どれを読んでも笹塚さん
満腹夫婦(笹塚さん夫婦 子供も居るよ!)
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笹塚さんと名前さんの子供が出てきます。
子供の名前をこちらの三番目のところへ入力してお読み下さい。
男の子でも女の子でもどちらでも大丈夫です。
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眠っている我が子の小さな手のひらを緩く握ると、その手にきゅっと力が入って笹塚の手を握り返してきた。
「よっぽど楽しかったんだね」
名前が氷の入った麦茶のグラスをことりとテーブルに置きながら笑う。
笹塚が唐突に休みを取ってきた今日、家族で近所の公園に遊びに行ってきたのだ。
とはいっても、まだ歩き始めたばかりの子供は遊具で遊ぶというよりちょこまかと歩き回っていただけなのだが。
歩き疲れた子供は帰りのベビーカーで眠ってしまい、家に帰ってもそのまま居間に敷いた昼寝用の布団で熟睡している。
「衛士、麦茶どうぞ」
「……手が離せねーんだけど」
「そっと手を引き抜けば?」
「なんかもったいない」
大真面目にそんなことを言う笹塚にくすくすと笑いながら、麦茶を笹塚の空いている方の手に渡してやった。
それを一気に飲み干すと「サンキュー」と名前にグラスを返す。
その時の微かな動きが子供に伝わったのか、んー、と小さな声を上げてあっさり笹塚の手を離しころりと寝返りを打ってしまった。
何の表情も浮かべていないように見える笹塚の瞳が残念そうに揺れる様子を名前は間近でにやにやと観察する。
その視線に気付いた笹塚が、コホンと咳払いをし頭をかいた。
「かわいーよね、あのちっちゃい手。触れてると色んなことがどうでもよくなっちゃう」
笹塚は「ああ」と穏やかな声で返事しつつ名前の頬に手を伸ばす。
名前はそんな笹塚の行動に瞳を大きくした。
「衛士、触るほっぺた間違えてない?」
「間違ってない」
「極上のお餅のような子供のほっぺに触ればいいのに」
そんなことを言いつつも嬉しいのか、上機嫌で笹塚の胡坐を組む脚の上に跨り唇を重ねてきた。
「あ、もうこんな時間。夕飯作らなきゃ。衛士今夜何か食べたいものある?」
「何でもいい。名前の作るものなら」
「衛士っていっつもそう」
余計に迷っちゃう、と名前が笹塚の膝から降りようとした時、笹塚の両腕が名前の身体に巻きついた。
「何食っても美味いしな」
「そうやってお世辞で誤魔化そうとして」
「世辞なんて言ってねーよ」
今度は笹塚から重ねられた唇を名前が目を閉じて受け入れる。
昔は食事というのは身体を動かす目的の為のものだった。食欲というものすら忘れかけていた。
腹が空こうが満ちようが、動ければどうでもよかったからだ。
しかしそんな過去など嘘のように、今では名前の作る食事を心から美味しいと思うようになっていた。
家族で囲む食事で、満ちるのは腹だけではないと知った。
「うーん、今日はカレーにしようかな。どう?」
「いいね」
「ねえ衛士、いま私がうどんにしようかなって言っててもいいねって言ったでしょ」
「まあ、うどんでもいーよ」
「衛士って、ほんとに」
「何?」
「なんでもないよ」
そう言って名前は出会った頃から変わらない、屈託の無い明るい笑みを浮かべた。
こうやって、目の前で笑ってくれるだけで胸がいっぱいになる。
笹塚は「ありがとう」と口の中で礼を言うと、優しく微笑み名前の身体を強く抱きしめた。
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