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どれを読んでも笹塚さん
お土産

買ってきたばかりの煙草を吸うためにスーツ懐を探っていた笹塚が、あることに気付いて手を引き抜いた。
その手に持つのは煙草の箱ではなくもっと小さなもので、灰皿をテーブルに置いた恋人の名前が「それ何?」と笑う。
コンビニで数十円で売っているキューブ型の一口チョコだった。
レジの横で売っていたそれは『女性に大人気』とポップに書かれていて、もしかしたら恋人が珍しがるかもしれないと、何気なく煙草と共に購入したのだ。

「食う?」

微かに唇を緩め、笹塚は名前の手のひらにそれを落とした。
それを見て、「この味大好き。ありがと」と名前が意外なほど喜んでくれたので笹塚は黙って目を僅かに見開く。

「好きなんだな」
「うん、たまに買うよ」

ソファに座る笹塚の横に弾むように腰掛けて、名前が細い指でチョコの包み紙をはがす。
綺麗に口紅の塗られた唇が開き、チョコはぽんと口の中へ放り込まれた。
どこそこの高級ブランドのチョコレートしか口にしないという印象の名前だが、実際は違う。
安いチョコを幸せそうに口の中で溶かしている表情は笹塚にだけ見せる無邪気で、可愛らしい表情だ。

「何?」
「いや……よっぽど美味いんだな、それ」

笹塚の言葉に艶やかに笑うと、名前は軽く笹塚の唇に自分の唇を重ねてきた。
ちろりとからかうように笹塚の口内に入り込んでくる舌は、今しがた食べたチョコの味がする。

「美味しいもの」
「そーだな」

さり気なく笹塚の脚に触れてきた名前の腕を離れないようしっかり掴むと、
今度は自分から甘さを求め名前の口に舌を差し込んだ。


それから時々笹塚は、そのチョコを数個ポケットに忍ばせて恋人の家に行くようになったらしい。



元拍手お礼でした。ちょっぴり加筆修正。


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