長いの
#8‐2
ノ(゚ー゚リそ(こえぇー)
( ^ω^)(こえぇー)
一方マウス達は、戦闘の混乱から退いた所で様子を窺っていた。
他の招待客には悪いが、彼らにとってこの状況は願ってもないチャンスである。
ノ(゚ー゚リそ(顔を見てやりたいとは思ってたけど、こんなに早く会えるとはね)
( ^ω^)(しかも都合の良い時にktkr! これで勝つる!)
兵士が盗賊団を押さえに掛かっている今なら、どさくさ紛れて王女に接触出来るかもしれない。
そして案の定、王女に付いているのは将軍と、もう一人の兵士だけ。
ノ(゚ー゚リそ(後ろの植え込みからなら気付かれずに近付けるな)
その時、マウス達の前を何者かが走り抜けていった。
濃紺の短い髪、顔には無精髭を生やした痩身の男。
('A`)
――盗賊団の頭、ドクオ。
彼の手にしたダガーナイフが雨のもとで鈍い光を放つ。
ノ(゚、゚リそ(あいつ・・・・?)
すれ違い様、長い前髪の下に見えた目は、死んだ魚の様に生気が無かった。
('A`)「さぁて、と・・・・おとなしくお姫さんをこっちへ渡してもらおうかい、
二枚目の婿さんよ」
ナイフの先端を向けてショボン卿に詰め寄るドクオ。
対する卿に動じる様子は微塵も無く、気障な笑みを浮かべている。
(´・ω・`)「なんとも罪作りな女性だな、彼女は・・・・
盗賊までも魅了してしまうとは」
('A`)「けっ、気取るんじゃねぇよ。身代金目当てに決まってんだろうが」
吐き捨てる様なドクオの言葉に、卿は僅かに眉をひそめ、
(´・ω・`)「・・・・ならば許せんな。その手の外道はこの島に似付かわしくない・・・・!」
剣を抜き払った。
(;‘_L’)「姫様こちらへ!」
卿の剣とドクオのナイフが交差する。
将軍は王女を護るようにして、二人の横を通り抜けた。
(;‘_L’)「ショボン様・・・・ッ」
将軍は卿の身の安全を案じて、少し離れた場所から二人の様子を見守る。
その背後にこっそりと回り込み、王女の横に並んだ。
ノ(゚、゚リそ「・・・・っと、こんばんは。大変な事になりましたね」
川 ゚ -゚)「・・・・君か」
王女がマウスを一瞥した。
川 ゚ -゚)「心配には及ばないよ」
ノ(゚、゚リそ「え」
雨にかき消されそうな程細い、王女の声。
その口調はどこか白けている様に聞こえた。
川 ゚ -゚)「茶番だ、もうすぐ終わる・・・・あの盗賊の男が胸を刺されて、な」
直後、将軍達が「おお」と声を上げる。
振り向いたマウスの目に映ったのは、雨に混じって降り注ぐ赤い飛沫。
彼は一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
(´・ω・`)
( A )
卿の剣に胸を貫かれたドクオの両腕が、糸の切れた操り人形の様にだらりと下がる。
(´・ω・`)「・・・・ふん」
卿が剣を引き抜くと、ドクオはそのままどさりと後ろに倒れた。
石畳の上に出来た血溜りが、じわじわ広がっていく。
べっとりと血糊の付いた剣を、卿は汚物でも扱う様に投げ捨てた。
ノ(゚、゚;リそ「あ、ああ・・・・」
王女の言葉が現実となっていた。
ノハ;゚听)「ド、ドクオ―――!!」
ヒートが悲鳴に近い声で、彼の名を叫んでいた。
ノハ; )「・・・・ッ!」
o川*゚ー゚)o「ボディーが甘いぜッ!」
キューの繰り出した拳が鳩尾へ突き刺さる。
ヒートは身体をくの字に折り曲げて、その場に倒れ込んだ。
o川*゚ー゚)o「燃えたろ・・・・?」
指先から火を出すあのポーズを決めるキュー。
しかし誰も見ていなかったという。
o川*゚ー゚)o「むきぃ」
頭を失い、次々と取り押さえられていく盗賊達。
将軍達も王女の傍を離れ、盗賊を連行する兵の指揮にあたっている。
呆気ない幕切れだった。
慌ただしく人が行き交う様子が目に映る。
盗賊を取り押さえた兵士、大声で指示を出す指揮官、怪我人も居る様だ。
ノ( 、 リそ(・・・・何だコレ)
どこか現実味が無い。
周りの喧騒を、妙に遠くに感じた。
( ^ω^)(お姫様の言った通りになった、だと・・・・?)
にわかに雨足が強くなり、辺りが閃光に包まれる。
遅れて鼓膜を震わせる雷鳴が、マウスの思考を現実へ引き戻した。
(´・ω・`)
不意に、顔を上げた卿と目が合った。
血溜りを踏み付けながら、彼はゆっくりとこちらへ歩いてくる。
その顔に平然と笑みを浮かべて。
本能的な恐怖を感じて、マウスは思わず後ずさった。
(´・ω・`)「・・・・なんだい、その目は」
マウスの様子に、卿は少しだけ眉をひそめる。
(´・ω・`)「何か恐ろしいものでも見るような目だね」
不躾な態度を咎めるでもない。
ただ、卿がこんなに冷たい目をするのを、ここに来て初めて見た。
腹の内を探るような、見透かそうとするような目。
やがて卿は口の端を吊り上げ、酷く残忍な笑顔を向けた。
(´・ω・`)「・・・・ふふふっ・・・・だがあながち間違ってもいないね。
君はなかなか良い勘をしている・・・・流石に私が見込んだだけの事はある」
ノ(゚、゚;リそ「ショボン、卿・・・・?」
(´・ω・`)「・・・・多分・・・・君は今こう考えているんだろうね」
卿は腕を組み、考える様な素振りの後、つらつらとマウスの胸中を代弁し始める。
“どうもこの島はまともじゃない。どこか奇妙な感じがする”
“早いところ逃げ出した方がいいんじゃないだろうか”
“しかし、その奇妙な感覚・・・・不安感が、一体どこからきているのかがわからない”
“それは何なのか、どこにあるのか・・・・?”
そこまで言うと卿は「そうだろう?」と得意気に向き直った。
対称的にマウスの表情は青ざめている。
あの夜、王女と会って以来付き纏っていた妙な不安と焦燥感。
今まではっきりと形を成さなかったそれが、ここにきて姿を現し始める。
(´・ω・`)「・・・・君の疑問にお答えしようか」
卿は静かに胸に手を当て、言葉を続けた。
(´・ω・`)「ここだよ、君の目の前にいる男こそ、君が感じている不安の原因だ」
・・・・そう、私なのだよ、と。
いつの間にか庭園からは人の姿が消え、自分達しか残っていない事に気付いた。
川 ゚ -゚)「・・・・ッ」
ノ(゚、゚;リそ「あ・・・・」
卿は手を伸ばし、マウスの後ろでいつの間にか隠れるように、身を縮めていた王女の細腕を掴んだ。
力なく引き寄せられた華奢な体が、卿の逞しい腕の中にすっぽりと収まる。
(´・ω・`)「この島は私の力によって閉ざされている。
そして、島民達は誰もその事実を知らない」
王女の肩を抱いたまま、卿は踵を返した。
(´・ω・`)「君もやがて全てを忘れ去り、この島の一部になる。
そして私のお気に入りの芝居を演じるための道化役者になるのさ」
ノ(゚、゚;リそ「島の、一部・・・・役者・・・・?」
(´・ω・`)「・・・・そう」
卿はぴたりと歩を止め、足元に目を落とす。
( A )
(´・ω・`)「こいつのようにね・・・・!」
そして血溜りの中で横たわるドクオの死体を蹴り付けた。
ノ(゚、゚;リそ「・・・・ッ」
(´・ω・`)「この島からは出られないよ、私が死にでもしない限り絶対に」
こちらを顧みる事無く言葉を続ける卿。
金縛りに遭ったように、マウスは動く事が出来ないでいる。
(´・ω・`)「あきらめてゆっくり腰を落ち着けたまえ、
我が新しき友・・・・マウス君!」
嘲る様なショボンの笑い声が、だんだんと遠ざかっていく。
二人が城内に消えると、ようやく緊張から解放されたのか、マウスはその場にへたり込んでしまった。
雨の音が強くなる。
否・・・・少しの間、雨が降っている事を失念していただけだ。
( ^ω^)「マウス・・・・」
背中越しに聞こえる相棒の声は、どこか心配そうだった。
安心させるように大丈夫、と呟いて立ち上がり、再度周りに誰も居ない事を確認した。
どうやら大分頭は冷えている。
夜も更けてきた。
いつまでもここに居たところで埒があかない。
どちらかが口に出したワケでは無いが、自然と足が帰路に向いていた。
お互い無言。
でも今は多分、同じ事を考えている筈だ。
( ^ω^)(何かあるだろうとは思ってたけどまさか・・・・)
ノ( 、 リそ(まさか依頼主がラスボスだったとは)
明日からどうしよう、とか、色々な考えが頭の中を廻る。
それにショボン卿、あの男は一体どれ程の力を持っているのだろう。見当もつかない。
結局なるようにしかならない、と二人は途中で考えるのを止めた。
ノ( 、 リそ(・・・・クー王女・・・・)
雨ですっかり冷えた頭に浮かんだのは、別れ際の王女の顔だった。
ショボンに連れていかれる時、彼女が一瞬見せた救いを求めるような表情。
伏せられた瞳に締念と、悲しみを垣間見た気がして、胸が疼いた。
・・・・彼女と話せないだろうか。
でも、自分は一体何を伝えようというのだろう・・・・?
未明。
石と金属の壁に囲まれた部屋の中、学者風の男が一人計器を睨んで頭を抱えている。
(´<_` )「・・・・いまひとつ仕上がりが悪いな。どうしたことだ?」
炉の小窓を覗き込んで男は唸った。
その顔には明らかに疲労が浮かんでいる。
かれこれ二日はまともに眠っていないのだ。
昨夜は婚礼衣裳披露会に出席していた。
ただでさえ調子の悪い魔炉から離れるのは気が引けたが、
ショボン卿の招待を断るワケにもゆかず、渋々作業を中断していたのだ。
中座してすぐにでも戻るつもりでいたが、あの盗賊騒ぎである。
抜けるに抜けられなくなった結果、ここに戻って来られたのは夜中だった。
手元の時計はアテにならないが、もうとっくに日付が変わっている頃だろう。
流石にちょっと泣きたくなってきた。
男は再び小窓を覗き込む。
炉の中で一振りの刀が真っ赤に輝いていた。
(´<_` )「なんとしてでもこの宝刀を間に合わせなくてはな」
男は手のひらで両頬をぱしりと打ち、もう一度計器類と向き合った。
この日が来てしまったのだ、最早泣き言は言っていられない。
(´<_` )「今日は聖なる宝具が三つ揃う記念すべき日・・・・そして」
無意識に握り締めた拳、そして感慨深げに男は呟く。
(´<_` )「いよいよ明日は・・・・ご婚礼だ!」
外ではようやく朝日が昇り始めていた。
#8 おわり
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