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どれを読んでも笹塚さん
限界寸前

あつー、と言って、名前は浴槽に腕を預け無防備な背中を笹塚へ見せた。
悪戯心の命じるままに笹塚が指でつっとその背骨をなぞると、名前は子供のような声を出して笑う。

「なにするの」
「綺麗な背中だなと思って」
「ありがと」

名前は腕を預けたまま顔だけを笹塚の方へ向け、まんざらでもなさそうに微笑む。
しなやかな名前の身体のラインはいつ見ても美しい。

「昔、絵本の挿絵で見た人魚姫みてーだな」
「衛士が真顔でロマンティックなこと言ってる」
「言うんじゃなかった」
「もうしっかり聞いちゃったもんねー」

ちゃんと脚、あるよ。と、色っぽい笑みを浮かべ、名前は笹塚の腰に跨り腕と脚で身体に抱きついてくる。
赤く染まった頬。後ろでひとつに纏められた髪の束から雫が落ちた。
笹塚の濡れた髪の毛をオールバックにして笑う。
頭を振って髪型を崩すと、せっかくセットしてあげたのにーと唇を尖らせ、乳白色の湯を手ですくった。
入浴剤を入れているせいで、湯に浸かっている部分が見えない。
この腐蒲温泉の湯、という入浴剤は名前のお気に入りで、毎回笹塚と一緒に風呂に入るたびに入れている。
肌がツヤツヤになり身体も温まるらしい。

ぬるめに設定された湯の温度でも、その入浴剤の効果と名前の火照った身体に体温の低い笹塚でも脳がとろけそうになるほどの熱を感じていた。

「あー……もう限界。出る」
「そうだね、のぼせちゃいそう」

自分の手で顔を仰ぐ名前の姿に目を細め、笹塚は赤く色付いた唇に同じ温度の唇を重ねた。




元拍手お礼でした。加筆修正してあります。

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あきゅろす。
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