長いの
#1‐1
何故あのような乱心を装い
危険な狂態を演じて
この平穏なる日々をかき乱すのか。
彼の口からは聞き出せないと言うのだな?
クローディアス王―ハムレット―
「…お客さんっ!」
甲板でうたた寝していた青年は、船員の声で目を覚ました。
ノ(ー ーリそ
少年、と言ってもいいかもしれない。
彼はその華奢な体格に見合った、どこかあどけない顔立ちをしていた。
( ゚д゚)「見えてきましたよ、あれがヴィップ島です」
ノ(ー、ーリそ
目を擦りながらのそのそ起き上がると、進行方向には確かに島が見えていた。
ノ(゚、゚リそ
ノ(゚、゚*リそ
青年は期待を滲ませて、水平線に浮かぶ島を見つめる。
( ^ω^)ブーンは喋る楽器のようです
#1 楽園の入り口
( ゚д゚)「いい島ですよ」
進行方向を見つめたまま動かない青年に、船員が話し掛けてきた。
m9( ゚д゚ )「大きな街と比べれば不便ですがね。
美しい自然と美食の数々に時を忘れる事間違い無し!」
ノ(゚―゚リそ「こっちみんな、つーか指をさすな」
( ゚д゚)「ところで島へはご観光で?」
ノ(ー、ー#リそ
青年は無言のまま、上着の胸元から手紙のようなものを取り出す。
船員がそれをひったくった。
( ゚д゚)「これは…ヴィップを治めるショボン卿からの招待状ではないですか!」
船員がひったくった手紙にはこう記されている。
『貴殿の音楽家としての評判を聞き及びお願いしたい件があります。
ぜひともヴィップの我が城までおいでください。
小さな島ですが最善の待遇を用意しております。
では、お会いできることを心より祈って』
( ゚д゚)「あのお方の直々のお招きとは、大変なお客さまを乗せたものですなぁ」
ノ(゚ー゚リそ「いーえー」
表面上愛想よく振る舞っているものの、彼は内心、
ノ(ー、ーリそ(うざい…早く行ってくれないかな)
という気持ちでいっぱいだった。
( ゚д゚)「それでは到着まで今暫らくおくつろぎ下さい」
ノ(゚ー゚リそ ホッ
恭しく礼をして、うざい船員は下がっていった。招待状を持ったまま。
ノ(゚、゚リそ(まぁ、いいか)
青年は再び船の進行方向へ視線を移す。
船員のお喋りの間に、島が大分近くなっていた。
ノ(゚ー゚*リそ
「見とれてるトコ悪いけど、いいかお?」
声がした。どこか間の抜けた声だ。
青年が面倒臭そうに振り返る。
そこに人の姿は無い。
誰も居ないことを確かめてから、青年はそっと身を屈めた。
その足元に転がっている楽器は、音楽家という彼の物だろう。
形はリュート属の弦楽器だが、デザインが少し変わっていた。
長めのネックに弦が三本、白い円形の胴に描かれたアザラシの顔の様な紋様が特徴的である。
その、アザラシ顔の口元がモゴモゴ動いている。
青年は別段驚くという事も無く足元の楽器の柄を掴むと、
胴を自分の目の高さまで持ち上げた。
( ^ω^)「釘をさすわけじゃないけど一応言っとくお相棒。
僕達遊びに来たんじゃないお」
ノ(゚、゚リそ
( ^ω^)「あ、今すっごく嫌そうにしたお?」
声の主はそのアザラシ顔の楽器だった。
( ^ω^)「久しぶりに良い儲け話なんだから、気合い入れて頼むお。
僕達力を合わせていつもの通りに」
ノ(ー、ーリそ「はいはい、わかってんよ、ブーン」
青年はおざなりに返事をした。
( ^ω^)「いい加減な返事を…本当に僕の言ってる意味わかってるお?」
ノ(゚、゚リそ(始まったか)
ブーンがスーパー説教タイムに入るや彼は大きくため息を吐き、船の手摺りに背中を預けた。
( ^ω^)「大体お前はいつも遊び気分が抜けないんだお。
島に着いても浮かれてもらっちゃ困るお」
ノ(゚、゚リそ(うっざ)
青年は暇そうにブーンの弦を爪弾き始めた。
最初は単なる手遊びだったそれが、段々と旋律を作っていく。
( ^ω^)「特に女だお女。大事なことだから二回言いましたよ。
まったくおまいときたら美人にはてんで弱…」
ノ(ー、ーリそ 〜♪
( ^ω^)「聞いてねえし」
青年はノリノリで演奏を続けていた。
こうなってしまうと人の話など耳に入らない。
そこそこ付き合いが長いので、彼の性質をブーンはよく知っている。
諦めて自らの弦が奏でる旋律に、しばし耳を傾ける事にした。
( ゚д゚)「いやぁ素晴らしいものですなぁ!」
( ^ω^)(うぜぇ)
喧しく拍手を鳴らしながら割って入る船員。青年の演奏は中断した。
ノ(゚―゚#リそ
( ゚д゚)「さぁいよいよヴィップに到着です!
上陸したらごゆるりとお楽しみになれますよ」
青年が振り返ると既に港が見えていた。
( ゚д゚)「訪れた人々が口をそろえて言うところの、永遠の夏の日々を…!」
港に着くと、船員が足場を渡すのを待たずに、青年は勢い良く船から飛び降りた。
余程あの船員が嫌だったらしい。
( ゚д゚)ノシ「お迎えに来るのは6日後です。それではまた!」
船員が手を振り船がゆっくりと港を離れていく。
( ^ω^)「最後まで妙に芝居がかった船員だったお」
ノ(゚―゚リそ「…帰りは別の船がいい」
( ^ω^)「同感だ」
ノ(゚ー゚リそ「とりあえずお城に行けば良いのかな、僕は」
青年がきょろきょろ辺りを見回すと、通りかかった漁師風の男と目があった。
丁度いい、彼に道を聞こうかと思っていると、
ミ,,゚Д゚彡「兄さん旅人かゴルァ」
男はこちらから声を掛ける前に近寄って話し掛けてくる。
白髪混じりの髭と日に焼けた禿げ頭。
その中年男の足元には、数匹の猫が付いてきていた。
ノ(゚ー゚リそ「まぁ、そんな感じです」
男の問いに答えると、彼はじゃあいい所に来たな、と笑った。
彼が言うにはこの島は今、王家の婚礼で数十年ぶりに祝祭が開かれるらしい。
ミ,,゚Д゚彡「滅多に見られるもんじゃねえから楽しんでいきな」
ノ(^ー^リそ「いいなぁ、お祭り好きですよ」
( ^ω^)(ちょっと意味は違うけどな…お?)
青年の背に負われたブーンの視界に、一人の少女が映った。
ξ゚听)ξ
それは露出の多い軽鎧を纏った女戦士だった。
歳の頃はおそらく17か18、ブーンの相棒と似たりではないだろうか。
だが彼とは対照的に大人びた雰囲気がある。
長い金髪に整った顔立ち、ただ残念な事に胸がまな板だ。
( ^ω^)(めっちゃ見てるんですけど)
その視線に気付いて相棒が振り向くと、待っていたかのように彼女が駆け寄ってきた。
ξ゚听)ξ「…」
ノ(゚ー゚リそ「えーと、何か?」
ξ゚听)ξ「失礼ですが…お名前伺っても?」
ノ(゚ー゚リそ「マウス、って言います」
青年がマウスと名乗ると、途端に少女の表情が綻んだ。
ξ゚听)ξ「やっぱり!」
ノ(゚ー゚リそ「?」
ξ;゚听)ξ「あ、ご無礼を致しました!私はツンと申します」
ツン、と名乗った彼女は、ショボンの命令でこの島でのマウスの案内役をする事になっているらしい。
それにしては船から降りてきた自分達に話し掛けるタイミングが遅い気もするが、そんなことよりまず、
ノ(゚ー゚リそ(可愛い人だなぁ)
だった。
だが残念な事におっぱいは(ry
ξ゚听)ξ「お荷物はありませんか?」
マウスは答えず、背中のブーンをコン、と手の甲で叩いた。
ツンが思わずクスリと笑う。
ξ゚ー゚)ξ「そちらの楽器だけなんですね」
まず宿に案内するという彼女に付いて、マウスは歩き始めた。
背中越しにブーンがため息を吐いている。
( ^ω^)(いきなり可愛いおにゃのこ登場とは…
先行きあやしくなってきたお)
ノ(゚ー゚リそ 〜♪
対照的にマウスは上機嫌だった。
ξ゚听)ξ「その楽器、ブーンっていうんですか。変わってますねぇ」
ノ(゚ー゚リそ「うん不細工でしょ」
( #^ω^)
ノ(゚ー゚リそ「でもね、音は良いんです」
( *^ω^)
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