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good morning!



気だるい朝だった

めんどくさいなぁ、仕事

それでも時計は着実に出勤時刻に向けて針を進める
ため息を吐いて、ベッドを出た
一緒に寝室を出た可愛い可愛い愛猫が擦り寄ってきても今日はスルー

ごめんね、今はそんな気分じゃない

適当にコーヒーを淹れて、その間に顔を洗う
スッキリしない
また小さなため息

幸せ逃げるかも

注いだコーヒーは若干色が薄くて、案の定味も薄かった

最低やな

不味いそれをぐいっと飲み干して時計を見る
そろそろ出ないと
遅刻したらテツがうるさい
段々と胃の辺りが重くなるけれど、気にしたら負けだ
いつの間にか膝の上にいた可愛い子を抱き上げて床に下ろす

ピーンポーン

普段ならこんな時間には鳴らない筈のインターホンが高らかに響いた
画面には何も映っていない
変わらずマンションのエントランスがあるばかり
どうして機嫌の優れない時に限って嫌な事は立て続けに起こるのだろうか

「はい」

ああ、明らかに不機嫌な声
大人げないかも

「機嫌悪っ!何やの朝から」

聞き慣れた声と共に厳ついサングラスが映る

「ハイド?」
「うん、俺ぇ」
「どないしてん、こんな時間から」
「別にー」
「別にって事ないやろ」
「んー・・暇だったから」
「暇って・・もうすぐ仕事やん」
「だから迎えに来たんやん」
「・・は?」
「ハイド様が不機嫌なお髭のオッサンをお迎えに上がりましたー」

画面の向こうでハイドが仰々しくお辞儀をした
サングラスの隙間から覗いた大きな瞳に思わずどきっとした

綺麗な顔って得だなぁ・・

「ケンちゃんはーやくー」
「おお、ちょっと待って」

予想外の来客に慌てて着替える
寝室のデスクにばら撒いてあった書類やら楽譜やらを一緒くたにまとめて鞄に突っ込んだ
忘れ物があったらハイドのせいにしてしまおう
割と最近買った香水を噴きかけると、的が外れて顔の近くにまで霧が飛んだ

さすがにこれはキツい

長くはない廊下を足早に、髪を撫で付けながら行く
玄関までついて来た猫が、もう行くの?と尋ねていた
行って来ます、と優しく喉を撫でれば名残惜しそうに鳴いてくれた
微笑んで手を振り、重たい扉を閉めた
エレベーターを待っている時に思い出した
そう言えば俺、なんか機嫌悪かったんだっけ


軽快な電子音と共に何とも言えない揺れ
二重扉が開けば、ガラス戸の向こうでタバコを片手にこっちに手を振るハイドがいた

「はよ」
「ケンちゃん寝癖っ」
「うっさいわ」

携帯灰皿に押し込まれたタバコの残り香が鼻を掠めた
道に出れば同じ様に仕事に向かうであろう人がばらばらと歩いて行く


彼らにも憂鬱な朝はあるのだろうか
たとえばそうであったとして
その憂鬱さえも掻き消す様な
その状況さえも一瞬で覆す様な出来事があったとすれば

たまにはこんな日もいいんじゃない?




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「ケンちゃん運転手ね」
「は?」
「俺早起きしたから眠くてさあ・・」





good morning!












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あきゅろす。
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