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あの子の手料理(主尚)


惣菜大学のボロっちいテーブルに座り、ぼんやりと目の前の後輩を見つめる。

肘を付いて出来るだけゆっくりと咀嚼していたビフテキ串が口の中でほぼペーストに成り果てた頃、細めの柔らかい視線が自分を向いた。

「あー…。…風雅さん、何か食べます?」
「いや、良いよ。お腹一杯だし」
「そうですか…すんません、なんか」
「平気平気。ゆっくり食べて」

自分は人一倍食べるのが早い。
それもこれも愛家のスペシャル肉丼を食べきるために異常な特訓と努力を重ねた結果だが果たしてそれだけだろうか。
肉丼に対するそれと同じ勢いでビフテキ串を胃に突っ込んでいた気がする。

そう、何を隠そう自分は、出来るだけ早く食べ終わり食べている途中の他人を眺めている時間が好きなのだ。厳密に言えば好きな後輩が何かを美味しそうに食べているのを眺めている時間が一番好きだからだ。落ち着くし癒される。

尚紀ははい、と小さく返事してからコロッケをかじった。その一口はとても高校一年生の健全な男子とは思えない程控え目で、少ない量しか含めていない。しかも噛む動作も、もそもそと音が鳴りそうにゆっくりしている。

何故か草食動物を思い出した。

「尚紀って羊みたいでかわいい」
「…はい?何すかそれ」

目を丸くして見つめ返してくるのが益々可愛くてにへらと笑い頭を撫でた。まるでうんと年下の子供をあやすようなその撫で方に尚紀は不満げに口を尖らせた。

「ちょ、ガキじゃないんですから」
「いっこ下は可愛いものなんだって」

脱力した笑顔のまま、また元の姿勢に戻って肘を付いた。

「ね、尚紀ってさ、コロッケ好きなの?」
「また唐突っすね」

尚紀は今まさに食べているコロッケを片手に持ったまま、もう片方の手を口元に当てんー、と考えている。やがて、自分がそわそわしだした頃漸く口を開いた。

「好きっちゃ好きですけど…強いて言うなら完二が作ったヤツが一番好きかな」
「あーっ何その惚気!羨ましいなぁ」

前に完二と尚紀の二人から聞いた時とは違い、当の本人が居ない場なので足をバタバタと振って思う存分悔しがる。はは、なんて乾いたような、だが楽しそうな笑いが響く。

「よっぽど子供っぽいじゃないですか」
「だってまだまだうら若き高二だしー。完二のコロッケ食べたいしー」

さっきとは正反対に口を尖らせるのを見て尚紀が柔らかく微笑んだ。


「じゃあ今度、アイツん家押しかけましょうよ、ぬいぐるみでも持って」


頭の中でぬいぐるみを人質に完二を脅す方法を考えながら、二人で笑い合った。





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完二と尚紀二人に同時に嫉妬する先輩。


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あきゅろす。
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