長いの #2‐1 #2 孤島の姫君 从'ー'从「直りそうですか〜?」 ノ(゚、゚リそ「ああ、話し掛けないで…」 壁掛時計と自分の懐中時計、文字盤を並べて交互に見比べた。 秒針の動きがピタリ、と合う。 約束の5時まで時間を潰そうと立ち寄ったカフェ。 ふと目に入った時計の時間が狂っていた。 それがどうにも気になり、修理を申し出たのだが、 从'ー'从「お客さん器用ですね〜」 ノ(゚ー゚リそ「あんまり嬉しくなさそうですね〜」 この通り店員の反応はいまひとつだった。 从'ー'从「どうせまたすぐ狂っちゃいますから〜」 店員の話では、この島の殆どの時計がそうらしい。 磁場の関係だと言われているが、詳しい事はわからなかった。 ノ(゚、゚リそ「じゃあ時計意味無いじゃん」 从'ー'从「でも〜、時計屋さんにはちゃんと合ってる時計がありますよ〜」 ノ(゚ー゚リそ(それでも一応時計屋はあるのか) こんな呑気な島では時計も売れないかもしれないな、と思った。 誰も時間を気にするでも無く暮らしている。 ノ(゚ー゚リそ「じゃあそろそろお勘定…」 ノ(゚ー゚;リそ「!」 背後から物凄い殺気を感じた。 店員の表情が強ばっている。 ノ(゚ー゚;リそ「う、後ろに居るのは…ツンさんかなー?」 ξ#゚听)ξ「こんな所にいらっしゃったんですかマウス様。 いやー さ が し ま し た よ 」 首根っ子を捕まえられた。 とても女性とは思えない握力だ。 ξ#゚听)ξ「ショボン様がお待ちです。ご案内致しましょう」 ノ(゚ー゚;リそ「いや、あの、お勘定がまだ…アッー!」 从;'―'从 後向きにズルズル引き摺られていくマウスの姿を、店員が呆然と見送っていた。 ( ^ω^)(いやー、すまんこすまんこ。時間の事言うの忘れてたおw) ノ( ― #リそ(てめぇワザとだろぉがぁああああッ) こんな呑気な島でも、時間に厳しい人は居たようですね。 うん、ブーンは後で解体調律の刑だね。 ξ゚听)ξ「時計を直してらしたんですか」 ノ(゚ー゚リそ「親切心でして」 城に案内される間、一応釈明の時間は与えられた。 ξ゚听)ξ「正確な時計をお持ちなんですね」 ツンが珍しそうにしている。 彼女の時計もご多分に漏れず、よく壊れるらしい。 つい今朝方、修理から帰ってきたばかりだと言った。 マウスの時計は今まで一度も狂った事が無い。 高価な物ではないが、落ち着いたデザインが気に入って、長く愛用しているのだった。 ( ^ω^)(ついでに腹時計も正確だお) ノ(゚、゚リそ(うっさい) ξ゚听)ξ「?こちらです」 ヴィップの城は島の中心にある、山の裾に建てられている。 小高い場所に建つその城は、街中どこからでも見ることが出来た。 ノ(゚ー゚リそ「あ、さっきの立体交差だ」 宿へ案内されるときに潜ったのは、城の正門へ続く道だったようだ。 (‘_L’) 正門前で誰かが待ち構えているのが見えた。 50は過ぎているだろう、がっしりとした身体つきの、大柄な男性だ。 綺麗に撫で付けられた髪や顎髭には白い物が多く、顔には深い皺が刻まれている。 彼はこちらの姿を確認するや、それまで真一文字に引き結ばれていた口元を綻ばせ、 両手を広げて二人を出迎えた。 ツンが敬礼を返す。どうやら彼女の上官であるらしかった。 (‘_L’)「あなたが旅の音楽家どのですな。さ、ショボン様は応接間でお待ちです」 男性は二人を手で促して、先に城内へ入っていった。 彼の後に続いて城内の階段を昇ると、大きな扉の前に通された。 ここが応接間らしい。 (‘_L’) 着衣の乱れを整えて、男性が目配せをしてくる。 ツンが姿勢を正し、マウスは黙って頷いた。 (‘_L’)「マウス様を、お連れしました」 扉が内側から開かれた。 赤い絨毯が敷かれた広間の奥に、二つの玉座。 向って右に座っているのが招待状の送り主、ショボン卿である。 (´・ω・`) ショボン卿は長い銀髪を背に流した、美形の偉丈夫だった。 容姿もさることながら、全身からまるで圧倒するような気配を漲らせている。 胸板から割れた腹筋まで惜し気もなく露出した衣裳は、自信の表れに違いない。 ( ^ω^)(奴のあだ名は聖なる腹筋) ノ( ― ;リそ(ぶwwwwww) (‘_L’)ξ゚听)ξ「?」 三人は玉座の前まで進み出て跪いた。 (´・ω・`)「よく来てくれたねマウス君、私が」 ( ^ω^)(私が聖なる腹筋だ) ノ( ― ;リそ(やめれwwwwww) (´・ω・`)「…?君の評判は耳にしているよ。別の音楽家の演奏だったが、君の曲も聞いたことがある …実に素晴らしいメロディだった」 ( ^ω^)(六つに割れた腹筋には聖なる力が) ノ( ― ;リそ(むしろ今wwww僕の腹筋が死ぬwwwwww) (´・ω・`)「…ごほん」 ノ(゚ー゚リそ「あ、聞いてまーす」 (´・ω・`)「君は旅の音楽家で、決して一ヶ所にはとどまらないため、『幻の歌い手』と呼ばれているそうじゃないか」 幻の歌い手。 マウスにとってそれはばつの悪い響きだった。 確かに今まで一所に長く居た試しはない。 性分と言うのもあるが、単に盗人として足がつくのを嫌っていただけだ。 それがいつの間にか美談となり、一部で神格化までされているのは知っているが、 これには二人とも失笑を禁じえなかった。 ( ^ω^)(知らぬが仏だお) 卿の使者が手紙を持ってきた時の事を思い出す。 その時の彼は疲れ切った顔に喜色を浮かべていた。 噂を頼りに方々を捜し回っていたのだろう。 (´・ω・`)「実は君の腕を見込んで頼みがあるんだ」 一通りマウスを褒めちぎった後、ようやくショボンは本題に入った。 ショボンが結婚する、というのは既に聞き及んでいた。 式までは今日を入れて5日間、島は婚礼の祝祭に入っている。 彼の頼みと言うのは他でもない、マウスに婚礼の儀式の曲を作って欲しい、と言うものだった。 (´・ω・`)「時間が無くて申し訳ないが…私はどうしても君の曲でなければいやなんだ」 ノ(゚、゚リそ(5日後か…出来なくはないな) (´・ω・`)「引き受けてくれるかな、マウス君」 ( ^ω^)「だが断る」 (´・ω・`) ノ(゚―゚リそ (´・ω・`)「…ふ、焦らすなよ。興味も無いのにわざわざこんな島まで来るかい?」 ( ^ω^)(うぜぇ) ノ(゚ー゚リそ(きめぇ) (´・ω・`)「引き受けてくれるね」 ノ(ー ーリそ コクリ 途端にショボンは表情を輝かせた。 (*´・ω・`)「ありがとうマウス君、感謝の言葉もないよ。これからは私を一人の友人として接してくれ」 ( ^ω^)(超遠慮するわ) 提示された報酬は法外で、本業の盗人稼業が馬鹿らしくなる様な額だった。 これにはさすがのブーンも、 ( ^ω^)(今回ばかりは真面目に作曲に専念するかお) と言った程だ。 たまにはそれもいいかもしれない。 不意に、広間の奥で人の動きがあった。 ショボンがそれに気付くと、 (´・ω・`)「ちょうどいい…マウス君、君にも私の未来の妻を紹介するよ」 と言って傍に控える親衛隊の者を促した。 女性で構成された親衛隊に囲まれ、奥から一人の女性が姿を現す。 川 ゚ -゚) (´・ω・`)「古よりのヴィップ王家の血を引く王女、クー姫だ」 ノ(゚―゚リそ ( ^ω^)(わぉ、これは噂以上の美女だお) 長い髪は艶やかな深緑。 白磁のような肌は、身に纏う衣裳の白より更に白い。 その瞳はまるで底無し沼のように深く、冷たく、 見ているだけで吸い込まれてしまいそうだ。 ( ^ω^)(イテッ) 床に叩きつけられて、ブーンの弦がびよーんと音を上げた。 マウスがブーンを取り落としてしまったのだ。 彼はまるで魅入られた様に、美しい王女から目を離せないでいる。 ノ(゚―゚*リそ 惚けた顔のまま固まっているマウスの姿に、ショボンが思わず苦笑を浮かべた。 (´・ω・`)「彼女の美しさに驚嘆してくれるとは嬉しいが、いかんせん愛想のない女性でね」 川 ゚ -゚) 左の玉座に着いた王女は眉一つ動かさない。 (´・ω・`)「…挨拶くらいしたらどうだね、クー」 ショボンがため息を吐くと、ようやく彼女は玉座から立ち上がる。 ( ^ω^)(あ、こっち来るお) マウスの前に進み出た王女は、無言のまま跪き、足元に落ちたブーンを拾い上げた。 ノ(゚―゚*リそ「…あ」 目の前に差し出されたブーンを、反射的に受け取った。 わずかに王女の手が触れる。 川 ゚ -゚) 目が合った。 マウスの心に何かが触れてきた。 ( ^ω^)(作曲モードktkr!) マウスは受け取ったブーンをそのまま構えた。 ξ;゚听)ξ (;‘_L’) (´・ω・`) 川 ゚ -゚) 広間に居る一同が息を呑む。 マウスは自分に降ってくる音をそのまま指に乗せた。 弦が弾かれる度に、それは美しくも甘い旋律を作り出す。 ( ^ω^)(イェエ〜オォ〜おっお〜♪) ノ(ー ーリそ ノ(゚―゚リそ ぴたり、と演奏が止んだ。 広間が静寂に包まれる。 川 ゚ -゚) (´・ω・`)「…ほぅ」 ショボンが嘆息を漏らす。 関を切ったように、周りから拍手が巻き起こった。 ノ(゚ー゚;リそ(あ、あれ?こんなに人居たか?) (´・ω・`)「たいしたものだ!もう出来たようなものじゃないか」 ショボンが大絶賛している。 王女はいつの間にか玉座に戻っていた。 (´・ω・`)「是非とも早く完成した曲を聞きたいものだ。 …ああ、やはり君を選んだ私の目に狂いは無かった!」 ショボンが立ち上がり、マウスの前に進み出た。 差し出された右手を握り返すと彼は満面に微笑む。 (´・ω・`)「また会おう、マウス君。…我が新しき友よ…!」 その日の接見はこれで終わりだった。 ツンに促されてマウスは広間を後にする。 川 ゚ -゚) 退出する間際にもう一度、王女の姿を省みる。 彼女は冷たい表情のまま、虚空を見つめていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |