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長いの
#9‐1


喉の渇きで目を覚ました。

ベッドを這い出し枕元の水差しから水を飲む。
大分温んでいて、喉を通る感触が少しばかり不快だった。

薄らと汗の滲んだ肌。
風でも吹いていないだろうかと、窓を押し開いて寝巻のまま外へ出る。


川 ゚ -゚)「・・・・四日目、だな」

東の空が白み始めていた。

汗ばんだ肌にひんやりとした夜風が心地良い。


不意に体が軋み、クーは小さく呻いた。

この体のそこかしこにに、あの男が触れた痕跡が残っている。
嫌悪感は、別に無い。
そんな感情はもう失ったのかもしれない。

クーの虚ろな目に夜明けの空が映る。
バルコニーから見えるこの景色が、いつしか世界の全てになっていた。



――忘れない事だ、クー。


何度も何度も、刷り込む様に聞かされてきた言葉が、脳裏に甦る。


――例え心は屈服しないつもりでも、君が私のモノである事に変わりは無い。

――永遠に。




川  - )「・・・・ない、私は」

何度も何度も、自分自身に言い聞かせる様に、クーは呟いた。


川 ゚ -゚)「・・・・私は・・・・誰のモノでもない・・・・」








#9 早朝低血ラブアフェア




朝日に照らされた白亜の城、雨上がりの空に映える緑の庭園。
この場所で起こった惨劇を誰が想像出来るだろう。


自分が変われば世界は変わる、とは良く言ったものだ。
世の中には様々な側面があり、見方を少し変えるだけで全く違う形が浮かび上がる。
世界を変えるのは自分の認識一つ。
昨日までこの島は確かに“楽園”だった。

石畳にしゃがみ込んで目を凝らせば、隙間に僅か黒く血痕が残っている。
粗方昨夜の雨に流されてしまった様だが、
あれが現実の光景だったと証明するには十分な証拠だった。

それでもマウスは今だに夢の中に居る、といった感じで、






ノ(- -リそ くー


( ^ω^)「起きろ」


どうやら比喩ではなく、本当に夢の中へ旅立っていたようだ。

珍しく早起きしたと思ったらこの有様である。
ひょっとしてこの男、血圧が低いのだろうか。
それならもっとタンパク質が豊富な物を食わせねばなるまい。カエルとか。


( ^ω^)「今日の晩飯はカエルの唐揚げだお」

ノ(゚―゚リそ「何で?」



ショボン卿のラスボス宣言から一夜明けて、二人は懲りずにまた城へやってきていた。

卿によって閉ざされているという、ヴィップ島。

しかしいくら小さな島とはいえ、まるごと封じ込めるとなれば一朝一夕にはいかない筈だ。
何か魔法の力が働いているには違いないが、


( ^ω^)「魔法とかwwwwwwww」


その先はサッパリ見当がつかない。

幸か不幸か王家の客であるマウスは、城への出入りが顔パスだった。
卿とその息のかかった者達が居るだろう城内をうろつくのは躊躇われるが、
そこはアレ、虎穴に入らずんば・・・・(えーと何だっけ)と言うやつだ。

とにかく今は、卿の目的がよくわからない。
今後の自分達の行動を決める為にも、まず敵の事を知らなければ。

・・・・それと、どうやらマウスには別の気掛かりもある様だった。


( ^ω^)(でも調べるっつってもなぁ)

初日の夜に忍び込んだ時には、これといって変わった物は見つからなかったわけだが。
さて、まずはどこから調べようかと思案していると、
建物に反響して数人分の足音が聞こえてくる。

ノ(゚、゚リそ(? こんな朝早くに・・・・)

音のする方を振り返ると、城の東塔側から歩いてくる人影を見つけた。







(´・ω・`)「・・・・おや、マウス君」

( ^ω^)(げ)


よりによって今一番会いたくない奴に出くわしてしまうとは。

ショボン卿はマウス達に気付くと、その顔に笑みを貼りつけて近付いてきた。
背後にはそれぞれに牛、鳥、蛇を模した祭りの面と、
この南国に似付かわしくない、厚手のローブにすっぽり身を包んだ、
卿の三人の側近が控えている。

(´・ω・`)「今日はまた随分と早いね。どうだい、良い曲は出来たかな?」

何事も無かったように振る舞う卿。
対するマウスは白けきった表情で、挨拶も返そうとしない。
卿の顔に貼りついた柔和な笑みが、みるみる冷笑へと変わる。

(´・ω・`)「・・・・白々しい会話はやめろ、とでも言いたげだね」

先程よりいくらかトーンダウンした声に、背中を冷たい物が伝う。

(´・ω・`)「ま、いいさ。私としては明日までに頼んだ曲を完成してくれればそれでいい。
      それが君の“役どころ”だからね」

今度は“役どころ”と来たか。
確か昨日もお芝居だとか道化役者だとか、ワケのわからない事を言っていた気がする。

(´・ω・`)「それさえこなしてくれれば、後は何をしていても良い。
      何を企もうと、何を探ろうとも・・・・ね」

どうやらこちらの考える事などはお見通しらしい。
そして卿は言外に「何をしても無駄だ」と言っているようだった。
自分が黒幕だという事もアッサリと教えてしまうし、
一体この男の余裕は何なのだろうか。
考えただけで薄ら寒くなってくる。

とりあえずマウスは、

ノ(゚、゚リそ(作曲なんかとっくに詰んでるっつーの)

・・・・と心の中で舌を出しておいた。


(´<_`ノ(゚、゚リそ

(´<_`ノ(゚、゚リそ ?

(´<_`(、゚ リそ"





ノ(゚―゚;リそ「うおぁあああああああッ!?」

卿の方を気にする余り、真横に人が並んだ事に気付かなかった。
思わず素っ頓狂な声を上げて飛び退いたマウスを、卿がニヨニヨしながら眺めている。

(´<_` )「ショボン様お話が」

マウスを驚かせた張本人は、マイペースに自分の用件を済ませようとしていた。

(´・ω・`)「ん、弟者か・・・・どうかしたのか?」

(´<_` )「申し訳ございません、聖な(´・ω・`)「ああそうだ、マウス君にも紹介しておくよ」

(´<_` )「・・・・・・・・」

(´・ω・`)「彼はこの島の魔法科学者、弟者だ」

弟者、と紹介された男がマウスに会釈をする。

眼鏡のよく似合う、いかにもインテリといった感じのイケメンだった。
眉間に刻まれた皺のせいで少し老けて見えるが、多分若いのだろう。

ノ(゚―゚リそ(ところであれは猫耳?)

( ^ω^)(たぶん猫耳)

それにしても何と言うか、変わった帽子を被っているなぁ、と。

(´・ω・`)「・・・・で、弟者」

(´<_` )「ああ、はい。実は聖なる宝刀の仕上がりが遅れております。
       どうも魔炉の調子がおかしく、昨夜から調整しているのですが」

弟者が眉間へ更に皺を寄せる。目の下にはクマさんも居る様だ。

(´・ω・`)「魔炉の調子が悪いのはいつもの事だろう、気にするな。
      最悪、明日までにあれば良いのだからね」

(´<_` )「は・・・・なんとか夕刻までには完成させます」

卿の労いに幾らか生気を取り戻した様子で、弟者は来た方へ戻っていった。

(´・ω・`)「聖なる宝刀と言うのはね、私が婚礼の時に持つ刀の事だよ」

ノ(゚、゚リそ「いや、別に聞いてないんだけど」

(´・ω・`)「この日の為に魔力の炎の炉で焼き続けるのさ。
      まぁ、今日の晩餐の頃には間に合うだろう」

ノ(゚ー゚リそ イラ

間に合うだろう、という卿の言葉には、何か確信の様なものを感じた。

そうだ、と卿が掌を打つ。

(´・ω・`)「マウス君、今日は城で夕食をとりたまえ。
      宝石、宝冠、宝刀・・・・ヴィップの三つの秘宝を間近に見られるのは今日だけだ」

そう言って、卿は口の端を吊り上げる。

(´・ω・`)「是非・・・・君に見てもらいたい」

何故か胸騒ぎがした。

一方的に約束を取り付けると、卿は側近達を引き連れて城内に消えた。


気が抜けたのか、マウスがため息を吐く。
この短時間でどっと疲れが蓄まった気がした。

ノ(゚、゚;リそ「・・・・何を考えてるんだかアイツは」

( ^ω^)「腹の底の読めない男だお」

何もかも卿の筋書き通りに運ばされている様で、焦燥感だけが募る。

不意に痛みを感じて手を開くと、掌にくっきり爪の食い込んだ痕が残っていた。

ノ(- -リそ チッ

( ^ω^)「舌打ちやめなさい」


朝一で嫌な奴と遭遇してしまうし、なんだか幸先が悪い。
帰ってしまおうかと思ったが、何の収穫も無しにと言うのも悔しいので、
とりあえず城の正面玄関へと足を向けた。
どうせ夕食までは、卿と顔を合わす様な事にはならないだろう。


ノ(゚、゚リそ(・・・・ん、これは)

玄関の手前まで来て、マウスはふと足を止めた。



何か聞こえる。

消え入りそうな小さな声で、誰かが歌を口ずさんでいる。
聞き覚えのある旋律に耳を澄ませば、それはマウスが初日の接見で披露した曲だった。

歌は西塔の裏の方から聞こえてくる。
自分の曲を、一体誰が歌っているのだろう。
マウスは自然と声のする方へ向かっていた。


ノ(゚、゚リそ「・・・・あ」






川 - -)

川 ゚ -゚)


クー王女、歌声の主は彼女だった。





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