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どれを読んでも笹塚さん
疲労回復

猛烈に疲れた身体を引きずりながら帰宅したら、私以上に疲れた顔をした衛士がソファで新聞を読んでいた。
顔を合わせるのは何日ぶりだろう。

「ただいまー」
「………」

読むことに集中してるのかなと思ったら、衛士は新聞を広げたままうつらうつらと舟をこいでいた。
そっと近寄り顔を覗き込むと、ふっと衛士の目が開いてじっと私を見つめてくる。

「あー名前……夢?」
「おはよう。夢じゃないよ」

私の言葉に「安心した」と呟く衛士。
けれどそれでも夢じゃないかと確かめるように、指先で私の頬にそっと触れてくる。
衛士の指だなあ。細いのに男らしくて、少し乾いたような感じの指。

「おかえり」
「ただいま」

ふっと瞳を細めた衛士に腕を引き寄せられ、膝の上に乗せられる。
そのまま重ねられた唇からは煙草の味がした。

「疲れた顔してないか?」
「衛士に比べたら全然でしょ」

頬がこけていたりということはないが、目の下のクマは相変わらず疲れを色濃く現している。
人の心配の前に自分の心配をして欲しい。

「そう? 俺は元気だけど」
「その顔じゃ全然説得力ない」
「なんだったらこれから証明する?」
「どうやって?」
「こうやって」

そう言って微かに笑った衛士が、私をいとも簡単にソファに押し倒した。
ネクタイを緩めするりと取り去り、すぐさま覆い被さってくる。

きっと私達はお互いすごく疲れていると思う。
けれど、なんだか顔を見ただけで、その疲れを忘れてしまえるから不思議だ。

「私、さっきまで疲れてクタクタだったんだけど」
「そう」
「でもちょっと元気になってきたかも」

俺も、という衛士の密やかな声が、荒い吐息と共に耳に流れ込んできた。




2013梅雨時期から10月までの拍手お礼に少しだけ書き足し。

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