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どれを読んでも笹塚さん
もしも笹塚さんが吸血鬼だったら



魔人が居るなら吸血鬼が居てもおかしくない。



「い、痛かった……」
「謝って済む話じゃねーけど……マジで悪かった」

事務所に顔を出した笹塚さんは、貧血か徹夜続きで参っていたのか、顔色が青いを通り越して真っ白に近かった。
ひょんなことから脳噛さんの正体を知ってしまい、いつの間にか桂木弥子魔界探偵事務所の雑用係になっていた私は、
留守番を任されていただけで何もやることが無く、笹塚さんの訪問をいつも楽しみにしていただけに、とても心配で心配で、
とりあえずソファに横になってくださいと笹塚さんの身体に毛布をかけようとした時のことだった。

金色に光ったのだ。笹塚さんの瞳が。
え、と思ったその瞬間、腕を引かれ笹塚さんの腕の中に閉じ込められ、首筋の皮膚に熱い痛みが走った。
「ひ、」と声にならない悲鳴が出た。
けれど笹塚さんの腕の中はあたたかくて、首筋にかかる吐息は苦しくなるくらい甘くて、身体に力が入らず逃げ出せなかった。

そして私の首筋には浅く開いた犬歯の痕がふたつ。
冷静になったらしい笹塚さんが、血色の良くなった顔に盛大な焦りを浮かべ、私に謝ってきた。

「腹が減って……ついくらっとまっちまった」

かくかくしかじか。

なんだかかなり焦っている笹塚さんの長い長い言葉を簡単に説明すると、笹塚さんは吸血鬼なのだそうだ。
でも、長い間血を吸わなくても大丈夫らしく、人間と同じ栄養素でも生きていけるらしいのだが、
時々無性に血がほしくなるそうで、それで衝動的に私の血を吸ってしまったらしい。

「よかったですね吸ったのが弥子ちゃんじゃなくて。あの子にこんなことしたら脳噛さんが大喜び……じゃなかった、黙っちゃいないでしょうから」
「いや、弥子ちゃんにはしねーよこんなこと」

笹塚さんに渡されたハンカチで傷跡を押さえる私に、笹塚さんが弱ったような笑みを浮かべた。

「俺の場合、好きな女の血以外は飲みたくならねーんだ」
「ああ、へえ、なるほど、………あれ、今さらっと衝撃告白が飛び出したような気がするんですけど」
「……甘かった。苗字さんの血は、最高に」
「それは……えと、よかったです」
「で、更にあんたに惚れちまった」

あ、と思ったらハンカチが奪われた。さっきと同じ場所を、今度は舌で舐め上げられる。

「悪い、もう抑えが効きそうにない」

首筋から顔を離し、私の顔を覗き込んできた笹塚さんの下唇には私の血液がついていて、
私達のはじめての口付けは、鉄のような味がした。




2013年ハロウィン〜2014年の正月あたりまでの拍手お礼でした!

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あきゅろす。
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