短いの 川 ゚ -゚)の楽しい園芸講座 軒先に両足を投げ出して、じっと外を眺めている。 月明かりに浮かび上がる桜の古木。 世間の桜は満開を迎えているが、その桜は殆ど花を付けていない。 視線を下の方に向けると、人影が動いていた。 時折その手に何かが鈍く光っているのが見える。 ごりごり。 人影は片刃の鋸で、花の終わった梅の枝を落としていた。 ひょろりとして、苗木に毛が生えた程度の小さな梅の木。 枝の半分から先を、三分の一程度残して切り落とす。 適当な枝を見つけてはまた切り落とす。 人影は手慣れた様子で次々に枝を落としていく。 川 ゚ -゚)「こうして先を剪定するとね、脇芽が出てくるんだ。 そうすると来年はもっと沢山花を付ける事が出来る」 切った枝を放り投げて、彼女は振り向いた。 川 ゚ -゚)「梅は毎年三回の剪定が必要だ。梅は枝が良く育つ、広がりやすい」 ξ゚听)ξ「ふぅん・・・・」 川 ゚ -゚)「昔から言うな、“桜は切るな、梅は切れ” だが実は桜も、苗木の時期は枝を増やす為の剪定が必要なんだよ」 彼女・・・・クーはふらふらと覚束ない足取りで、桜の根元へ歩いてきた。 ごつごつした古木の幹に手を付き見上げる表情は、 無表情に見えてどこか慈愛に満ちている。 川 ゚ -゚)「苗木を植える時はね、掘った穴に腐葉土と油粕を混ぜた物を敷くんだ。 でも油粕は強い肥料だから、直接当たると根が焼けてしまう。 それで上に軽く砂を被せてから苗木を植えるんだよ」 ξ゚听)ξ「・・・・知ってるわ・・・・手伝ったから」 川 ゚ -゚)「そう、あの籐五郎は君に見立ててもらったんだったね。 来年はきっと沢山花が付くよ、実も。一緒に見よう」 クーはさっきまで剪定していた梅に視線を移して言った。 川 ゚ -゚)「植えた後の肥料は・・・・花なら骨粉が良いな。骨粉、わかるかい?」 ξ゚听)ξ「骨の、粉?」 川 ゚ -゚)「そう、化肥と違って速効性は無いが、花の色が良くなる。段違いだ」 ξ゚听)ξ「・・・・満開の桜の根元には死体が埋まってるなんて言うけど」 川 ゚ -゚)「あまりに見事な花だから、最高の肥料が埋まってるに違いないと思ったんだろうね」 クーは桜の幹にもたれている。 鋸を持った右手はだらりと下げられていた。 川 ゚ -゚)「大概の花がそうだが、咲いている間は肥料を必要としない。 代わりに花が終わった後に肥料を沢山与える。これを」 ξ゚听)ξ「追肥」 川 ゚ -゚)「そう、お礼肥とも言うな。花は一度咲くと疲れてしまうんだ。 来年も咲いてもらう為に肥料を撒く」 ξ゚听)ξ「ねぇ」 川 ゚ -゚)「桜の下に、本当に死体が埋まっていたら・・・・さぞかし美しい花が咲くのだろうね?」 クーは頭上に広がる桜の枝を、ゆっくりと見渡す。 ちらり、と一枚、花びらが散った。 川 ゚ -゚)「花が終わる、な」 追肥が必要だ。 来年こそ綺麗に咲かせる為に。 クーは右手の鋸を、ゆっくりと擡げた。 それは月の光を反射して、仄白く妖しく光る。 見上げると、擦り傷で血が滲む、自らの手首が視界に入った。 柱に括り付けられた両腕には、もう力が入らない。 ひやり、首筋に当たる冷たい感触。 耳障りなこの断末魔は誰のものだろう。 クーは笑っている。 焼ける様な痛みと共に、視界が赤く染まっていった。 _ ( ゚∀゚)おしまい 総合投下作品 [次へ#] |