長いの
#7‐1
潮風が深緑の長い髪を靡かせる。
バルコニーから見える海は、いつもと変わらず穏やかだった。
o川*゚ー゚)o「・・・・ありゃ、珍しい」
室内に一人控えていた親衛隊員のキューが、ひょっこり顔を出した。
川 ゚ -゚)「・・・・」
o川*゚ー゚)o「姫様が鼻歌なんて、ご機嫌ですねー?」
どうやら自分でも気付かないうちに、鼻歌を唄っていたようだ。
別に機嫌が良かったわけではないのだが。
o川*゚ー゚)o「それって接見の時に聞いた曲ですよねぇ?一昨日の」
川 ゚ -゚)「・・・・よく覚えているな」
o川*゚ー゚)o「だってあんな素敵な曲、一回聴いたら忘れられませんよぉ」
そう言って彼女も同じ曲を口ずさむ。
音程が外れていた。
川 ゚ -゚)(そういえばあの音楽家・・・・接見の後ここへ来たな)
ノ(゚―゚;リそ
つ(^ω^ )
彼は深夜の城内で、何かごそごそやっていたようだった。
この部屋でバッタリ出くわした時の、狼狽した顔が思い出される。
おそらくカタギの人間ではないのだろう。
o川*゚ー゚)o「・・・・てゆーか一昨日は全然興味なさそうにしてたのに、
姫様ってば意外とお気に入りだったんですね☆」
川 ゚ -゚)「・・・・」
o川*゚ー゚)o「今日初めて近くで見たんですけどねー、
マウス様って背は低いけど案外顔は良かったりするんですよw」
川 ゚ -゚)「・・・・?」
o川*゚ー゚)o「その上音楽スキルまで高いとかズルくないですかぁ?
絶対モテますよねアレ!私も結構タイプだったりして☆」
キューの話を聞いていて初めて気付いた。
川 ゚ -゚)「・・・・マウス、と言うのか彼は」
o川*゚ー゚)o「へっ?」
自分はあの音楽家の名前すら知らなかったという事に。
o川*゚ー゚)o「ちょwwwマウス様涙目wwwwww」
その時、部屋の外で訪いを入れる女官の声がした。
o川*゚ー゚)o「はいはいはい何かしら」
川 ゚ -゚)「キュー」
o川*゚ー゚)o「はい?」
訪いに応えて部屋に戻ろうとしたキューを呼び止める。
川 ゚ -゚)「トソンはどうした」
o川*゚ー゚)o「とそん・・・・」
川 ゚ -゚)「昨日から見ていない」
o川*゚ー゚)o「・・・・誰です?それ」
キューは首を傾げている。
川 ゚ -゚)「・・・・」
o川*゚ー゚)o「変な姫様ー・・・・今日は雨降ったりしてぇ」
なんてね、と舌を出してキューは笑った。
それもその筈、今日は雲ひとつ無い晴天である。
彼女が室内に戻った後、バルコニーに一人残されたクーが、
誰に聞かせるでもなくポツリと呟いた。
川 ゚ -゚)「そうだな、今日は雨だ」
#7 一つの予兆 〜ミセリのドキドキ☆観光案内〜
中央広場に面した商店街は、祝祭らしく盛況のようである。
見物客向けに露店もちらほら出ており、客を呼び込む声で賑やかだった。
ノ(゚ー゚リそ「イチゴ二つ下さい」
ピンクのチョコにカラースプレーが鮮やかなチョコバナナを手に、マウスはミセリの待つベンチへ戻った。
マウスにとっては朝食代わり、と言うより時間的に早めの昼食だろうか。
マウスからチョコバナナを受け取ったミセリは、無邪気に喜んでいた。
広場のモニュメントの正体は、ショボン卿の立像だった。
ミセリ達は今日から三日三晩、この中央広場で踊る事になっている。
踊りの儀式は祝祭の最終日・・・・婚礼当日の夜まで続き、最後に像の除幕を行うのだそうだ。
ところで卿は知っているだろうか。
生きている間に像が建つような奴に、ろくな人間は居ないと言われている事を。
ミセ*゚ー゚)リ「よーし、次いってみよー」
チョコバナナを食べおわったミセリが、元気良く立ち上がる。
ノ(゚ー゚リそ「ミセリちゃんミセリちゃん、口の周りがチョコだらけ」
ミセ;゚ー゚)リ「み、みたなぁ!」
( ^ω^)(何故ミルク味にしなかった)
ノ(゚ー゚#リそ(・・・・このエロ楽器)
広場から南、海を左手に見ながら道なりに歩いていくと、
程なくして小高い丘に小さな公園が見えてくる。
ミセリは小走りに公園へ駆け込むと、後をついてくるマウスに手を振った。
花壇とベンチと、ちょっとした遊具。
これといって特徴の無い公園だが、談笑する女の子達で賑わっている。
皆年の頃はミセリと同じか、少し上かといったところ。
振り返れば海と港、市街も殆ど見渡す事が出来た。
ミセ*゚ー゚)リ「こんなちっちゃくてなんにもない公園だけど、
ここは女の子に人気のある場所なんだよ!」
なんでだと思う?と、ミセリが勿体ぶるような態度を見せる。聞いてほしいのだろう。
ここはおとなしく彼女に乗っかる事にした。
ノ(゚、゚リそ「えー、なんだろう」
ミセ*゚ー゚)リ「それはね・・・・好きな人と二人っきりで来ると、
その人達は“そーしそーあい”になるから、なんだって!」
ノ(゚ー゚リそ「へぇー」
ミセ*- -)リ「えへへへへ・・・・音楽家さんと二人っきりで来ちゃった☆」
ノ(゚ー゚*リそ「あ、焼きトウモロコシ」
ミセ*゚―゚)リ
ノ(゚ー゚リそ「ん?どうしたの?」
( ^ω^)(こいつ・・・・)
一通りミセリの説明も終わり、そろそろ公園を出ようとした時、
ベンチでおしゃべりしていた女の子の一人が、こちらに駆け寄ってきた。
l从・∀・ノ!リ人「やっぱりミセリちゃんだったのじゃー!」
ミセ*゚ー゚)リ「あー!妹者ちゃん!」
年格好はミセリと同じくらい。くりっとした目の、元気の良い女の子だった。
どうやら彼女のお友達らしい。
Σl从・∀・ノ!リ人
ノ(゚ー゚リそ「こんにちはー」
l从・∀・ノ!リ人「知らないお兄ちゃんなのじゃ・・・・」
ミセ*゚ー゚)リ「うちに泊まってる音楽家さんなの」
l从・∀・ノ!リ人「さてはミセリちゃん・・・・デートなのじゃ!?」
ミセ*>ヮ<)リ「やだぁ!やっぱりそう見えちゃう?」
( ^ω^)(ねーよ)
ミセ*゚ー゚)リ「そういえば妹者ちゃん、今日はお兄さんのトコじゃないの?」
l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者も今日からお城なのじゃ!
それに最近お仕事が忙しくて、遊んでもらえないのじゃ・・・・」
ノ(゚ー゚リそ「・・・・」
l从・∀・ノ!リ人
ミセ*- -)リ
ノ(゚、゚リそ「・・・・」
l从>∀<ノ!リ人
ミセ*゚ヮ゚)リ
ノ(- -;リそ「・・・・」
( ^ω^)「女の子が二人揃えばお喋りに花が咲くのは当然の流れだろう。
とはいえまさか観光案内の最中に放置プレイに遭うなど、彼は思ってもいなかった」
ノ(゚、゚#リそ「うるへー」
ミセ*゚ー゚)リ「あの子は妹者ちゃんって言って、あたしとおんなじ儀式の踊り子なんだ」
公園を出てからミセリが教えてくれた。
儀式の踊り子は皆彼女と同い年で、仲の良い友達なのだそうだ。
今歩いているこの辺りはいわゆる『山の手』の住宅地だった。
島の富裕層が住んでいるだけあって、立派な家が立ち並んでいる。
中には小さいながら庭にプールのある家まであった。
ノ(゚、゚リそ(近くに海があるのになぁ)
金持ちの考える事はよくわからない。
住宅地に入ってから、ミセリは何度も住民から声をかけられていた。
その度に手を振り返したたり、世間話に付き合ったりと愛嬌たっぷりに応じる。
彼女は宿屋の可愛い看板娘として、島ではちょっとしたアイドルなのだ。
ミセ*゚ー゚)リ「こうやって愛想よくしてると、時々うちに泊まってくれるんだよ」
ノ(゚ー゚;リそ「しっかりしてるなぁ、さすが跡取り娘」
ミセ*゚ー゚)リ「はぁ・・・・宿屋の娘も悪くないけど、こんな家に住んでみるのもいいよねー」
石造りの白い邸宅を眺めながら、しみじみとミセリが言う。
どうやら玉の輿狙いのようだ。
この島は観光地の割に、これといった観光名所は無いようだ。
案内されるのは島の施設や店が大半だった。
ミセ*゚ー゚)リノ「はい、ここがヴィップの資料館」
ノ(゚ー゚リそ「うん」
ミセ*゚ー゚)リ「おわり。次!」
ノ(゚ー゚;リそ「って、ぇええええ!?中は!?」
ここに来ると“きょひはんのう”になるという事で、資料館は玄関先で済まされてしまった。
ミセリは街のもう一ヶ所、北側にある公園にもマウスを案内した。
さっきの公園と違って市街地の真ん中にあり、すぐ近くに城が見える。
周りに木が沢山植えられていて、比較的広い。
それによく整備されていた。
この公園の中でまず目につくのは、鳥の石像。
台座を入れても大人の背丈程の高さしか無い石像だが、
“鳥の集う公園”と呼ばれている事にちなんだ、この公園のシンボルである。
その鳥の像に対する、マウスの感想は、
ノ(゚、゚リそ(趣味を疑う)
だった。
ミセ*゚ー゚)リ「今はお祭りだからあんまり混んでないんだけど、
ふだんのお休みの日は人でいっぱいなんだよ」
ノ(゚、゚リそ「・・・・人気なんだ?」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、ひょっとしてフに落ちないカンジ?
実はあたしもね、ここはあんまり来ないんだ」
そう言ってミセリは鳥の像を指差した。
彼女もあの像が好きではないと言う。
ミセ*゚ー゚)リ「ほら、なんか人のことジッと見てるカンジでしょ」
ノ(゚ー゚リそ「しかもなんか偉そうだし?」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、それわかるw」
ノ(゚ー゚リそ「目がエロい人の目してるし?」
ミセ*゚ー゚)リ「きもいwwwジャガイモの芽いっぱい食べてwwwwww」
ノ(゚ー゚リそ「死ぬってwwww」
( ^ω^)(・・・・若者のノリはよくわからんお)
その後しばらくは二人で像の貶し合いだった。
主に目がきもいとか目がきもいとか。
二人の会話を聞いている筈も無いが、途中横目に見た鳥の像は、心なしか不機嫌そうだった。
公園を出た後、ミセリとマウスは近くの橋を渡って街の東側にやって来た。
ヴィップの街は真ん中を川が流れていて、それを挟んだ東西でガラリと雰囲気が変わる。
市街地のある西側に対し、東側は下町といった風情だ。良く言えば。
( ^ω^)(格差を感じるお)
切りたての木のいい匂いがする。
橋を渡ってすぐの場所が木材置場になっていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ここは街で使ってる家具とか、いろんな物を作ってるんだよ」
家具職人達の住む部落は川の辺、それも街で一番上流寄りの場所にある。
と言うのも街の真ん中を通るこの川の、更に上流へ行くと木こりの住む村があり、
そこからこの場所へ木を流してくるようになっているからだ。
ミセ*゚ー゚)リ「一回その木こりの村に行ってみたいんだけど、クsお父さんが許してくれないんだ」
( ^ω^)(お前今“クソオヤジ”って言い掛けただろ)
ノ(゚ー゚リそ「一人娘だし、心配なんだよ」
ミセ*゚ー゚)リ
ノ(゚ー゚リそ「・・・・?」
案内の途中からずっと、ミセリは何か言いたそうにしていた。
ここに来て意を決したのか、彼女はマウスの顔を覗き込み、少し遠慮がちに口を開く。
ミセ*゚ー゚)リ「あの・・・・マウス、さん」
ノ(゚ー゚リそ「はいはい」
ノ(゚ー゚リそ「ん?」
彼女の口からマウスの名前が呼ばれたのは、それが初めてだった。
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