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長いの
#7‐2

マウスがぽかんとしていると、ミセリは可笑しそうに笑った。

ミセ*゚ー゚)リ「あははっ、ごめんなさい宿帳見ちゃったの。
      いつまでも“音楽家さん”じゃ変だから、そう呼んでもいいよね?」

ノ(゚ー゚*リそ(・・・・悪くない)

( ^ω^)


ミセ*゚ー゚)リ「今日は本当にどうもありがとう!」

ノ(゚ー゚リそ「いいえ、こちらこそ。楽しかったよ」

ミセ*゚ー゚)リ「お礼の代わりに、いいところに連れてってあげる。
      一番最後のとっておき・・・・!」

そう言ってミセリは人差し指を唇に当て、悪戯っぽく笑った。

ミセ*゚ー゚)リ「みんなにはナイショの、あたしの秘密の場所なんだ。
      ・・・・他の人には教えちゃダメだよ?」



ミセリはマウスを街の外に連れ出した。
街の東には森が広がっている。
森には当然モンスターも出るので、普通子供が一人で来る事は無いのだが、
マウスを小走りに先導するミセリの足取りは妙に慣れたものだった。

ミセ*゚ー゚)リノシ「マウスさんっ!こっちー!!」

茂みの前でミセリが手を振っている。

ミセ*゚ー゚)リ「ここを通れるんだよ!」

一見行き止まりだが、低い木立が密集した茂みを掻き分けると、
子供一人が通れる程のトンネルになっている。
木立が避けているような格好で、どうやって出来たのか不思議だった。

ノ(゚ー゚リそ(これはト○ロの巣にでも続いていそうな)

小さなミセリは楽々とその中を通っていく。
マウスも身を屈めて彼女の後を・・・・

( ^ω^)「イテッ」

ノ(゚、゚リそ「あ、悪ぃ」

ブーンを枝に引っ掛けた。


やっとの思いで茂みから這い出すと、少し先にミセリが立っているのが見えた。
ミセリはマウスの姿を確認すると、手を振ってまた走りだした。
途中何度も振り返り、マウスが付いて来るのを確認しながら、彼女は更に森の奥へ入って行く。

ノ(゚、゚リそ(・・・・お?)

清涼感のある香が鼻腔を擽った。

不意に明るくなる視界。
目の前に広がった光景に、マウスは思わず嘆息を漏らす。




そこは一面の花畑だった。

森の中に小さく開けた広場を、埋め尽くすように咲いた白い花。
まるで雪の中に居るような景色である。

ノ(゚、゚*リそ「・・・・驚いた。この花、こんな暖かい場所でも咲くのか」

マウスがこの花を見たのは、ここよりずっと寒い地方だ。
その地方では雪が溶けると、代わりに白い花が大地を覆うようになる。
地元の人たちはその可憐な花を“スノーホワイト”と呼び、短い春の風物詩として愛でていた。

ミセ*゚ー゚)リ「・・・・ね、きれいでしょ?
      ここがあたしのお気にいりの場所なの」

白い花畑の真ん中で、ミセリが誇らしげに小さな胸を張っていた。

ミセ*゚ー゚)リ「ちょっとイヤな事とか面白くない事があっても、
      ここに来るとなんだか気分が晴れてきちゃうんだ」

そう言ってミセリは気持ちよさそうに深呼吸をする。
マウスもそれに倣って、花の良い香りを胸いっぱい吸い込んだ。

ノ(゚ー゚リそ「ここは・・・・本当にとっておきだね」

ミセ*゚ー゚)リ「でしょ?でしょっ!」

ノ(゚ー゚リそ(花畑に木漏れ日・・・・このロケーションはなかなか)

マウスはおもむろにブーンを背から下ろした。
その様子を見ていたミセリが、期待に瞳を輝かせる。

ノ(- -リそ「・・・・それではお返しに、僕のとっておきを」

皆には内緒だよ、と、マウスは立てた指を唇に当て、
さっきミセリがして見せたように悪戯っぽく笑った。





ブーンの弦が涼やかな旋律を奏でる。

即興だったがミセリは気に入ってくれたようだ。
演奏するマウスの手元を、夢中になって目で追う様が微笑ましかった。
ませた発言も多いけれど、こういう所を見るとやはり子供なのだな、と実感する。


ミセ*>ヮ<)リ「すごいすごい!本当に素敵!!もーっ、サイッコー!!」

演奏を終えると、ミセリは大はしゃぎでマウスに拍手を送った。

ミセ*- -)リ「えへへー・・・・こぉーんな素敵な曲を、街で一番にあたしが聞いちゃった!」

ノ(^ー^リそ「どういたしまして。気に入ってくれて良かっt」

ミセ* ー )リ(ここまでは計画通り)

ノ(゚ー゚リそ「え?」

ミセ*゚ー゚)リ「ん?」

何か一瞬ミセリがほくそ笑んだ様な気がしたが、多分見間違いだろう。

そうしている内に、どこからか聞き覚えのある音楽が聞こえてきた。

ノ(゚、゚リそ(・・・・お、これは)

ミセ*゚ー゚)リ「あ、聖なる宝冠の儀式だよ!そっかぁ、この近くでやるんだね」

なるほど、この音楽は昨日の朝、海の遺跡で聞いたのと同じ曲だ。

儀式を見に行こう、と言ってミセリはパタパタと走って行った。
案内の最中も思ったが、本当にせわしない娘だ。

ブーンが何か言いたそうにしている事に気付き、
マウスは不自然にならない程度にミセリから距離を取った。


( ^ω^)「お前は時々サラっと気障な事するお」

ノ(゚、゚リそ「キザ?」

マウスは首を傾げる。

( ^ω^)(自覚が無い、だと・・・・?)

マウスが度々“あるトラブル”を起こす原因が、今更解った気がした。
面倒だが早めに自覚を促さねばなるまい。

( ^ω^)(あー、頭痛ぇ)

何故ならそのトラブルに巻き込まれるのは、いつもブーンだ。




ミセリに付いて行くと、森の中に海岸にあったのとよく似た遺跡があった。
既に人が集まっている。
時間の関係だろうか、聖なる宝石の儀式より見物客が多いようだ。

楽団と親衛隊、その中心には、仮面の男達に囲まれたショボン卿とクー王女の姿があった。




(´・ω・`)川 ゚ -゚)


相変わらず自信に満ち溢れた表情の卿と、氷のような瞳をした王女。
儀式の一団を遠巻きに眺めながら、マウスが漏らしたため息を、ブーンは聞き逃さなかった。

( ^ω^)(いつも通り美人に逆上せてるだけだと思ってたけど、
       ・・・・案外マウスはあのお姫様に本気なのかもわからんね)

とはいえ、王女と一介の楽士では住む世界が違う。
おまけに彼女にはショボンという婚約者まで居るのだ。
相棒の胸中を察しながらも、ブーンは彼に優しい言葉をかけてやる位しか出来なかった。

( ^ω^)(気を落とすなマウスたん。キミには僕が居るじゃないか)

( ^ω^)+


ノ(- -#リそ(ジャガイモの芽大量に食わせたろか)




卿が両手を掲げ、儀式が始まった。

海岸で見た聖なる宝石の儀式と殆ど同じようだ。
違うのは周りで踊っている男達の仮面くらいだろうか。
これは牛の形を模している。

やがて石の台座の上に、黄金に輝く宝冠が姿を現し、聖なる宝冠の儀式は無事終了した。

王女と宝冠とを守りながら、一団が遺跡から退場していく。
見物客も解散し、森の中に静寂が戻った。


ミセ*- -)リ「お姫さまキレーだったなぁ・・・・憧れちゃうよね」

ミセリのような一般人が、間近に王女の姿を見られる機会は滅多に無い。
彼女はうっとりと余韻に浸っていた。

ノ(゚ー゚リそ「うん、そうだね・・・・」

ミセ*゚ -゚)リ「・・・・でもなんか冷たい感じだったよね。
      “まりっじぶるー”なのかな?」

ノ(゚ー゚;リそ「む、難しい言葉知ってるよね、ミセリちゃんって」

王女の様子は幼いミセリの目にも、異様に映ったようだ。
結婚を目前にして彼女は、何故いつもあんなに冷たい表情をしているのだろう。

望まない結婚、なのだろうか。







風が出てきた。

宿を出た時はとても良い天気だったが、午後になって急に曇り始めたようだ。
ひょっとして雨が降るのかもしれない。


ミセ*゚ー゚)リ「・・・・あたし、そろそろ行かなきゃ」

ギリギリまで付き合うつもりで、市場をぶらついていたが、
彼女が主張するところの“最後の自由な時間”も、間もなく終わりの様だ。

ミセ*゚ー゚)リ「ね、手繋いでもイイ?」

聞かれるままに右手を差し出すと、ミセリはおずおず自分の手のひらを重ねる。
きゅ、と遠慮がちにマウスの手を握った彼女の表情は、照れくさそうでもあり名残惜しそうでもあり、

ミセ* ー )リ(計画通り計画通り・・・・)

どこか不敵にも見えた。




宿へ戻るや否や、支度があるからとミセリは慌ただしく出ていってしまった。


ミセ*゚ー゚)リ「あたしもがんばって踊りぬくから、マウスさんもがんばって良い曲作ってね!
      そしたらお姫さまもニッコリ笑ってくれるかも!」


最後にそう言い残して。


( ゚д゚)「・・・・スミマセンね、娘の我儘に付き合わせちまって」

ノ(゚ー゚リそ「僕も丁度暇でしたから・・・・それに、楽しかったですよ」

( ゚д゚)「なら良いんですけどね・・・・そうそう、さっきお城のお使いの方がみえましたよ」

そういえば卿から、今夜の婚礼衣裳披露会に招かれていた。
城の使いは、8時前には迎えに来ると伝言して帰って行ったらしい。

( ^ω^)(待機してろって事かお。ガイドさんも学習したな)

ノ(゚、゚リそ「ツンさんは他に何か言ってませんでしたか?」

( ゚д゚)「ツン様・・・・?いえ、別の方でしたよ」

ノ(゚、゚リそ「・・・・?若干うざいボンボン頭の女の子ですか?」






o川*゚ー゚)o ←






( ゚д゚)「あ、その方です。何か家捜ししていかれたようですよ」

ノ(゚―゚;リそ「何で止めてくれなかったんですか!」

( ゚д゚)「まあまあ、そんな事より時間まで部屋で休まれては?お疲れでしょう」

ノ(゚ー゚リそ イラ


宿屋をグーで殴りたい衝動を押さえつつ、マウス達は部屋に戻った。







( ^ω^)「・・・・そういえば、今日は一度も姿を見せなかったおね、彼女」

ノ(゚、゚リそ「・・・・」

昨夜の事もあるし、やはりツンは相当怒っているか落ち込んでいるのだろう。
気にしているのか、マウスの表情も何だか冴えない。

( ^ω^)「どっちみちもう城に行ってみるしか脱出の手掛かりは無さそうだお」

朝は収穫が無かったが、婚礼衣裳披露会にはクー王女も姿を見せる。
彼女は何らかの事情を知っている筈だった。

ノ(゚、゚リそ「・・・・わかった、なんとか王女に接触してみる」

( ^ω^)「健闘を祈るお」



話が済むと、ブーンはさっさと寝てしまった。


( ^ω^) すぴー


ノ(゚ー゚リそ(寝息を立てるのって、楽器としてどうなんだろう)

楽器は気楽で良い。

相棒の寝顔(?)を尻目に、マウスは深々とため息を吐いた。
とはいえ頭を使うのは専らブーンの仕事だから、
向こうはマウスの方が気楽で良いと思っているかもしれない。

ノ(- -;リそゞ(・・・・何かえらく蒸してきたなぁ)

湿気の所為か、じっとりと汗が滲んできた。

話相手も寝てしまったし、宿屋の言う通り時間まで休んでいようと、マウスはベッドに腰を下ろす。

その時ふと、サイドボードの上に乱雑に置かれた譜面が目に止まった。




ミセ*゚ー゚)リ


ノ(゚、゚リそ(・・・・がんばって良い曲作ってね、か)

一昨日の晩以来、手付かずの婚礼の曲。
別れ際のミセリの言葉に、なんだか責められているような気がした。

ノ(- -リそ(疲れたな・・・・)

ベッドに横たわると同時に、体が沈んでいくような感覚に襲われ、
瞬く間にマウスは深い眠りに落ちていった。













#7 おわり

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