、気にするなよ」


どんよりと鍋を洗うクラリスにジャックが言う。

クラリスが鍋を洗いながら難しい顔で尋ねた。


「最初にいれるネムリグサをちょっと多めにいれちゃってさ、その次のマヒレシアも多めにして均等にしたんだ。まあそれも入れすぎたけど。
取り繕うようにイヤシダケとスティッくずはその倍入れたんだけど、これが原因かな?」

「そ、それ以外何があるっ!」


クラリスの言葉に、ジャックは鍋を洗い終えたのに水を止めることも忘れて叫んだ。


「間違えたと思ったら引き返せよ!なんでそのまま突っ切っちゃったんだ!」

「簡単な薬だし誤魔化せると思って……」

「その結果がこれだよっ!」


クラリスは真面目なジャックの逆麟に触れてしまった。

騒ぎ立てて目を引くジャックをアギが慌てて引きずって行く。

クラリスは更に肩を落として全く落ちない鍋の汚れをこすった。


「随分落ち込んでるね」


クラリスの隣にコリンが並んだ。


「ほっといてよ」


クラリスはちらりとコリンの鍋を覗き込む。
青い薬の色が残っているが、水で漱げばさっとその汚れは落ちた。
クラリスは少しムッとして鍋を洗う手に力を込める。


「そんなにしたら鍋が傷つくよ」

「…………」

「まだ何年も使うんだから……」

「…………」

「ねえってば」

「うるさいなっ!こうしなきゃ落ちないんだよ!」



顔を真っ赤にして声を荒げたクラリスにその場にいた人がピタリと固まり、そしてクスクスと笑い出す。

クラリスはその様子にぐっと眉を寄せた。



「クリービー、洗い終えたなら早く退け。他の生徒にちょっかいを出すな」


不穏な2人の側にぬっとスネイプが顔を出す。


「グリフィンドール5点減点」


慌てて席に戻って行くコリンの背中を睨むと、スネイプは杖をクラリスの鍋に向けた振った。
一瞬でこびり付いていた薬がなくなる。


「エルブレルも早く席に戻れ」

「っはい、ありがとうございます」


驚いた顔で鍋を見つめていたクラリスは、スネイプの言葉にバッと頭を下げて自分の席へ戻って行った。


「クラリス……」


アギが心配そうにクラリスに声をかける。


「アギ……。
スネイプ先生、すごかったね!あんなにスマートに魔法使っちゃうんだよ!」


目をきらきら輝かせクラリスが言った。
アギは元気そうなその様子にホッと息をつき目を輝かせるクラリスに相槌を打った。




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あきゅろす。
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