[携帯モード] [URL送信]

どれを読んでも笹塚さん
もしも笹塚さんが吸血鬼だったら・2



目の前の吸血鬼は私にとんでもないことをしてくれたらしい。



「ちょっと、ちょっと待ってって、ささづか、さんっ……!」
「衛士でいーよ。苗字より呼びやすいだろ」
「いやいきなりそんなこと言われましてもね」

私の唇は笹塚さんの唇で再び塞がれて、また言葉が出せなくなってしまった。
とろとろにとろけそうになるくらい情熱的な口付け。
けれど、それ以上に私の首筋のさっき噛まれた部分がとても熱くて、じわじわと艶かしい何かが広がっているような気がする。
私は何とか口付けの合間を縫って伝えたい言葉を搾り出した。

「さっき笹塚さんに噛まれたとこが変」

顔と顔との距離はわずか数センチ。
いつもの生気の無い笹塚さんの瞳が、今は違って見える。
目を少しだけ大きく見開いてじいっと私を見つめてくる笹塚さんを軽く睨んだ。そうでもしてないと、その首に抱きついて、私から唇をねだってしまいそうで。

「変て……本当に?」
「嘘吐いてどうするんですか。むずむずして、身体が熱くて。さっき血を吸った時、私になにかしたんですか」

自分の身体がおかしくて泣きたくなる気持ちの私とは対照的に、笹塚さんは何とも嬉しそうに「へえ」と笑った。
そしてとんでもないことを口にする。

「俺の唾液は媚薬になる場合があってさ」
「ちょっと! それ知っててキスしてきたんですか!?」
「いや、キスだけじゃ効かねーよ」
「効いてるじゃないですか思いっきり!」

こうして会話している間に段々と吐息が荒くなり、目の前の笹塚さんが欲しくて欲しくて身体が疼いてくる。
なんてことしてくれたのと涙目で笹塚さんを見上げると、今度は優しく唇が重ねられた。

「自分に惚れてくれてる相手の、血の流れる部分に入れないと効かねーんだ」

その言葉にハッとして、笹塚さんに噛まれた首筋に手を当てる。
そういえば、ハンカチを奪われた時に舌で傷跡をなぞられた…………。

その言葉が本当だとしたら、私は笹塚さんのことが好きだったらしい。
笹塚さんに舐められて身体に入った媚薬は、今まで気付いていなかった自分の気持ちを強引に表に引き出し、しかも欲望を抑えることもできずプライドをズタズタにした。
唇をかみながら思いっきり笹塚さんを睨む。

「責任とってくださいよ!!」
「喜んで。……あー、じゃ場所変えるか。ここじゃなんだし。ホテル? 俺ん家でもいーけど」
「どこでもいいから連れてって!」
「了解」

今まで見たこともないくらい上機嫌に笑う笹塚さんが、おもむろに私の肩を抱いた。
私はもう媚薬とやらのおかげで苦しいやら悔しいやら悶えるやらで、笹塚さんの腰に回した手に力を入れてやる。

さっさと笹塚さんの車の助手席に乗り込んだ私に、笹塚さんが車のエンジンをかけながらぼそりと言った。

「あ、誤解しないで欲しいんだけど、苗字さんの身体だけが目的じゃねーから」
「この身体が普通に戻った時に改めて言ってくれたら信じてあげなくもない」
「苗字さんてさ」
「何!?」
「かわいい」

真っ直ぐに見つめて笑うものだから、私は真っ赤になった顔を思いっきり顔をそむけた。





[*前へ][次へ#]

22/26ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!