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長いの
#6‐2

秘かに想いを寄せるショボン卿からその命令を聞かされた時、彼女はどんな気持ちだったろうか。
マウスは基本的にフェミニストだ、さぞかし憤っていることだろう。
事情を知らなかったとはいえ、彼女に無神経な事を言ってしまった自分に対しても、である。


・・・・もっともマウスの事だ。
食事の席での地雷発言が無くても、そんな色っぽい展開にはならなかったかもしれないが。

( ^ω^)「まぁまぁ、そう怒るなお」

周りに人が居ないのを確かめつつ、ブーンは相棒を宥めに掛かった。

( ^ω^)「貴族様なんてのは、総じてあんなもんだお。
       この商売長いんだから、お前もそろそろ慣れなきゃ駄目だお」

ノ(- -#リそ

両頬の肉を手で解しながら、マウスは一言「帰る」とだけ言った。
そういえば彼はこの一時間弱、終始作り笑顔を貼りつけたまま卿の話に付き合っていた。
さすがに顔が疲れたことだろう、とからかい半分構ってみたが、
相棒から返ってきたのは気の無い返事だった。




こうして当初の予定どおり、二人は宿に戻ってきた。

思えば丸一日ぶりである。

マウスが入ってくるや、フロントに居た主人がにやにやしながら寄ってきた。

( ゚д゚)ノ「やぁ!お帰りなさい!
     昨夜は部屋に居なかったようだけど、朝帰りとは隅に置けないね!」

ノ(゚ー゚リそ イラ

( ^ω^)(うぜぇ)

ノ(- -リそ「残念ながら、そういう色っぽい話じゃないんですよ」

( ゚д゚)「ありゃ、そうでしたか。それは失礼。
     でもあんまり迂闊な場所で野宿とかしない方が良いよ。
     こんな島でも善人ばかりじゃないからね」

ノ(゚ー゚リそ「・・・・泥棒が出るそうですね?」

( ゚д゚)「そう!昨日も街の外れで盗賊団が出たって話なのさ!」

北の森にねぐらを持つという盗賊団の話は、この島に来てから幾度かマウスの耳にも入っていた。
やはり同業者の考える事は同じらしく、祝祭が始まってからは特に頻繁に町に出没すると言う話だった。

ノ(゚ー゚リそ(北の森に居るってトコまでわかってるのに、
      どうして捕まらないんだか)

潜伏場所を街の人間にまで知られているとは、間抜けな話である。
その盗賊達の顔を見てやりたいものだ。


ミセ*゚ー゚)リ 〜♪

・・・・と、その時奧のスタッフルームから女の子が一人、鼻歌を唄いながら出てきた。
宿屋と話し込んで・・・・と言うか宿屋が一方的に喋りまくっているので、マウスはそれに気付かない。


ミセ*゚ー゚)リ ・・・・?

ミセ*゚ー゚)リ !







( ゚д゚)「本当に乱暴な奴らだから、お客さんも気を付けなよ」

ノ(゚ー゚リそ(つーか部屋に帰らせろ)

( ^ω^)(同感だ)





「あーーーーーーーっ!」


ノ(゚―゚;リそ「へぇっ!?」

フロントに突如響き渡った素っ頓狂な声。
マウスは驚き、宿屋共々声の方へ振り向いた。



ミセ*゚д゚)リ9m「・・・・」


そこにいたのは十歳そこそこの外見の女の子。
彼女は廊下の奥でこちらを指差して立っていた。
この宿屋の娘、ミセリである。

ミセ*゚ー゚)リ「やったぁ!音楽家さん発見!ギリギリ間に合ったぁっ!!」

σノ(゚ー゚;リそ「え、僕?」

面食らっているマウスの所に、ミセリが瞳を輝かせて駆け寄ってくる。
そしてマウスの腕を掴んで、嬉しそうにブンブンと振り回した。



ミセ*゚ー゚)リ「お願いします音楽家さん、
      今日はお父さんから仕事も言い付けられてないし、お昼からあたしに島の案内をさせて!」

唐突でいまいち話が見えてこないが、彼女がマウスを探していた事はわかった。
と言うか色々な前振りをすっ飛ばしている。
挨拶とか、自己紹介とか。

ノ(゚ー゚リそ「とりあえず落ちつk」

ミセ*゚ー゚)リ「あたし、婚礼の儀式の踊り子に選ばれているんです。
      この島では選ばれた踊り子は三日三晩踊り続けなきゃいけない習わしなんですっ!」

( ^ω^)(聞いてねぇお)

ノ(゚―゚;リそ「そ、それは大変だ!」

( ^ω^)(え、しかもノリノリなん?)

ミセ*- -)リ「あまりの厳しさに死んじゃった人もいたんだって・・・・
      もしかしたらあたし、今日が最後の自由な日かもしれないんですぅ・・・・!」

ノ(゚ー゚リそ「・・・・」

深刻な表情で訴えかけるミセリ。
その様子にマウスは思わず口元を綻ばせた。

( ゚д゚)「バカぬかすな、そりゃ何百年も前の話だ。
    今は五人交替で踊るんだから死にやせんわ!」

ミセ*゚д゚)リ

ノ(゚ー゚リそ(やっぱり)

( ^ω^)(ですよねー)


( ゚д゚)「おまけに人の事を鬼みたいに言いおって!」

ミセ;゚―゚)リ「ちょ、折角巧くいってたのに!!」

( ^ω^)(いや、始めからわかってましたけどね)

ノ(゚ー゚リそ(可愛いなぁw)

ミセリの「このクソオヤジ!」の一言を合図に始まった父娘喧嘩。
それはしまいにミセリが宿屋を蹴倒して、マウントポジションを取るまでにエスカレートした。

父親の顔面をぽこぽこと殴りながら出てくる言葉は、放送コードギリギリの罵詈雑言ばかりで、
とても小さな女の子の語彙とは思えなかった。

堪えきれなくなったマウスが吹き出すまで、ミセリの攻撃ターンは続く。
慌てて宿屋の上から退いた時、既に彼のライフは0だった。


ミセ;゚ー゚)リ「えっ・・・・と、で、でも大変は大変なんです!
      だから音楽家さんと仲良くできるのは今日の昼間だけなの」

気を取り直して、ミセリは再び可愛らしくマウスに詰め寄った。

ミセ*゚ー゚)リ「ね、ね、お願い!あたしのためにちょっとだけ時間を下さい!」

ノ(゚ー゚リそ「・・・・」

船上で夜を明かし、朝っぱらに卿の長話に付き合わされて疲れていたマウスだったが、
女の子からこんなふうにお願いされては無下に出来ない。

ノ(゚ー゚リそ「えーっと、ミセリちゃん?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい!・・・・ってなんであたしの名前」

ノ(゚ー゚リそ「顔に書いてある」

ミセ*゚ー゚)リ

( ^ω^)(ちょwww)

ノ(^ー^*リそ「案内、お願いしても良いかな」


ミセ*゚ヮ゚)リ

ミセ*>ヮ<)リ「やったぁ!ありがとう音楽家さん!!」

ミセリが大喜びで飛び跳ねる。
その無邪気な姿に、なんだか心が洗われるような気がした。


ノ(゚ー゚リそ「・・・・その前にちょっと、お風呂入って良いですか」

心が洗われたついでに、髪も洗っておきたかった。





一時間後。


半乾きの髪を指で掻きながら、マウスは宿から出てきた。
この短時間である。完全に乾かすのは諦めた。

ノ(゚ー゚リそ 〜♪

鼻歌を唄ったりと、マウスはいつになく機嫌が良い。
そこでブーンの中に一つの疑問が生まれた。

( ^ω^)(こいつ幼女趣味だっけ?)

ノ(゚ー゚リそ「・・・・何か言いたそうだね」

( ^ω^)「や、随分楽しそうだと思って」

ノ(゚ー゚リそ「そうかしら」

( ^ω^)「うん、正直ひくわ」

流石にブーンが何を言いたいのか解ったらしい。
む、と眉間に皺を寄せて、マウスはブーンを裏拳で殴打した。

( ^ω^)(ま、色々あったし、気分転換も必要だお)

誰にも気を許すなとブーンは言ったが、子供のミセリが相手なら警戒する必要も無いだろう。
息が抜けて丁度良いかもしれない。

何せ島に来てからマウスの様子がおかしいのだ。
本人は普段どおりに振る舞っているつもりなのだろうが、こちとら長い付き合いだった。
あまり良い事を考えていない時は、空気でわかる。

( ^ω^)(・・・・こういう時はろくな目に遭った例しがねぇ)

ツンに度々噛み付かれ、城では怪物に襲われ、逃亡にも失敗・・・・と、
すでに色々とろくでもない目に遭っている。
これ以上何事も起こらなければ良いが、とブーンは思った。




宿を出てからマウスは、まっすぐ城へと向かった。

ミセリには先に城の前で待っている、と言われている。
一緒に出れば良いと思ったが、彼女はどうやら「待ち合わせ」をご所望らしい。
わりとませた娘のようだった。



ミセ*゚ー゚)リ


階段を昇ると、こちらに背を向ける形でミセリが立っているのが見えた。
あえてマウスには気付かない振りをしているようだ。
一応そっと近付き、彼女が期待しているだろうベタな台詞で声を掛ける。

ノ(゚ー゚リそ「ごめん、待った?」

ミセ*゚ー゚)リ「ううん、あたしも今来たトコ!」

そんなワケあるか。

そう思ったが、振り向いたミセリの可愛い笑顔を前にして、
突っ込みの言葉はどこかへ行ってしまった。


( ^ω^)(恐ろしい子・・・・ッ!)

・・・・案内マウスとは似た者同士なのかもしれない。


ミセ*゚ー゚)リ「では!まずはお城のご案内をします!」

そう言ってミセリは城門前に進み出た。

ミセ*゚ー゚)リ「・・・・と言ってもあたしは中に入れないけど。
      音楽家さんはもう来たことあるよね」

ミセリが城の東西に立つ塔を順に指差しながら説明を始める。

ミセ*゚ー゚)リ「向かって左側の塔にクー様、右側の塔にショボン様が住んでるんだよ」

ノ(゚ー゚リそ「あー、あっちは卿の部屋なんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「ん?」

ノ(゚ー゚リそ「え?」

ミセ*゚ー゚)リ「こっちがクー様のお部屋だって事は知ってるんだね」

ノ(゚ー゚リそ「あー、うん、まぁ」

夜中に忍び込んだからね、とは流石に言えない。

ミセ*゚ー゚)リ「お城の裏には神殿があって、結婚式はそこでやるの。
      きっとスゴいんだろうなぁ!」

ノ(゚ー゚リそ「結婚式には街の人達も来るんだね」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、それどころか島中の人が来るんだよ!」

ヴィップの人口は400人程と言っただろうか。
小さい島ながら、なかなか盛大な結婚式になるようだ。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ次は街を案内するからついてきてね!」

ノ(゚ー゚リそ「はーい」

ミセリが先に立って階段を駆け降りた。
マウスはその後を、歩いて追い掛ける。

ノ(゚ー゚リそ「・・・・ここは海がよく見えるなぁ」

ヴィップの城は山の裾、小高い場所に建てられている。
正面には市街の中央広場、海との間に障害物は無かった。
中央広場のそのまた中央にそびえ立つ、白い布を被った大きなモニュメント。
それ一つ除いては。

ノ(゚ー゚リそ(そう言えばアレって何なんだろう)

島に来た時から気になっていたので、この際ミセリに聞いてみようと思った。


ミセ*゚ー゚)リノシ「音楽家さん早く早くー!」

広場では一足早く降りたミセリが、こちらに向かって手を振っている。
軽く手を振り返して、マウスは一気に階段を駆け降りた。











#6 おわり

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