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summer vacation!




終わらない終わらない終わらない!!!

何をそんなにけたたましく怒鳴っているのか、と問いたい気持ちを抑えて向かう は勉強机
普段なら座りもしないのに!

傍らにはやり残した夏休みのお友達
後ろではケンちゃんが黙々とお友達を消化中
俺らの間では扇風機がウンウン唸りながらも、首を左右に振り、エールを送ってくれる



「毎年そんなカンジやったよなぁ、俺らって」
「最後の2、3日はどっちかの家でやってたよなー」
黒窓のワゴン車から見つめる先には真夏のコンクリートロード
昼間の太陽の熱とは凄まじいもので、空気が屈折して地面からは陽炎すら立ち昇る
うわぁ、なんて顔をしかめるが所詮俺らはクーラーをガンガンに効かせた箱の中
「俺、宿題はお盆までに終わらせとったなー」
同じ様に外を見つめるハイドがボソリと呟く
車内が静まった
同時に赤信号が俺らを停めた
「・・え、何・・・?」
言葉を失いながらも俺らの目は疑いを投げかけていた
「・・何よ・・・・何で黙るん」
「ハイドくんが宿題ねぇ・・」
「俺かて宿題くらいはやるわ!・・親に言われてやけど」
ハイドは拗ねた様に口を尖らせた
「俺もやってたよ、宿題。小学生くらいまでは」
「ユッキーが!?」
「・・・ハイドくんもなかなか失礼だね」
「やってユッキー宿題みたいな面倒なこと嫌いやん!!」
「まあ・・ね。小学生の時は面倒だから早く終わらせよーって。中学くらいから はそれも面倒でやらなくなったけど」
「ああ・・サボる事に目覚めたんやね」
「なんやーユッキーは俺ら派やと思ってたのに」
「途中からはテツくんたちと一緒だよ」
「俺ら一応ちゃんと最後までやってたもん」
「あ、そっか」
「ホラ、俺らって根が真面目やからあ」
「あーハイハイ」
ハイドが話を遮る様に手をハタハタさせ、小馬鹿にした様に鼻で笑った
何やコイツ!
腹立つ!!
「ねぇ、ケンちゃんは何してんの?」
ユッキーがずっと静かだったケンちゃんに話しかけた
ケンちゃんは小刻みに揺れる車体の窓枠に肘を乗せ、頬杖をついて外を眺めていた
「んー・・あれ見てんの」
そう言って指差す先にはこの都会に見合うべく整備の施された小さな公園
「あっこに虫捕り網持った子がおんねんけどさ。このご時世に虫なんておんのかなー思って」
黒窓のせいで晴れているのかすら曖昧な中で2、3人の子供が片手に網を携え無 造作に走り回る
「何してんのアレ」
ぷっとハイドが吹いた
彼らはただがむしゃらに網を振り回しているだけに見える
「笑ったるなやー。むっちゃ一生懸命やん」
かわええ、と言ってオッサンみたいにケンちゃんが目を細めた
「何か飛んでんのかな、あそこ」
「おっても蝉くらいちゃう?」
それくらいしかこの辺りじゃ見かけないし
「可哀相やな、今時の子は。虫取りも思う様に出来んなんてさあ」
信号が青に変わり走り出したワゴンに揺られ、ケンちゃんは顔を正面に戻した
遠ざかって行く少年達は一本の木に駆け寄り、上を見つめていた
「そろそろ蝉もいなくなってきたよね」
「夏が終わるなー」
ハイドとユッキーも窓から顔を放した
「今年は夏なかったなあ・・」
名残惜しそうな声でケンちゃんが言った
「ツアーあったじゃん」
「せやなくて!海とかさあ・・」
「ライブにビキニのネーチャンいっぱいおったやん」
「花火とかさー」
「ライブで見たじゃん」
「合宿とかさー」
「恒例でもないやん」
「むしろツアーって合宿みたいなモンじゃない?」
ハイドとユッキーが厭味にも似た突っ込みを入れる
「んもー!!何やねんお前ら!!!」
テンポが良すぎて言い返す間もないケンちゃんはそのまま小さくなってしまった
「でも今年の夏ってホンマに何もやれてへんよな」
助け船とは言えないが俺が思う事実
今年は外に出て暑いと項垂れる事すらなかった
「バーベキューだけやんな」
「俺なんか去年もツアーで遊べてへんやん」
ハイドが思い出したように呟く
「俺もかなー」
今年ほどではないけど、とユッキー
「・・俺も今頃は働いとったなあ・・」
言われてみれば確かに皆各自で仕事してたっけ
「なあ、来年は皆でどっか行こか」
ポロリと、思った事が口をついてしまった
と思ったけれど、それはケンちゃんの声で
「何よケンちゃん俺と遊びたいん?」
ニヤニヤしながらハイドがケンちゃんの肩をを突いた
「べっつにいー。俺ハイドよりユッキーと遊びたいしぃー」
「俺はテツくんと遊びたいな」
「えぇーー!!?」
「じゃあ俺はハイドと遊びたいな」
「エエよ!じゃあテッちゃんとユッキーと俺でどっか行こうな!!あ、ケンちゃんは来んでエエから」
「ちょっ!ひどっ!!!」
一人ぼっちじゃ夏越せへんーなんて子供みたいに


蝉の声も遠くにしか聞こえない

向かい来るのは秋風で

去り行くのが夏ならば

「じゃあ皆に宿題」

それはすなわち次の夏が近い証拠

「各自行きたい所、やりたい事をピックアップして調べて来ること。来年の夏までに!!」

早々に夏の予定を立ててしまうのも悪くはないね






summer vacition!












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