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小説
第二十三話(R15)
「蛇神様、何をするんですか」

節子は、声を震わせた。

身体が熱い。
確実に彼を欲している。
拍動が煩い。

「そなたは此処に掴まっていればいい」

蛇神が、節子の手を取ってしっかりと衝立を握らせた。
背中を蛇神に向けるよう立たされた節子は、不安になって再度振り返った。

蛇神は、立っている節子とは反対に、その場にしゃがみ込んでしまった。
そして、節子が穿いていた下着をするりと脱がした。

下生えが一本も生えていない女の陰と尻肉が曝け出される。
そこに、そっと蛇神が手を滑らせた。

「あっ」

待ち望んでいた刺激に、節子は背を撓らせた。
蛇神の手は、するすると節子の肌を撫でている。
まずは盛り上がった肉の山から少しずつ下方へ、そして割れている谷底へ。

節子の身体はふるふると震えた。
蛇神に触れられている尻肉は、特に小刻みに揺れていた。
身体の奥底から、じゅわりと悦楽の汁が溢れてくる。
持っている衝立が、かたかたと鳴った。

「蛇神様」

懇願しているのか、はたまたただ泣きそうなのか分からない声で、節子は彼の名を呼んだ。
脳内では、このまま快楽の底に落ちて行きたい欲望と、浅ましい嫉妬心が渦巻いている。

「セツは本当に愛らしい。
この若くて弾けんばかりの尻肉も、まるで桃のようだね」

蛇神が、節子の尻たぶに頬擦りをした。
そして、ちゅっと音をたて、そこにそのまま口付けた。

女の一番の快楽中心点のすぐ傍に、蛇神が居る。
そう思うだけで、節子の総身は悦びに打ち震えてしまう。

蛇神に口付けられた部分が、ひんやりと冷たい。
彼の唇に付いていた唾が空気に触れたせいだろうか。
それがまた、新しい快感を連れて来る。

こんなにも屈辱的な姿勢を取らされても、何の抵抗も感じなかった。
以前であれば、男の前に尻を突き出す格好だなんて、到底考えられなかっただろう。
それなのに、今は新たな快楽を欲している。

蛇神に全てを曝け出したら、どんな恍惚感が湧き出るのだろうか。
だが、本当にこのまま流されてもいいのだろうか。
蛇神には、明確な答えなど何一つ貰っていないというのに。

節子は葛藤した。
欲望の方が明らかに勝敗の軍配を握っているものの、生まれた嫉妬もなかなか消えない。

「さて、どう可愛がろうか」

蛇神が舌を出し、下から掬い上げるように尻たぶを舐めた。
節子の女の陰が、これからの快を期待して、きゅっきゅと締まった。

しかし、そんな浅い刺激ではなく、もっと強い何かが欲しいのだ。
絆されてはいけないと分かっているのに、身体は正直に開いていくばかりだ。

節子は首を左右に振った。

「怖い、です」
「セツ、嘘を言ってはいけないよ。
今のそなたは、恐怖とは無縁の筈だ」

確かに、これから起きるべく未知の世界に足を踏み入れる恐ろしさは無かった。
それどころか、これでは足りない程だ。
何もかも考えられないくらいに、強くきつく甚振って欲しい。

だが、蛇神のその曖昧な態度が引っ掛かるのだ。
蛇神にとっての巫とは何か、どうしてこのような事をするのか、大事な事は何一つ聞けていないままだ。

また舞妓の顔が脳裏を過ぎった。
あの娘も、こうやって蛇神に愛されるのだろうか。

そう思うだけで、益々嫉妬の炎は強く燃え上がっていく。

誰にも渡したくない。
蛇神には、己だけの傍に居て欲しい。
蛇神の優しい声も、美しい顔も、巧みな手管も、全て自分だけのものにしたい。
蛇神の腕の中で嬌声を上げるのも、自分だけでありたい。

蛇神だけが欲しい。

行き過ぎた嫉妬心は、矛先のベクトルを変えて動き出した。
ただ憎々しいだけの黒い感情が、いつしか蛇神を求める欲望へと変わっていったのだ。

他の女が憎いからこそ、今ここで蛇神が欲しい。
他の者に取られたくないからこそ、彼を縛り付けておきたくなった。

節子の欲望は、全て蛇神に向けられた。

尻たぶを突き出す格好では、普段、誰にも見られない場所を余す所なく曝け出す事となる。
だが、恥ずかしさはとうに無くなっていた。
恥ずかしさよりも、彼に更に奥深い場所まで見て欲しいという陵辱願望の方が強かった。

「まずは」

蛇神が、節子の両の尻肉を掴んだ。
そして、その割れ込んだ肉の間に顔を寄せた。

「ううっ」

節子は唸るような声を上げた。
日頃、排泄にしか使わない穴をねっとりと舐められたのだ。

「芳しいね、さすが若い身体だ」

すんすんと臭いを嗅ぎ、またべろりと舐め上げられた。
つい尻肉の中心部が緊張してしまう。

それをこじ開けるように、蛇神が指に力を入れた。
ぐっと押し広げられ、更に舌で蹂躙された。

臀部(でんぶ)の後口は、力を入れていいやら、新しい快楽を求めて口を開けていいやらで、不規則な収縮をした。
すると、その快が伝わったのか、陰核までもが疼き始めた。

しかし、蛇神は尻付近に触れるばかりで、女の陰の方には手を伸ばさない。
そのもどかしさに、節子の膝はぶるぶる震えた。

後口の穴ばかりを何度も丹念に舐められた。
まるで飴でも舐めているようだ。
実際、節子は自身が飴になっているようだと思った。
蛇神に触れられた部分から、とろとろと甘い砂糖蜜が流れている錯覚を覚えた。

「此処も解しておこうね」

そっと尻たぶから身体を離した蛇神が言った。
そうかと思えば、先程まで舐められていた場所に違和感が走った。

「分かるかい、セツ。
私の指が一本入ってしまった」

節子の体内に埋め込まれた細いものが、ゆるゆると動き始めた。
節子は後ろを振り返る事が出来なかった。
ただ衝立に掴まって、来る快楽に耐えるだけだ。

蛇神曰く、節子の後口には彼の指が入っているのだという。
押し込まれれば、何も入っていない筈の膣がきゅっきゅと締まった。
そして、引き抜かれれば、排泄物が共に出て行きそうな感覚が走った。

本来ならば、このような慣れない行為には、不快を訴えていたかもしれない。
日頃、汚物を吐き出すだけの器官に異物を入れられたのだ。

だが、節子は小さく喘ぎながら、蛇神の指をくわえ込んでいた。
全てが官能に繋がった。
排泄感も、一種の快楽だった。

「足を開いてご覧、もっと私に見えるように」

言われるがままに、おずおずと股を開いた。
彼から見れば、さぞかし淫乱な姿に見える事だろう。

その事実が、更に節子を高揚させる。
出来るならばもっと、絶対的な快楽が欲しい。

「二本目をあげよう」

蛇神が一度指を引き抜き、先程よりもやや太いものを突っ込んできた。
彼の指が二本入ったのだろう。

後穴を弄られるのは初めてだというのに、節子の身体は抵抗無く受け入れていく。
寧ろ、しかと悦んでいる。

彼の指二つは、時に不規則な動き方をした。
それがまた、焦らされているようでもある。

「痛くないだろう?
気持ちいいかい?」
「は、い」

蛇神の言葉通り、痛みは無い。
不思議な程に無い。

その代わり、全く弄られない雛尖が、刺激を欲してむず痒くなってきた。
その痒みは、下肢を中心に拡がって行く。

達したい、と思った。
このまま真っ白になって、快楽の果てまで上り詰めて行きたい、と思った。

しかし、蛇神はまた指を引き抜いてしまった。
二本収まっていた節子の後口が、突然無くなった異物を求めてひくついた。

蛇神が小さく笑う。

「三本入ったら、私の陽物も収まるだろうね」
「そんな」
「大丈夫。
ほら、三本目だよ」
「あっ」

三本など入る筈が無いと思っていたが、難なくその全てを飲み込んでしまった。

先程とは比べ物にならない圧迫感に、節子は激しく衝立を揺らした。
背中にじっとりと汗が染み出してくる。
足も、立っていられない程に震えている。

控えめだった嬌声が、一気に高くなった。
目の端にばちばちと稲妻が走った。

三つの細い杭が、細かな動きを見せながら前後する。
時に、中に埋め込んだままいたずらに指を曲げられると、更に高らかな声が上がった。

静かな部屋内に、節子の喘ぎ声が響いた。
蛇神の着物の衣擦れの音もしていた。
後口からは汁など出ない筈なのに、何故だか水音が鳴っていた。

それがまた、濫りがわしくて仕方が無い。

「セツ、どんな感じだい?」

指を出し入れしながら、蛇神が問うてきた。
節子はあられもない声を抑える事も出来ないまま、途切れ途切れに応える。

「蛇神様で、一杯、です」
「そうか。
では、もっと一杯にしてあげようね」

ずるん、と引き抜かれた。
三本もの指を埋め込んでいた後穴は、急に無くなってしまった異物が作った空洞に対応する事が出来ず、ぱっくりと開いたままだった。
それは、節子自身が直接見なくとも分かった。
蠢く体内が、彼を求めて何度も収縮していたからだ。

蛇神が腰を上げる気配がした。
其方を振り返ろうとしたら、すぐに目隠しをされてしまった。
節子が先程までしていた浴衣の帯だ。
その目隠しの布には、彼の香りも染み込んでいた。

「蛇神様、どうして隠すんですか」

突然真っ暗になった視界に、節子はうろたえた。
すると、優しく頭を撫でられた。

「私の真の姿は、さすがの出雲の湯でも敵わないかもしれない。
見えない方がそなたの為だ。
辛いかもしれないけれど、我慢しておくれ」

蛇神が懇ろに言う。
だが、言われている意味が分からなかった。
彼の真の姿とは、一体何の事なのだろうか。

そう考えていると、すぐ傍で衣の擦れる音がした。
そして、また尻たぶを強く掴まれた。

尻肉を拡げられた。
その中心点に、ひやりと冷たい何かが宛がわれる。

その尖端が、先程まで蛇神の指を受け入れていた入り口を軽く突いた。
まるで中の様子を伺っているようだ。

怖いのか嬉しいのか分からなくなって、節子は腰を揺らした。
その直後、全身が強く強張った。

「あうっ」

節子は大きな悲鳴を上げた。
後口の中に、今までとは掛け離れた絶対的な圧迫感が迫ったのだ。

すぐ後ろで、蛇神の息遣いが聞こえた。
宛がわれていた冷たい杭が、ずぶずぶと奥深くまで沈んでいく。
狭い体内が押し広げられていく。
今度こそ立っていられなくなり、節子は腰をひくつかせながら衝立に凭れかかった。

蛇神が言葉を発さなくても、何をされたのか分かった。
彼の肉芯を差し込まれたのだ。
人間とは異なり、ひんやりと冷たい彼の男根は、節子に異種的な快楽を連れて来る。

離れる事が無いよう、ぎゅっときつく抱き締められた。
足が不安定に崩れそうだった節子は、その拘束のお陰で再度踏ん張る事が出来たが、互いの繋がりもまた一際強くなってしまった。

節子は涙を流した。
目隠しをしているせいで、それが頬を伝わる事は無かったが、次から次へと溢れて来た。

「セツ」

全てを押し込んだ蛇神が、一層切ない声を出した。
節子は、短くなった息を繰り返す事しか出来なかった。
彼を押しやっていいのか、このまま飲み込んでいていいのかも分からない。

「そなたの中は温かいね。
蕩けてしまいそうだ」

蛇神が僅かに腰を引いた。
節子は、珍妙な声を漏らしながら数度息を吸った。

しかし、一度引いた腰が、ぱちんと肉を打って再び埋め込まれた。
今度は、肺に溜まっていた酸素が全て逃げた。

「後口だから、根元がよく締まる。
膣であれば、全ての壁が満遍なくきつくなるだろうね。
それも楽しみだ」

様子を確かめるように、蛇神の腰が本格的に前後運動を始めた。
節子の体内の壁は、それと呼応するように蠢いた。

全く触れられていない陰核の痒みが一際強くなった。
そこから、さざ波のような快楽が沸き起こった。

蛇神が緩急を付けて動きを加速させていく。
滑ついた水音も酷く煩くなる。
しかし、節子はそれ以上に喘いだ。

蛇神と繋がっている部分が熱い。
冷たい筈の彼の肉芯も、節子の熱を奪って温度を上げる。

節子は、総身が溶けるようだと思った。
砂糖菓子のように容易く彼を受け入れた後口だけでなく、身体の全てがどろどろに崩れ落ちていくと思った。

強弱を付け、腰を揺さぶる蛇神が言った。

「それにしても、露天の湯が此処まで上手く入り込んでいたとはね。
お陰で、とても滑りがいい」

彼は、仄かに笑っている。
節子の後口の滑りの良さを言っているらしい。
それはどうやら彼にとって、喜ばしい誤算だったようだ。

そもそも、幾ら感じようとも、人間の腸からは快楽を知らせる分泌液が出る事など無い。
だが、今の節子の後口は、膣のように沢山の汁気を帯びていた。

彼の言うように、露天の湯が潤滑油の代わりを為しているのだろう。
そのせいで、節子は今、女の陰を貫かれているような感覚さえある。

それどころか、余りに強く穿たれれば、一つの肉の壁を介して、前の膣にまで快楽が伝わる。
一度も触れられていない陰核にも、陰唇にも、全てに伝染していく。

何故か、埋め込まれた彼の肉芯が形を変えているような気がした。
ただの長細い棒から、いぼのような突起が出たり、舌のような襞(ひだ)で舐められているようなのだ。
目隠しをしているせいで、おかしな幻覚でも出ているのだろうか。

頭の先から足の爪先までもが、蛇神で一杯になった。
それ以外の事が考えられなくなった。
繋がっている部分から、ちりちりした官能が溢れていく。
それは身体の隅々まで難なく散っていった。

彼の肉棒を強く咥え込み、節子は更に背を撓らせた。
与えられている快楽をもっと享受しようと、尻たぶをぐんと突き出した。

「蛇神様っ!」

吠えるように彼の名を呼んだ。
三度呼んだ瞬間には、背筋から尻たぶに向かって、強い電気が走った。
埋め込まれた彼の一部を、ひたすら強く締め付けた。
頭の中に居た蛇神の姿が、一度に弾けて真っ白になった。

節子は、後口に男根を咥えて達してしまった。

「私の名を呼びながら果てるそなたの、何と可愛らしい事」

節子は頂点まで上り詰めてしまったが、蛇神は固く尖ったままだ。
彼は未だ満足していないのだろう。

しかし、ひくひくと震える節子の身体を、蛇神は優しく撫でてくれた。
先程まで穿っていた肉芯も動かなくなった。
快楽の余韻に溺れかけている節子を気遣ってくれているのだろうか。

はっはっと乱れた息で、節子は回された蛇神の腕にしがみ付いた。
背中に彼の体温を感じる。

オーガズムを迎えた節子の脳内は、時間と共にじわじわと落ち着きを取り戻し始めた。
すると、一度昇華されかけた蟠りの芽も、ぽつぽつと芽吹いてきた。

膣では無いとはいえ、折角彼と一つになれたというのに、また黒い感情に苛まれてしまう。
節子は、忙しなく肩を揺らしながら言った。

「私、私」
「うん?」
「蛇神様が、他の女の人と一緒に居るのは、嫌なんです」

嫉妬の情を吐き出せば、彼は「他の女?」ととぼけた声で返してきた。

目隠しされたまま、節子も頷く。

「先程の舞妓を言っているのかい?」
「舞妓さんだけじゃ、ないです。
きっと、女の人は、全部」
「ああ、セツは嫉妬してくれるのか。
露天の湯は、そなたの独占欲まで膨ませたようだね」

彼は得心したように言った。
そして、身体を繋げたまま、節子の頬に唇を落として来た。

「セツは本当に愛らしい。
このまま、未来永劫繋がっていたいものだ」

そう言ったかと思うと、節子の中に収まっていた彼の肉芯がぴくりと動いた。
節子はまた小さく呻いた。
達したばかりの身体は、未だ敏感なままなのだ。

「私のセツ。
そなたはもう、私だけのものだよ」

まるで縛るような事を言い、彼は再び動き始めた。
その前後運動に、一度鎮まっていた節子の官能も、再び叩き起こされた。

悲鳴のような声を上げた。
しかし、彼は止まってくれなかった。

節子は、そのまま何度も何度も快楽の頂点まで追い遣られた。
女の陰には触れられなかったが、体位を変え、場所を変え、幾度も達せられた。

行き過ぎた快楽が苦痛に変わってからも、彼が止める素振りを見せる事は無かった。
そして、両手では数え切れない程の絶頂の嵐に呑まれた頃、節子の意識は薄らと遠退いていった。





TO BE CONTINUED.

2009.03.14

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