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長いの
#3‐2
ツンの言う「もう少し北寄りの場所」へ行くには、来た道を戻る必要があった。
東側のこの海岸は川によって分断されている為、森を抜けて橋を渡らなければいけないのだ。

橋を渡ると北に切り立った崖があり、その下にあるのが、

ノ(゚ー゚リそ「あれ農園ですよね」

バーボン農園である。

ξ゚听)ξ「ええ、この島で手に入る農産物は、殆どがあのバーボン農園で作られています」

ノ(゚ー゚リそ「へー」

ヴィップは他国との貿易を殆ど行わない国だった。

というのも、常夏のヴィップでは農産物の栽培が盛んで、
食料自給率がほぼ100パーセントなのである。

その他にも小さい島ながら資源が豊富だとか…今まで他国の侵略を受けていないのが不思議な程だ。


 (´・ω・`)←


その辺はあの敏腕領主の采配の妙なのかもしれない。


ξ゚听)ξ「…ところでマウス様、『それ』離しませんか」

ツンはそう言って、マウスが右手に下げている物に目をやった。

花である。
ただし開いた直径が30センチ近くあり、太い中膨らみの茎がちょっと異様だ。

ノ(゚ー゚リそ「えぇー、面白いのに」

ヴィップ島ではよく見かける珍種『歩く花』。
この種類は二つに裂けた茎で、器用に二足(?)歩行するのが特徴だ。

茂みに潜んでいるのを見つけたのだが、目(?)が合った途端に逃げようとしたので、
マウスは思わず捕獲したのであった。

ノ(゚、゚リそ「まぁ、でも、なんか弱ってるしな」

捕まえた当初は葉をばたつかせて暴れていたのだが、今は心なしかぐったりしているように見える。
離してやると尾の様に伸びた根を引き摺りながら、覚束ない足取り(?)で森へ帰っていった。

( ^ω^)(達者で暮らせお)

森を抜ける間に、さっきの『歩く花』を含めて何度かモンスターとも遭遇している。
だがマウスは海岸のときのような剣技を見せることは無く、ここまでおとなしくツンの護衛を受けていた。

ξ゚听)ξ「マウス様、モンスターですっ」

ノ(゚ー゚リそ「ツンさんガンバッテー」

ただ、たまには自分に危険が及びそうになる事もあるので、

ノ(゚、゚リそ「えいっ」

( ^ω^)(イテッ)

そういう場合はブーンの胴で打ったりして応戦していた。

ξ;゚听)ξ「そんな乱暴に扱っていいものなんですか」

ノ(゚ー゚リそ「こいつ頑丈だから、平気です」

( ^ω^)(この野郎)

ノ(゚ー゚リそ(彼女が居なくなるまで我慢してくれる)

海岸の戦闘では、ついカッとなってモンスターを殺ってしまったマウスだったが、
もしあれでツンに余計な警戒心を持たせてしまったとすると、この先少し面倒だ。
主に裏的な意味で仕事がやりづらくなる。

ノ(ー ー;リそ(はぁ、迂闊だったなぁ)

( ^ω^)(この際ギャップ萌えとか狙うといいお)

ノ(゚、゚#リそ

ξ゚听)ξ「??」

そうこうしている内に、潮の香がしてきた。

バーボン農園を過ぎれば、海岸まではもう近い。
マウスはツンがさっきからしきりに時計を気にしている事に気付いた。

ノ(゚、゚リそ「…もしかして、壊れました?」

ξ゚听)ξ「あ、えぇ、さっきまでは合ってた筈なんですけど」

ノ(゚ー゚リそ「あと5分弱ですよ。走ります?」

昨日の今日で狂ってしまったツンの時計とは対照的に、マウスの時計は相変わらず正確に時間を刻んでいる。
ツンにはそれが不思議なようで、まじまじとマウスの時計を眺めていた。





海岸にはもう人が集まっていた。

石柱に囲まれた小さな遺跡があり、その周りで親衛隊の女性達が隊列を組んでいる。


(´・ω・`)

川 ゚ -゚)


(‘_L’)

親衛隊に守られ、ショボン卿と王女が遺跡に姿を現した。
少し離れた場所で、昨日の接見に立ち合った男が控えている。

ノ(゚ー゚*リそ

( ^ω^)(お前今、思いがけずお姫様に会えてラッキー、とか思ったお?)

ノ( 、 ;リそ

( ^ω^)(わかりやすい奴)

ξ゚听)ξ


海に面して立つこの遺跡のことを、そのまま『海の遺跡』と呼ぶらしい。
中央に石の台座と、正面奥には人の背丈程の古い石碑。
石碑にはこの島で服の装飾にも使われている、何かの植物の形を模した紋様が彫られている。

ノ(゚、゚リそ(海から宝石を引き上げる儀式だって聞いてるけど…)

大掛りな仕掛がありそうなものだが、見たところ至って簡素な遺跡だった。

王女が台座の前に立ち、すぐ後ろにショボン卿。
そしてそれらを面を被った半裸の男達が、ぐるりと囲む。
彼らは全身の皮膚に化粧を施しており、皆一様に不気味な程細い手足をしていた。

( ^ω^)(きもーい)

ショボン卿は親衛隊の他に、十数人の楽団を伴っていた。
彼が両手を空に掲げると、それを合図に演奏が始まる。
怪しげな民族音楽に合わせて、王女を取り囲む仮面の一団が、これまた怪しい動きで舞っていた。

ノ(ー ーリそ(あれ、なんだかこの音楽…?)

懐かしい。
一瞬そんな感覚が、胸を掠める。

( ^ω^)(どうしたお、マウス)

ノ(ー ーリそ

( ^ω^)(お?)

ノ(゚、゚リそ(うーん…知らない曲、だな。曲自体は)

そう結論づけたものの、どうにもマウスは引っ掛かりが取れなかった。



音楽は次第にテンポを早めていく。
仮面の集団のうねるような舞が、辺りに異様な熱気を作り出していた。


\(´・ω・`)/

川 ゚ -゚)


儀式の中心で両手を掲げるショボン卿、台座の前に立つ王女。
王女の表情は相変わらず冷たく、虚ろな目をしている。

石碑に彫られた紋様が光を放つ。
それと同時に何も無い台座の上で、『何か』が強く輝きはじめた。

王女の足元がふらつく。

光は次第に強くなり、やがてマウスは目を開けていられなくなった。

( ^ω^)(うおっ、まぶし)


音楽が止んだ。

どさり、と人が倒れる音。
目を開けると先程までの強い光はすっかり収まり、海岸は静けさを取り戻している。

ノ(゚、゚リそ(…あ!)

台座の前で王女が倒れていた。
それを避けるようにして、ショボンが台座に近づいた。

( ^ω^)(でっけー)

何も無かった台座の上に、人の顔程はあろうという宝石が姿を現していた。
ショボンがそれを太陽に向かって掲げる。
太陽の光を受けて煌めく碧い宝石は、まるで海のようだ。

ノ(゚ー゚*リそ(これはなかなか)

( ^ω^)(マウスたん、食指が動いたんじゃないかお?)

ノ(゚ー゚*リそ(まぁ、ね)

王女が緩慢な所作で体を起こした。
親衛隊の一人が駆け寄り、服や肌に付いた砂を払っている。

儀式を終えた一団は、宝石を守りながら遺跡を後にした。



ξ*゚听)ξ「綺麗でしたね…」

ノ(゚ー゚*リそ「うん、そうですね」

ξ*゚听)ξ「私、生まれて初めて見ました」

二人で惚けていると…正確にはマウスは宝石の値踏みみをしていたわけだが、
とにかく浜辺でつっ立っている二人のもとへ、誰かが近寄ってきた。

(‘_L’)

ノ(゚ー゚リそ「あ、昨日の…」

ξ゚听)ξ

ツンが素早く姿勢を正す。

(‘_L’)「おはようございます、マウスどの」

ちょっとよろしいかな、と男はマウスの肩に手を掛け、顔を寄せる。
その表情は先程と打って変わり、非常に深刻なものだった。

(‘_L’)(…実は折り入ってお話がありましてな)

ノ(゚、゚リそ

( ^ω^)

ツンに聞こえないような小声で、彼は言った。

(‘_L’)(午後になったら城をお訪ね願いたい)

それだけ言うと男はまた表情を緩め、

(‘_L’)「それでは、お頼みしますぞ!」

殊更明るい調子でマウスの肩を叩いて離れ、儀式の一団の後を追って合流した。


ξ゚听)ξ

ノ(゚ー゚;リそ

ツンが睨んでいる。

男の姿が見えなくなるや否や、ツンはマウスに詰め寄ってきた。

ξ゚听)ξ「…将軍と、何のお話をされていたんですか」

ノ(゚、゚リそ「将軍、なんですか?あの人」

ξ゚听)ξ「ええ、あの人はフィレンクト将軍といって、この島の兵士達を束ねられている方です」

ツンが恐かったので、うまく話を逸らせないかと思ったのだが、

ξ゚听)ξ「で、何のお話を?」

どうやら彼女は一度食い付いたら離してはくれないようだ。

フィレンクト将軍のあの様子から察するに、内密の話なのだろう。
多分、ツンにも。

だから将軍が、午後から城の見物の案内をしてくれるとか、適当な嘘を吐いて誤魔化したところ、

ξ#゚听)ξ

ノ(゚ー゚;リそ

ξ#゚听)ξ「そんな事なら私にお申し付け下さい!
      私…それが仕事なんですから!!」

( ^ω^)(マウスたん、本日三度目ー)

見事に地雷を踏んでいた。

ぷりぷりと肩を怒らせて去っていくツン。
その背中を見送りながら、マウスはやれやれと肩を竦めた。

( ^ω^)「また彼女のご機嫌を損ねたおね」

ノ(ー ー;リそ「何か相性悪いみたいね」

機嫌を損ねた…と言うよりも、彼女は昨日から段々機嫌が悪くなっている感じだった。
残りの日程もこの調子で過ごす事になるのだろうか。
表と裏、両方の仕事を円滑に進める為にも、それだけは避けたいところだ。


ノ(゚ー゚リそ「とりあえず午後まで予定無いし、宿に戻ろうか」

( ^ω^)

ノ(゚、゚リそ「何、ブーン」

( ^ω^)「マウス、午後から城に行くつもりだお?」

ブーンがいつになく神妙な声で言った。

( ^ω^)「これは僕の勘なんだけど…どうも城には行かないほうがいいような気がするお」

ノ(゚、゚リそ

( ^ω^)「…将軍のあの顔、見たお?かなり切羽詰まった感じだったお」

昨夜の王女といい今朝の将軍といい、何か厄介ごとに巻き込まれそうな気配をひしひしと感じる。
それはマウスにもわかっている筈だった。

( ^ω^)「どうもこの件、深入りしたらマズイ気がするお」

ノ(゚、゚リそ「でも、なぁ…」

やはり予想どおりのマウスの反応に、ブーンはため息を吐く。

( ^ω^)「やれやれ、相変わらずお前も困ったちゃんだおね」

やたらと厄介ごとに首を突っ込む癖のある相棒に、ブーンはいつも手を焼いている。
泥棒を本業とする割に、マウスは根がお人好しなのだ。
深刻な様子で相談を持ちかけてきた将軍を、放っておく事が出来ないのだろう。

( ^ω^)「おkおk、でも話を聞くだけだお?それ以上関わっちゃ駄目だお」

ノ(゚ー゚リそ「はいはい、わかってんよ」

ブーンの勘は多分正しい。

口にこそ出さないが、マウスもまた妙な胸騒ぎを覚えていた。








午後。



ξ゚听)ξ


ノ(゚ー゚;リそ

( ^ω^)



将軍を訪ねて城へ行くと、正門前でツンが待ち構えていた。


ノ(゚ー゚;リそ(しかもメッチャ機嫌悪そう―――!)







#3 終わり




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