愛犬



うちはけっこう、犬を飼っていて
それは絶えることなく、続いている

一時期(私が小学生のころ)は、成犬2匹、子犬が5匹いて、
朝は母が餌をばらまいて、子犬たちの気をひいてるうちに登校するというのが毎日のことだった

これは、グレートピレニーズという種類の白い大きな犬を飼っていた時の話

その子はとても頭がよくて
譲りうけた先にもともとしつけられていたから、とても利口だった

ただ体が大きいために
怖がられることが多くて
近づく人も少なかった

私も当時(たぶん)4歳とか5歳だったから
その子が来たばかりのときは、きっと怖かったのだと思う
遊んでほしくてじゃれて背中にのしかかってきたことに驚いて、泣き出していた


でもその子を怖いと思ったのは
そのたった一回、一瞬だったように思う

私は親が太鼓判をおすほど、幼少のころから兄弟の中でも一番の動物好きだった

犬は、物心つくころからいたため
常にいっしょにいるのが当たり前の存在だった

そんな性格もあって、
私はその子と戯れるのが大好きだった

でもうちでは外で飼うのが当たり前であったために、触るたびに手を洗わなければいけなかった


その子に触れたあと、
家の中に入って、手を洗っていると
毎回、思うことがあった


「自分を触ったあとには毎回手を洗っているんだなあ」
と、この水の音に、傷ついてやしないか

でも、だからといって洗わないでいることもできず
いたたまれない気持ちをいつもいつも抱えていた

まあ、この音が聞こえてるかどうかもわからないのに、そんなことを、いつもふと思ってたってだけの話だけれど
その思いは、今いっしょにいる犬に対しても感じる

こう思い続けて何年経っただろう


グレートピレニーズの子が死ぬその日、私は気分が悪くて学校を早退していた

1月10日だった

また別の子が死ぬ日も
私の体調は、予期していたかのように、悪かった

もともと病気知らずで
健康な私にとって
ほんとうに気分が悪くなるということは珍しかった

それほどつながるものがあるのだ


ひとの言葉は
きっと届いていて
ひとがひとに対して抱く感情と同じように
ひと以外のものも感じているのだと思う

2009.8・18

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あきゅろす。
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