長いの
#4‐2
ノ(゚、゚リそ「・・・・」
肩を落とした将軍の後ろ姿を、マウスは複雑な気持ちで見送った。
( ^ω^)「よく言えました。お前にしては上出来だお」
ノ(゚、゚#リそ「・・・・ブーン」
( ^ω^)「こいつはいよいよ引き際だお、相棒。
前金だけ頂戴して、港で船でも掻っ払って逃げるとするお」
ノ(゚、゚リそ「でも、ブーン」
( ^ω^)「黙らっしゃい。
お前は僕に『あの台詞』を言わせたいのかお?」
ノ(゚―゚;リそ「やめて!それだけは!!」
マウスが慌ててかぶりを振る。それで話はまとまった。
( ^ω^)「夜になったら島を出るお、おk?」
ノ(゚、゚リそ「ん、おk」
懐から時計を出して時間を確認した。
城に来てからそう時間は経っていない。
夜までは港の辺りで時間を潰していれば良いだろう、とマウスは思った。
島を出るにあたって、この辺りの海の事も調べておく必要がある。
考えもまとまり、椅子から立ち上がろうとしたところで、マウスはその動きを止めた。
ノ(゚、゚リそ「・・・・?」
どこからか視線を感じる。
辺りを見回してみたが、近くに人の姿は無く、気配も感じられない。
( ^ω^)「どうしたお」
ノ(゚、゚リそ「今、誰かに見られていたような」
( ^ω^)「誰も居ないお?」
腑に落ちないのか、マウスは首を傾げていた。
ノ(゚、゚リそ「・・・・気のせいかな」
気を取り直し、今度こそ椅子から立ち上がる。
その時だった。
ノ(゚、゚;リそ「・・・・!?」
空気が静止した。
そういう表現が当て嵌まるかもしれない。
周囲から一瞬にして、全ての音と匂いが消えた。
( ^ω^)(これは・・・・)
少し遅れてブーンも異常に気付く。
次の瞬間、二人の視界がまるで写真のネガの様に、その色調を反転させた。
ノ(゚、゚リそ「・・・・ッ!」
( ^ω^)「あうちっ」
背後からの気配に、咄嗟に体が反応した。
ブーンのネックで受け止めていたのは、不気味な外骨格で覆われた腕。
細い肢体を持つ人型の異形が、そこに居た。
ノ(゚―゚;リそ「きもっ!何だコレ!?」
( ^ω^)「とりあえず痛いお」
ノ(゚―゚リそ「あ、悪ぃ」
異形の腕に力が込められる。
マウスは非力ではなかったが、さすがに体勢が不利だった。
押し返す事も出来ず、ジリジリと壁際に追い込まれていく。
ノ(゚、゚;リそ「く・・・・」
切迫した状況に空気を読んだのか、ブーンも痛いとは言わなくなった。
( ^ω^)「やべぇ、まじやべぇ」
「痛い」が「やべぇ」に変わっただけだったが。
ノ( ― #リそ「あーもう!うっさい!!」
( ^ω^)「落ち着け、落ち着いて素数を数えるんだ」
ノ(゚、゚;リそ「え?えーと1、2、3、5、7・・・・」
ノ(゚―゚#リそ「ってお前はアホかぁあああああッ!!」
マウスは異形の腹を力任せに蹴りつけた。
一瞬怯んだように見えたが、異形はすぐに体勢を立て直し飛び掛かってきた。
しかしマウスが仕込み剣を抜き払うには、十分な隙があった。
再び頭上に振り下ろされた腕を、細身の刀身で受けた。
その力が伝わる直前に刀身を傾け、攻撃のベクトルをずらす。
( ^ω^)「よっしゃktkr!」
コントロールを失い、異形は背後の壁へと激突する。
ノ(゚―゚リそ「・・・・!?」
激突したと思われたが、その衝撃が壁に伝わる事は無く、
代わりにぶつかった場所を中心として、空間に波紋が広がっていくのが見えた。
異形は平然と起き上がり、マウスに向き直る。
( ^ω^)「まじやb」
ノ(゚―゚リそ「黙れよ」
だが今度はすぐには飛び掛かってこない。
こちらの様子を伺っているようだった。
( ^ω^)(こいつ頭いいな)
( ^ω^)「おいマウス、誰も見てないから思い切りやっちまえお」
ノ(゚―゚リそ「わかってんよっ!」
咆哮を上げ再び飛び掛かってくる異形。
振り上げた腕の肘から先が割け、鋏のように変形するのが見えた。
ノ(゚―゚リそ(あ、やばい)
咄嗟に体を捻って躱した。
攻撃は空を切る。
剣で受け止めていれば、そのまま挟み込まれ、動きを封じられていただろう。
しかし避けた事で、逆に相手の方が態勢を崩した。
ノ(゚ー゚リそ「貰いっ!」
がら空きの背中に斬り掛かる。
勝負は決まったかに見えた、が、
ノ( 、 ;リそ「・・・・ッ」
硬い表皮に刀身が弾かれた。
衝撃が伝い、手がじいんと痺れる。
異形は反撃とばかりに、横凪ぎに腕を振るった。
マウスは咄嗟に後ろへ飛び退き、再び剣を構えて向き合う。
( ^ω^)「ちょ、おま、真面目にやれお」
ノ(゚―゚リそ「無理、斬れない、硬い」
( ^ω^)「えーまじでー?」
その後も何度か攻撃を試みるが、結果は同じ。
マウスの表情にも焦りの色が浮かぶ。
( ^ω^)「まじやべぇ」
ノ(゚―゚;リそ「まじやべぇ」
( ^ω^)「このままじゃ埒があかないお」
ノ(゚、゚;リそ「何か弱点でも無いもんかな」
何度目かの異形の攻撃を紙一重で躱しながら、マウスはその動きのパターンを観察していた。
ノ(゚―゚リそ(・・・・んー?)
そこでマウスはあることに気付く。
外骨格があると言うことは、昆虫や蟹等の節足動物と似た体構造の筈だ。
とは言えあの異形の外骨格は、蟹の殻とは比べものにならない程硬い。
先程までのように、ブーンの刀身でも全く歯が立たないのだ。厄介だった。
だが外骨格を持つ節足動物には、共通した弱点がある。
ノ(゚―゚リそ「・・・・蟹食う時ってさ」
( ^ω^)「お?」
ノ(゚―゚リそ「殻外して真ん中から折ったら、次は足の節から千切ってくよな」
( ^ω^)「?・・・・まぁいきなり殻に穴開ける奴はあんまり居ないお。硬いし」
ノ(゚―゚リそ「おk、いけるかも」
( ^ω^)「??」
いかに硬い殻を持っていても、関節部分は脆い筈。
マウスはようやくそれに気付いたのだった。
ノ(゚ー゚リそ(これ終わったら蟹食べに行こう・・・・)
再び距離を取り、相手が体勢を立て直す暇を与える。
振り向いた異形にわざと隙を見せ付けると、間髪を入れずに飛び掛かってきた。
今度は躱さない。
マウスは姿勢を低くとり、振り上げられた腕に狙いを定めた。
ノ(゚、゚リそ「・・・・っ、そこだっ!」
銀色の刀身が閃いた。
直後、地の底から響くような絶叫が上がる。
右の肩から先を叩き斬られて、異形は後方へとバランスを崩した。
( ^ω^)(これは)
一瞬にして、周囲の色調が元に戻る。
さっきまで目の前に居たはずの異形の姿は何処にも無かった。
一階、親衛隊寮。
午後の休憩を過ごす女兵士達の姿があった。
(゚、゚トソン「本当です!本当に見たんです!」
o川*゚ー゚)o「ちょっとぉー、トソンたんがまた変なこと言ってるんですけどぉ」
lw´‐ _‐ノv「どうしたウザイ子」
o川*゚ー゚)o「ウザイ子て」
lw´‐ _‐ノv「とりあえず話を聞こうじゃないの」
o川*゚ー゚)o「トソンがさー廊下でモンスター見たんだってwwwねーよwwwwww」
(゚、゚トソン「本当なんです・・・・でももう一回振り返ったら居なくなってて」
lw´‐ _‐ノv「あー、あるあ・・・・ないない」
o川*゚ー゚)o「でしょ?ありえないよねー」
(゚、゚トソン「でも私確かに・・・・」
o川*゚ー゚)o「まだ言ってるしwww」
lw´‐ _‐ノv「それよりおやつに白米食おうよ」
o川*゚ー゚)o「まだ食べる気なのwwww」
その時、扉を叩く音が部屋に響いた。
扉から一番近いトソンという兵士が立ち上がる。
(゚、゚トソン「休憩中に・・・・誰でしょう」
ノ( 、 ;リそ「・・・・っ、はぁ・・・・」
あり得ない事が目の前で起こった。
刀身の僅かな刃零れ、マウスの乱れた呼吸、異形の腕を断った感触が手に残り、
あれが白昼夢では無かったことを物語る。
( ^ω^)「なんだったんだお、今の怪物は・・・・」
「喋る楽器」として、既に三百年近い時を生きているブーンでさえ、
あのような異形のモンスターを見たことはなかった。
そもそもモンスターというのは、植物や野生動物が突然変異によって巨大化、凶暴化したものを言う。
人を襲う事もあるが、あくまで捕食や自己防衛の為の行動で、言わば生存本能だ。
だが先ほどの異形はどうか。
ブーンにはあれが、明確な殺意を持って襲ってきたように思えた。
( ^ω^)「これは・・・・いよいよおかしな事になってきたお」
ノ(゚―゚リそ「・・・・」
仕込み剣の刀身が、静かにブーンのネックに収められる。
動揺を隠せないブーンに対して、マウスは意外な程落ち着いた様子だった。
( ^ω^)「気を抜くなお相棒、またどこから襲ってくるか」
ノ(゚、゚リそ「大丈夫」
( ^ω^)
ノ( 、 リそ「・・・・もう居ない、みたいだ」
( ^ω^)「マウス・・・・?」
マウスには何故かその確信があった。
床に落ちた懐中時計を拾い上げ、文字盤を眺める。
秒針は正確に刻を刻んでいた。
だが、
ノ(゚、゚リそ(さっきと同じ時間だ)
およそ二十分。
マウスがあの異形と戦っている間の体感時間は、その位だった。
だが将軍と別れて時間を確認してから今までの間に、マウスの時計は殆ど進んでいなかった。
その頃。
ξ#゚听)ξ
マウス達を探して、ツンは城内を駆けずり回っていた。
#4 終わり
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