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latecomer
「おはよー」
召集を掛けた時刻から20分たった今、ケンがずぶ濡れでスタジオのドアを開けた
「ケンちゃんおはよーさん」
ずぶ濡れなのは気にも留めずに、ヘロヘロと返事をするハイド
「何よハイド、今日は早いのな」
予定と違った人間からの返事に、少し驚いた表情をする
「何言うてんの。ハイドさんは時間にはキッチリしてるんですー」
フンっと鼻先で笑いながら言った
パコンっ
「あたっ」
突然ハイドの後頭部から乾いた音がした
「何すんのテッちゃん!!」
叩かれた部分を押さえながら、
書類やスコアを集め丸めた紙の束を持ったテツに講義を投げかけた
「何すんのやないわ!自分かて10分も遅刻して来たくせに!!」
テツはハイドの講義を正論で叩き潰す
「ケンちゃんもや!!びっしょびしょで!!!今何時やと思ってるん!!?」
飽きたらず怒りの矛先をケンに向けた

「10時20分・・・」
ケンは呟く様に答えた
「オレ何時にココに来い言うた?」
畳み掛ける様に質問するテツ
「・・・・10時」
消えそうな声で答える
「チコクやんなぁ?ケンちゃん?」
「ハイ」
「昨日絶対チコクせぇへん言うたん、ケンちゃんやんなぁ?」
「・・・・ハイ」
「寝坊か」
「ちゃう」
「水遊びか」
「・・・ちゃう」
「じゃぁ何なん」
「・・・・」
「何なん」
「・・・・・・・・・・」
「言ってみぃ」
「・・・ヤダ」
「ヤダって・・・言うてみぃって!」
「イヤや!!」
「何で言えへんの!!」
「イーヤーや!」
「チコクしといて何やねんその態度は!!!」
「やってネコが!!!」
ハッとして口元を押さえる
「・・・・ネコ?」
ケンはひたすらに視線を泳がせるだけ
「ぁ!あの駐車場のネコの傘、ケンちゃんか!!」
突然一人で合点の行ったハイドは、さすがやなぁと言ってケンを褒めた
「・・・・は?何なんネコとか傘とか・・・」
まだ話の読めていないテツは近くの椅子に座っていたユキヒロに視線で助けを請う
それに気付いたユキヒロは一瞬面倒くさそうな顔をしたが、自分が助けを出さなければこの状況は回避されないと悟り、話し始めた
「つまりね、ケンちゃんは駐車場に捨てられてたネコに傘をあげたせいで濡れたしチコクしたってわけ」
今までの混乱を一息で解説
「・・・けどさ、何か変やない?・・・何でユッキーが知っててテッちゃんが知らんの?10時にココ来たんやろ?」
ハイドは辻褄が合わないと指摘した
「やってオレ、ココ来たん9時半やもん。そん時にはネコなんておらへんかったで?」
だいぶ話が読めてきたテツが言った
「俺は10時に来たんだけどネコも傘もあったよ?」
ユキヒロは見たままを話した
「・・・じゃぁケンちゃん10時前にココ来とったん・・・?」
少し驚いた表情でテツが尋ねた
「・・・・ホンマは10時前にココに着いたん・・」
ケンはもじもじと話を始めた
「そしたら駐車場の入り口にネコ捨てられてて・・・濡れてるし寒そうやし、とりあえず傘だけあげてミルクとタオル買いに行ってん・・」
「その間にユッキーとオレが来たんか」
ハイドが口を挟んだ
「で、ネコはどないしたん?」
そこまで面倒を見ておいてケンはネコを連れてきていない
「うん。連れて来ようか迷ってたらな?捨ててった飼い主、もっかい拾いに来てん。勢いで捨ててもぅたけど、心配になって連れ戻しに来たんやて。今度はちゃんと育てますー言うてた」
ケンがへにゃっと嬉しそうに笑いながらそう言った
「ヨカッタなぁ」
ケンの笑顔に釣られてテツも笑顔で言った
「ケンちゃんホンマはそのネコ欲しかったんやろー」
ニヤニヤと笑いながらハイドが言った
「ネコの為にそこまでしてあげられるのケンちゃんぐらいだよね・・」
ユキヒロは呆れながらもケンを褒めた
怒られると思っていたのに
遅刻した上ずぶ濡れでスタジオまで汚して、と

思わぬ3人の笑顔に驚きを隠せないケン
だが、皆も喜んでくれた
それが只々嬉くて
「うん・・・」
ケンは猫の様な口で二コリと微笑んだ
外の雨は気持ちのイイ音で降り続いていた








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