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どれを読んでも笹塚さん
わかっているけれど
「胃がムカムカするー」
「そりゃ夜中にカツ丼食ってりゃな」

笹塚が新聞を取るために立ち上がると、今で笹塚が座っていたソファを占領するように、名前は悪戯っぽい笑顔を浮かべごろりと横になった。

「ねむいー」
「ベッドまで運んでやろーか?」
「いい。衛士の傍にいたい。ここで寝る」

そう言って目を閉じた名前に座る場所を奪われてしまった笹塚は、仕方ないなとソファの下へクッションを敷きそこへ腰を降ろした。

真夜中まで仕事をしていた笹塚を待ち寝不足になり、夕食を食べていなかった笹塚に付き合って、夕飯も食べたのにもかかわらず一緒にカツ丼を食べた名前。
せっかくの笹塚の休日だというのに、寝不足と胃もたれにより身体が重くなってしまったようだ。
そんな名前をバカだなと思うが、同じくらい可愛いとも思う。

すうすうと、目を閉じて数秒ですんなりと寝息が上がる。
笹塚は新聞をばさりと横へ置くと、座ったままソファの方へ身体の向きを変え気持ち良さそうに眠る名前の顔を見つめ、目を細めた。
見てるだけでは物足りず、今度は頬に指を滑らせてみる。
くすぐったいのか楽しい夢をみているのか、むにーっと名前が眠ったまま子供のように笑う。
笹塚はちらりと名前の身体の方へと視線を移動させた。
穏やかに上下する胸。
頬に滑らせていた指を、ゆっくりと薄い布地へと落とす。
ここ最近急にあたたかくなり、名前は軽やかなワンピースを身に着けていた。
指先に触れる感触は滑らかで、この薄い生地のすぐ下に綺麗な肌が隠されている。

胃がムカムカして、ねむい。

その原因はカツ丼に寝不足という、明白な理由があるとわかっている。
わかっているというのに。

「…つわり、なんて…ねーよな、やっぱ」

ポツリとそう呟き、笹塚は指先だけでなく手のひらで名前の腹部に触れる。
結婚して一年も経っていない。避妊しなくなったのだって最近だ。
焦っているわけではないけれど、些細なものに反応してしまってる自分が居る。
手を離し、ガリガリと頭をかいた。
少し落ち着こうと、テーブルの上の煙草へと手を伸ばす。
いつものようにライターの火をつけ、口に銜えた煙草へ近付けようとしたするが、少し考えたところでライターの火を止めた。

「もしかしてってこともあるかもしんねーしな…」

ベランダで吸うか、と煙草をポケットへ入れる。
そして先に名前に毛布でもかけてやろうとゆらりと立ち上がる笹塚だった。




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あきゅろす。
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