04.髪型
「う、わ―――――っ!!!?」
ある昼下がりのあるビルのある一室
ある男の叫び声が空気を裂いた
「ななななななにすんねんてっちゃん!!?」
明からさまな動揺の根源は、ハイドの前でハサミを持って仁王立ちしている
周りのスタッフも一斉にそちらに視線を送る
「煩い!!鬱陶しいねん!!!」
手元では鋭いはさみが金属が擦れる音を出している
「何やねん!俺何もしてへんやん!!」
「黙れ!!ウザいねんて!!!!」
「!!!?」
無慈悲にも投げ付けられた言葉に、ハイドは多大なショックを受ける
スタッフも普段はとても温和なテツが声を荒げる様には驚きを隠しきれない
手に収まっているハサミが驚きに不安要素を加えているのも否めない事実である
当のテツは構う事なく続けた
「オレの視界に入んな!!!イライラすんねん!!!」
「て、てっちゃ・・?」
テツは情けなさで満たされていくハイドの顔に、ハサミを突きつけ言った
「ちょっと来いハイド!!オレがその鬱陶しい髪切ったる!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・髪?」
「髪!!お前が下向く度にバッサバサ落ちてきおって!!邪魔やないんか!!?」
「は・・・・・髪・・・?俺やなしに・・?」
「は?髪や言うとるやん。誰がハイド嫌い言うたよ」
「何よビックリした・・・てっちゃん俺の事嫌いになったんかと思ったわ・・」
「髪切らんなら嫌いになる」
「切ります。謹んで切らせて頂きます」
「テツくんさぁ・・・機嫌悪いのかな」
「悪いなぁ。あいつハイドの髪スキや言うとったのになー」
テツの八つ当たりの標的にならぬ様、少し離れた所で二人のやり取りを見ていたケンとユキヒロは、スタッフを巻き込んでいそいそと散髪の準備に勤しむハイドを尻目に、コソコソと話をしていた
二人はしばらく黙ってその光景を眺めていた
ジョキッと気持ちのいい音を立てて、ハイドの髪は頭から離脱した
背中の真ん中程まであった髪は半分程度の鎖骨の辺りまで短くなってしまった
「あーぁ・・・・切っちゃった」
「うははっ!!後ろパッツンやー」
ケンは笑いながら二人に近づき「俺にもやらせてー」と、ハサミを手にした
「ケンちゃん変な風に切らんといてえや!」
「もう遅いてぇー」
「あ、コラ、ハイド動くな!」
「うわ・・・すげ・・・・」
黙って見ていたユキヒロも思わず声を漏らした
若干遠巻きに様子を覗う数名のスタッフからも、着々とゴミになっていくハイドの髪についてひそひそと会話が漏れる
「っはースッキリしたな!!」
満足そうに見つめるテツと
ゲラゲラと腹を抱えて笑い転げるケンと
チラリと見るだけで目を合わせようとはしないユキヒロと
散髪が終わるって初めて鏡を見て、驚愕しているハイド
「!!!!??」
鏡を投げ捨てソファの上に置いてあったユキヒロの帽子を勢い良くかぶる
「ててててててっちゃんんん!!!?」
「なに?」
「おおおおれてっちゃんの機嫌損ねるような事したかしら!!?」
「別に」
「お、鬼!!!!」
てっちゃんの馬鹿ーと捨て台詞を吐いて部屋を飛び出していった
ある昼下がりのあるビルのある一室の出来事
04.髪型
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