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どれを読んでも笹塚さん
眼鏡と彼女とコーヒーと俺
初動捜査も一通り終わり、一服しようと現場から少し離れた。
人通りのない雑居ビルの隙間で壁に背を預け煙草を口に銜える。
ポケットに入れたライターを探していると、後ろから「コーヒーどうぞ」と声を掛けられた。
振り向くと、端正な顔立ちによく似合う眼鏡をかけた同僚の苗字が両手にコーヒーを持ってにっこり笑っている。
初動捜査の時には居なかったが、どうやら彼女の方のチームも捜査に加わることになったらしい。
すぐそこの自販機で買ったのだろう。両方の紙コップからは寒空の下まだ湯気を立てていた。
差し出された方はブラックで彼女の方はカフェオレに違いない。甘党なのだ、苗字は。
苗字は綺麗な長い髪をひとつに結わえて横に垂らしていた。
俺のベッドのシーツの上でこの髪を艶かしく乱したのは先月だったか先々月だったか。

「眼鏡か…珍しいな」
「コンタクト買いに行く暇が無くて」

そう言って苗字が照れくさそうに笑う。

「それ外すとどーなんの?」

煙草を口から外したはずみで馬鹿げたことを聞いてしまった。
苗字がきょとんとした表情の後、ふわっと顔を綻ばせる。

「どうなるって。ふふ、視界がぼやける、かな」
「…ふーん」

両手に紙コップを持ったままクスクス笑う苗字。
俺との会話なんかでこんなに楽しそうにしてくれるのは苗字くらいだ。
紙コップを受け取るつもりだったというのに、俺の手は勝手に苗字の眼鏡に伸びていた。
両手が使えない苗字は俺の行動に目を見開いて驚きつつ、ただじっとしている。

「眼鏡も似合うな」
「そうかな?ありがとう。ほんとはこっちの方が楽なんだ。消毒しなくてもいいし」
「へぇ…消毒ね、コンタクトって面倒なんだな」
「使い捨てだったらそんな手間かからないんだよ」

苗字からそっと眼鏡を外すと、急に視界がぼやけた為か焦点をあわそうと目をパチパチ瞬かせた。
じっと俺を見上げ、不思議そうな顔をしてる。
実年齢より幼く見えるのは、濁りの無い透明な瞳をしているからだろうか。
普段は石垣をバシッと叱りつけ仕事をキビキビこなす苗字だが、俺の前では柔らかな部分を見せる。
ふとした瞬間の微笑みだとか拗ねた時の子供じみた八つ当たりだとか一緒に居る時に見せる素の表情だとか。
くるくる変わる表情豊かな苗字からはいつも目が離せない。
俺は苗字の全てにどうしようもなく惹かれていた。

「どうしたの?」
「なんとなく、当たりそうだなと思ったから」

何に、と苗字が言う前にその唇を塞いだ。
乾燥しきった寒空の下にずっと居た俺のがさついた唇で瑞々しい苗字の唇を味わう。
久しぶりの感触に軽く重ねるだけじゃ足りそうになかった。

「今日俺の家こねーか?消毒しなくていーんだろ、眼鏡だし」
「行く!コンタクトしてたとしても行きたい」

思わず抱きしめたくなって背中を引き寄せようとすると「待って!」と静止の声が上がる。
なんで、と問えば「コーヒーこぼれちゃう」ともう冷めてしまったコーヒーをずいと目の前に差し出してきた。

「あー…忘れてた」
「せっかく買ってきたのに」
「わりー。もらう」

コーヒーを受け取る前に眼鏡を返さなければ。
外した時とおなじぐらいそっと眼鏡をかけてやる。
その時、口付けする時の様に恥らいつつ瞼を閉じた苗字の色気に思わず喉が鳴った。

苗字の手からブラックの入った紙コップを受け取ると、何故かカフェオレの入った方も差し出してくる。
反射的にそれを受け取ると、苗字はにんまり笑って背伸びして俺に唇を重ねてきた。





警察の捜査の仕方とかまったくの想像でめちゃくちゃ適当に書いてます。
あとタイトルも適当この上ない。


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