長いの
#9‐2
石畳の上にしゃがみ込んでいた王女が、こちらに気付いて顔を上げる。
王女を守る様に囲んでいた親衛隊の視線が、一斉にマウスへと注がれた。
川 ゚ -゚)「・・・・君、は」
o川*゚ー゚)o「あ、マウス様ぁ!」
ぱたぱたと手を振っているキューの肩越しに、王女と視線が絡み合う。
川 ゚ -゚)「・・・・」
川 - -)「お前達、下がって良い」
∬´_ゝ`)lw´‐ _‐ノvo川*゚ー゚)o「え」
川 ゚ -゚)「聞こえなかったか? 下がってくれ」
王女の言葉に親衛隊一同は、戸惑った様子で彼女とマウスとを交互に見比べている。
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o !
∬;´_ゝ`)「いやでも姫さo川*゚ー゚)o「わっかりましたぁ☆ ほらほら邪魔者は下がりますよ!」
lw´‐ _‐ノv「ちょwwwwお前うぜぇwwwwww」
意見しかけた女官の腕を引っ掴んで引き摺りながら、
キューは心得た顔でマウスと王女に向って目配せする。
o川*>ー゚)o(あたし二人の超味方だし!)
彼女なりに空気を読んだのかもしれない。
何か色々勘違いしているような気もするけれども。
川 ゚ -゚)「私は大丈夫だから」
lw´‐ _‐ノv「・・・・わかりました」
王女に促され、残された親衛隊も渋々キュー達に続く。
ノ(゚、゚リそ
川 ゚ -゚)
親衛隊は訝る様にマウスを睨みながら、その横を次々と通り過ぎていった。
遠ざかる足音。
気まずい沈黙が流れる。
川 ゚ -゚)「・・・・私に何の用だ?」
やがて痺れを切らしたのか、王女の方から話を切り出した。
昨夜までの色々、これから起こる事、卿の真意、本当にこの島から出る方法は無いのか。
そもそもの始まりは島に来て最初の夜、王女の言葉からだった。
彼女はこの件にどう関わっているのだろう。
あるいは彼女も卿と同じ様に・・・・
聞きたい事なら山ほどあった筈だった。
その全てが言葉にならず、頭の中を素通りしていく。
違う。自分が言いたいのはこんな事じゃない。
ノ(- -リそ
ノ(゚―゚リそ
「君を助けたい」
たった一言。
理屈ではなく、ただそうしたいと思った。
氷のような王女の瞳が微かに揺らぐ。
しかしそれも一瞬の事で、もとの無表情を取り戻すと、
川 ゚ -゚)「言っては悪いが、君に私を助けられる程力があるとは思えない。
・・・・期待なんかしないよ」
そう言って一蹴した。
期待しない、という彼女の言葉には、どこか自分自身に言い聞かせる様な響きがあった。
( ^ω^)「これはまた身も蓋も無いお言葉だお」
川 ゚ -゚)「客観的事実を言ったまでだ。君の事を馬鹿にしてるわけでも何でもない。
あの男の力は私がよく知っている。・・・・長い間、思い知らされている」
ノ(゚、゚リそ「クー王女・・・・」
川 - -)「・・・・不可能だよ、たとえ誰であっても。
君も、早く諦めてしまうことだ」
その言葉には、はっきりと拒絶の意志が込められていた。
冷たい瞳、声。
王女の心は彼女が言う“長い間”の内に凍り付いてしまったのだろう。
ふと“可哀相に”と、いつかの彼女の言葉が脳裏を過る。
ノ(゚- ゚リそ「・・・・可哀相なのは、君の方だね」
同情と、いくらか落胆を込めて言うと、マウスは王女に背を向けた。
これ以上は話すだけ無駄だろう。
可哀相なお姫さま、誰のことも信じられずに。
川 - )「・・・・今日は・・・・」
不意に王女が呟き、マウスは思わず足を止める。
普通なら聞き逃してしまう程か細い声だった。
振り返ると王女は、先ほどの場所に立ったまま俯いていた。
長い髪に隠されて、彼女の表情を窺うことは出来ないが、
その姿は酷く哀しげに見える。
川 - )「今日はたくさんの人が不幸になる日・・・・そして、それは誰にも止められない。
・・・・そう・・・・誰にも・・・・」
それきり口を閉ざした王女に背を向け、マウスは再び歩きだした。
( ^ω^)(・・・・)
不吉な未来を示唆するような言葉に、ブーンは昨夜の出来事を重ねていた。
( ^ω^)「やっぱりおっかねぇお、あのお姫様・・・・
何か預言者的な力でも持ってるのかお?」
昨夜も盗賊の殺され方を言い当てている。
そして先程の卿との会話の中で、既にフラグは立っている様に思えた。
彼女の言葉が本当に未来を預言しているとすれば、きっと今夜は――――
彼女の“独り言”は自身に向けたものか、それともマウスに聞かせようとしていたのか。
真意の程は判らない。
ただ、一つだけ、はっきりと判った事がある。
王女は卿を、自分の未来の夫を“あの男”と呼んでいた。
彼女もまた、卿が作り出した犠牲者の一人なのだろう。
ノ(- -リそ(・・・・なんとかしてあげたいなぁ)
マウスのそんな思いとは裏腹に、何も出来ないまま時間は過ぎて行く。
結局この日、城で有益な情報を得る事は出来なかった。
そして夕刻。
o川*゚ー゚)o ニヤニヤ
ノ(゚ー゚リそ「・・・・」
訪いを入れられて出ていくと、ウザ女が立っていた。
出迎える形となったのは不本意だったが、それでもマウスは彼女にニッコリと頬笑みかけ、
ノ(゚ー゚リそ「お引き取り下さい」
そのまま勢い良く扉を閉めた。
o川*゚ー゚)o「そぉいっ!! ・・・・って痛ッテェ!!!!111」
寸でのところでキューが右足を滑り込ませ、扉が閉まるのを阻止する。
悪徳セールスなんかにこういうのが居るらしいが、実際にやった奴を見るのは初めてだ。
ノ(゚ー゚リそ チッ
o川*゚ー゚)o「もーw マウス様ってばツンデレさんなんだから☆」
ノ(゚ー゚リそ「脂汗浮いてますよ大丈夫ですか足抜いた方がよくないですか」ギリギリ
o川*゚ー゚)o「痛い痛い! お迎えに来たのに何という仕打ちでしょう!!」
ノ(゚、゚リそ「えっ」
ノブを掴んでいた手を、思わず離した。
キューがよろめきながら室内に傾れ込んでくる。
o川*゚ー゚)o「よっしゃ、不法侵入成功!」
( ^ω^)(不法て)
o川*゚ー゚)o「晩餐会のお時間ですので、お迎えに上がりました☆」
ノ(゚、゚リそ ?
( ^ω^) ?
o川*゚ー゚)o ??
ノ(゚、゚リそ「ツンさん、は?」
o川*゚ー゚)o「へ? 隊長っすか?
外せない用事が出来たから、とか言ってましたけど」
ノ(゚ー゚リそ「案内役の仕事よりも大事な?」
o川*゚ー゚)o「あたしに言われても困るっす、何の用事か聞いてないんで」
ノ(゚ー゚リそ「・・・・ですよね、すみません」
昨日に引き続き、今日もツンはついに姿を見せなかった。
晩餐会では接待係として同席する筈、とキューに言われたが・・・・何故だろうか、何かが引っ掛かる。
o川*゚ー゚)o「ところでマウス様」
突然、キューが声を潜めてマウスに手招きした。
珍しく神妙な面持ちの彼女に釣られ、マウスも思わず表情を引き締める。
o川*゚ー゚)o「ぶっちゃけどうなんですか姫さまとは。ABCで言うとどこまで?」
ノ(゚ー゚リそ「・・・・は?」
o川*゚ー゚)o「いやいやゴマカさなくてもいいですよ、あたしバリバリ二人の味方っすから!
もうすぐ人の妻ともなると、却って燃え上がるもんですよねぇわかるわかる。
もーこうなったらキューちゃん全力でキューピッドしちゃいますよぉ☆」
ノ(゚ー゚リそ「なにこのひとうざい」
ABCとかいつの言葉ですか。
同じ頃、城の研究室で若い学者が、ページが一枚切り取られた本を眺めて首を傾げていた。
彼は隣にある弟者の私室に、誰かが訪ねてきた事には気付かない。
当の弟者は部屋を留守にしているようである。
程なくして、弟者の部屋から人が出てきた。
(‘_L’)
―――今日は、たくさんの人が不幸になる日。
#9 おわり
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