長いの
#2‐2
( ^ω^)「前金うめぇw」
相棒の膝の上で、ブーンは上機嫌だった。
( ^ω^)「マウスたーんww遊びに行くおwwww」
しかし当のマウスはというと、
φノ(ー ーリそ
五線紙に向かい、一心不乱にペンを走らせている。
( ^ω^)「おーい」
宿に戻ってから、ずっとこの調子である。
真面目に作曲に専念してやってもいい、とかなんとか、ブーンは言ったような気がした。
半分冗談だったのだが、時々妙に律儀なこの相棒は、
本当に真面目に作曲に専念する気になったのかもしれない。
( ^ω^)(やれやれ、あのお姫様の影響に違いないお)
ブーンが心配していた事態になりつつある。
ふと、マウスの手が止まった。
( ^ω^)「マウス!遊びに行くお!?」
ノ(゚、゚#リそ「ちょっと黙っててくれるー」
( ^ω^)「熱心な事だおね。そんなにあのお姫様の前で良い格好したいのかお」
ノ(゚、゚リそ
( ^ω^)「そんな事じゃ、明日もまたガイドさんのご機嫌を損ねるお」
ノ(゚、゚;リそ「うー…」
図星を突かれて逆にマウスが黙る結果になった。
夕方の接見直後の事だ。
ξ゚听)ξ
広間を出てからしばらくの間、ツンは全く口を聞かなかった。
( ^ω^)(なんだか機嫌が悪いお、彼女)
気まずさに耐えかねてマウスが話掛けようとしたところ、先に口を開いたのはツンだった。
ξ゚听)ξ「…やっぱりマウス様も心を奪われてしまいましたね、姫様に」
ノ(゚、゚;リそ「え、いや、あれは」
( ^ω^)(あー、やっぱわかりますよねー)
ξ゚听)ξ「仕方ないですよね、姫様の美しさはもうこの世のものとは思えない程、ですし。
あのショボン様までが虜になってしまうのですから」
ξ )ξ「…そう、ショボン様までが」
独り言のように呟いて、ツンはすたすたとマウスを置いていってしまった。
( ^ω^)(なるほど把握した)
ツンにとって王女は恋敵というわけだった。
ただ、相手が悪すぎる。
確かにツンは美人だ。胸が残念な事を除けば完璧と言って良い。
しかしあの王女の美しさは別次元のものだった。
( ^ω^)(悪いけどあのお姫様が相手じゃ、誰も勝てる気がしないお。
おっぱいも大きいし)
ノ(゚―゚リそ(あのさ、ブーン)
( ^ω^)(お?)
ノ( ― ;リそ(…そんなに、わかりやすかったかなぁ、僕)
( ^ω^)
( ^ω^)「お前馬鹿だろ」
ノ(ー ー;リそ「はぁ」
ため息を吐いて、マウスはペンを置いた。
( ^ω^)「お、今日は終わりかお?」
ノ(ー ーリそ「うん、何か興が削がれた感じ」
( ^ω^)「じゃあ遊びに行くおっおw」
ノ(゚、゚リそ「あのなぁ、今何時だと」
( ^ω^)「城に」
ノ(゚、゚リそ
月が沈みかけてるような頃だ。
そんな時刻に城へ行くとなれば、自分達がやる事は一つしか無い。
ノ(゚、゚リそ「真面目に作曲に専念するとか言わなかったか」
今回はいつもと違って報酬の額が額だ。
わざわざ危ない橋を渡る必要も無いと思う、というのは二人とも同意見だが、
( ^ω^)「我々の本業はー?」
ノ(>ー<*リそ「ドロボーです!」
( ^ω^)「…と言うワケで本業をほったらかしにするのもどうかと思うお。
それにこれだけ気前の良い国なんだから、掘り出し物が無いとも限らない」
ノ(゚ー゚リそ「まぁ、下見しておくに越したことはないか」
マウスが乗り気になってきたところで、ブーンは一つ釘を刺す。
( ^ω^)「ただし、あのお姫様には近付かないこと」
ノ(゚ー゚リそ チッ
( ^ω^)「あ、今舌打ちしたお?お?」
ノ(゚ー゚リそ「別にぃ」
マウスが大袈裟に肩を竦めた。
( ^ω^)「お前は美人を見るとすーぐ仕事そっちのけになるお。
あくまで目的はお宝探し!お宝探しだお!大事な事だから二度言いましたよ!」
ノ(゚ー゚リそ(うっざ)
適当に相槌を打つと、マウスはブーンを持って部屋を出た。
引き摺りながら。
( ^ω^)「痛ぇ痛ぇ!ちゃんと背負って行けお!」
ノ(゚ー゚リそ「夜は静かにしましょうー」
しんと静まり返った厨房を、見回りの兵は注意深く見渡した。
「…?おかしいな、誰か居るような気がしたんだが」
厨房の前を通った時に、中に人の気配を感じた。
この時間だ。不審に思って確認してみたのだが、
「気のせいか…」
首を傾げながらも、兵は厨房を後にした。
( ^ω^)(行ったお)
ノ(゚―゚;リそ(セフセフ)
( ^ω^)(ったく、男がGくらいで悲鳴上げそうになってんじゃねーお)
ノ( ― ;リそ(…正直すまんかった)
( ^ω^)(あと、つまみ食いも止せお)
ノ(゚、゚リそ チッ
( ^ω^)
頃合いを見計らって、マウスは厨房を後にした。
堂々と廊下を歩き回る様子からは、周囲への警戒が微塵も感じられない。
だがマウスは今、足音はおろかわずかな呼吸の音さえ立てていなかった。
つまり姿を見せない限りは、気付かれる事が無いということだ。
しかもマウスは耳だけで人の気配を探り出し、見張りを巧く避けながら進んでいる。
ノ(゚、゚リそ(それにしても妙な城だな)
見張りの数が少ない、とマウスは感じていた。
呑気な島だとは思っていたが、城の警備まで笊でどうする。
「不法侵入大歓迎」と言うのならともかくとして。
ノ(ー、ーリそ(まぁ、楽っちゃ楽なんだけどね)
( ^ω^)(案外罠があるのかもしれないから、気を付けて行くお)
階段を昇った先に、大きな扉がある。
マウスは周囲に人の気配が無いことを確かめて、そっと扉を開けた。
( ^ω^)「ぎぎぃーwwww」
ノ( ― #リそ
( ^ω^)(正直すまんかった)
重い扉はそれでも、開く時に音を立ててしまう。
人が居ないとわかっていても、二人は肝を冷やした。
ノ(゚、゚リそ「…ふぅ」
扉の中に入ってようやく一息。
ノ(゚、゚リそ(お、ここは今日の)
夕方、ショボンとの接見が行われた広間だった。
ノ(゚、゚リそ(いくらなんでも、ここに見張りが居ないなんて)
( ^ω^)(笊にも程があるお)
さすがにこの警備の手薄さを不審に思ったが、ここまでこれといった収穫も無い。
このまま手ぶらで引き返すのも少々癪だったので、もう少しだけ調べてみる事にした。
ノ(゚、゚リそ(あっち、行ってみようか)
そう言ってマウスが広間の奥を指差す。通路があるようだ。
( ^ω^)(無理はするなお、相棒)
通路の先には階段。
マウスは城の東西に、塔があったのを思い出した。
ノ(゚ー゚リそ(こっから入れるのか)
塔の上にあったのは寝室だった。
上品な調度類が置かれているが、どこか無機質な、人の匂いがしない部屋。
この雰囲気に、マウスは覚えがあった。
( ^ω^)(おや、何か嫌ーな予感がしてきたお)
ノ(゚―゚リそ(ここはひょっとして…)
不意に窓から風が吹き込み、仄かな花の香が鼻腔を擽っていく。
自然と目線が窓の方へ移動した。
ノ(゚、゚;リそ(人が居る…!)
バルコニーに人の姿があった。
星空の逆光を受けて、細いシルエットが浮かび上がっている。
動揺した。確かに人の気配は無かった筈だ。
川 ゚ -゚)
( ^ω^)(やっべ、ここはあのお姫様の部屋だお)
( ^ω^) じとー
ノ(゚―゚;リそ(知らない!狙ってない!)
川 ゚ -゚)
王女がこちらに振り返る。
二人の間に緊張が走った。
( ^ω^)(おい、本当にやばいお。どうする)
ノ( ― ;リそ(万国旗も花も仕込んでないけど仕方ない)
意を決して、マウスはバルコニーの王女へ近づいた。
川 ゚ -゚)
夜空に映える白磁の肌、風に靡く深緑の髪。
深く冷たい瞳が、まっすぐにマウスを見つめている。
ノ(゚―゚*リそ
間近に見た王女の姿は、息を呑むほどに美しかった。
ノ(゚ー゚;リそ「えっ、と…今晩は」
川 ゚ -゚)
ノ(゚ー゚;リそ「あの、道に迷ったみたいで、それで」
( ^ω^)「…と言うのは嘘で、本当は姫に逢いにきたのです」
ノ(゚ー゚リそ
( ^ω^)「嗚呼今宵の貴女は一段とお美しい」
川 ゚ -゚)
ノ(゚―゚#リそ「ブーンコルァアアアアッ!」
( ^ω^)「なんだお、代弁してやったのに」
ノ(゚―゚#リそ「喋んな馬鹿阿呆!つーかどこが代弁なんだよ!」
( ^ω^)「隠すなよ相棒、本心なんだろ…?」
ノ(^ー^#リそ「よーし、歯を食い縛れー。そこから投げ落としてやる」
川 ゚ -゚)
( ^ω^)「…って、ちょっと待て、この状況はおかしい」
ノ(゚、゚;リそ「…うん」
さすがに二人は、王女の様子が少々異常な事に気付いた。
真夜中に自分の部屋へ侵入してきた旅の音楽家、突然喋り出す楽器、そして音楽家と楽器のガチバトル。
こんな状況で、彼女は顔色一つ変えない。
( ^ω^)「何故なら…そう、楽器は普通喋らない!」
ノ(゚、゚リそ「お前が言うな」
王女がちらり、とブーンを見やる。
だが彼女はすぐに興味無さげに、目線を逸らした。
ノ(゚、゚;リそ
( ^ω^)
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「…可哀相に」
それは初めて聞く、彼女の声だった。
川 ゚ -゚)「また、新しい人が来たんだな。この檻の島の中に」
ノ(゚―゚リそ「…っ!」
独り言のように言い残し、王女は部屋へ戻っていった。
( ^ω^)「…マウス、ずらかるお」
ノ(゚、゚;リそ「え、ああ」
( ^ω^)「どうやら人を呼ばれる心配も無さそうだお」
マウスはバルコニーの手摺りをヒョイ、と飛び越えると、そのまま四階下の中庭に着地した。
ノ(゚、゚リそ(檻の島か)
マウスは今し方降りてきた塔を見上げた。
そこにもう王女の姿がある筈は無い。
川 ゚ -゚)(…可哀相に)
あの時、それまで無表情だった王女が、とても哀しそうな顔を見せた気がした。
ノ( 、 リそ(…気の迷いかな)
( ^ω^)(どうしたお?)
ノ(゚、゚リそ(なんでも無いよ)
白い塔の向うには、満天の星空が広がっていた。
#2 おわり
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