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悪戯(藤)
悪戯 (アシタバ視点の藤と彼女)
机の上に置いたカバンを枕にしてグースカ眠ってる藤くんに、加藤さんがニヤニヤしながら何か悪戯をしていた。
次の授業は音楽だから音楽室へ行かなきゃならないのに、藤くん起こさなくていいのかな…。

「できた!」

みてみて〜、と嬉しそうに指差すそこには、前髪をぴょこんと結われた藤くんが、自分が何をされたか全く気付かないまま気持ちよさ気に眠っていた。

「なかなかやるな、加藤!」

親指を立てて美作くんが加藤さんを褒めた後「間抜けな寝顔を撮影してやるぜ」と携帯を取り出し良さげなアングルを探し出す。

「私も入れて!ツーショットなんて藤くん絶対撮ってくんないもん」
「じゃあちょっと屈め、顔寄せろ」
「ラジャー!」

パシャパシャと撮影会が始まってしまった。
…藤くんに悪戯している時の加藤さんは本当に楽しそうだなあ。

「アシタバくんも一緒に入らない?」
「僕は遠慮するよ…そろそろ音楽室行かなきゃ」
「そんなこと言わないでおいでよー」

加藤さんが僕の方に手を伸ばした瞬間、藤くんの手が加藤さんの手を握った。

「おいでってなんだよ…アシタバとどっか行くのか?」
「へ?いや、あの、」

拗ねたような顔で、加藤さんの手を握ったまま藤くんは「茶子、俺以外の男に触ろうとすんな」なんて言い放つ。
シュシュに束ねられた髪の毛にまだ気付いていないようだ。

「次音楽だからはやく行こって、ねっアシタバくん美作くん」

大笑いしたいのをぐっと堪えながら加藤さんは言う。
自分に対する独占欲を見せてくれたことへの嬉しさと、悪戯に全く気付かないその愉快さに、ドキドキワクワクしているようだ。

「おう、はやくいかねーと遅刻しちまう。俺達先に行ってっから」

美作くんがむんずと僕の腕を掴む。
気付けば教室にはもう僕達しか残っていなかったようだ。

「音楽か…ダリーからサボる」
「だーめ」

加藤さんと藤くんの会話を聞きながら、美作くんの後をついて教室を出る。
藤くんにした悪戯、どうするんだろう。
起きてしまった後ではシュシュを取る時バレてしまうだろうし、そのままでも気付くのは時間の問題だ。

…あ、筆箱を持ってくるのを忘れてた。
教室に戻ろうと踵を返すと、開けっぱなしの教室のドアから二人が見えた。
何か喋ってる。藤くんは頭を結われたままだ。まだ気がついていないらしい。
まるで映画でも見てるように絵になる二人だ。
藤くんの加藤さんを見る目は他の誰とも違ってて、加藤さんに心底恋してるんだなって丸わかりで見てるこっちが照れてしまう。

入るに入れないなあと思っていると、加藤さんがにこりと綺麗に微笑んで、ゆっくりした動作で藤くんの額にキスをした。
それと同時に素早い手つきで藤くんの前髪を結っていたシュシュをサッと抜き取る。

…なんて神業だ!

何かしたかと藤くんが口を開くより先に、今度は唇にキスする。
藤くんの髪の毛を愛しげに撫ぜ、結ったことで少し跡のついていた髪をさり気なく整えた。
証拠を隠滅し終えた加藤さんは、しれっとした顔で「さっ、音楽室行くよー」なんて言って明るく笑い、僕を見て得意げにピースした。
僕が居るのわかってた上での行動だったんだ…ね…。

加藤さんて凄い。
色々と凄い。

僕は今見てしまった一連の場面に感服するやら恥ずかしいやらで、筆箱を取るのも忘れて音楽室へ一目散に走っていった。






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