[携帯モード] [URL送信]

GS1〜3&レストラン
好物 (琉夏)
二人でよく行くお気に入りの喫茶店の新メニューに、ホットケーキの文字を見つけた。

「あ、琉夏くん見て見て、ホットケーキだって!」

目の前に座る琉夏くんにメニューを見せると「あ、ほんとだ」と静かに微笑むだけで、私がホットケーキを作ってあげる時のテンションの高さの欠片も無い。
片手を上げてウェイトレスを呼び、琉夏くんはクリームソーダ、私は紅茶を頼んだ。

「ホットケーキ頼まないの?」
「うん。本当に美味しいホットケーキの味を知っちゃったからね。それ以外もういらないんだ」
「?」
「帰ったらさ、作って?俺美奈子のホットケーキ食べたい」

首を少し傾けて目を細める琉夏くんのおねだりポーズ。
照れくさいやら嬉しいやらで、顔が熱くなる。
いいよ、と私が頷くと琉夏くんは本当に嬉しそうに笑った。

「でも帰ってから作ると夕飯食べられなくなっちゃうよ?」
「夕飯も食うよ、もちろん。で、ホットケーキも食べる」

私はダイエット中だというのに、スタイルを気にしないで好きなものを好きなだけ食べられるというのはうらやましい。

「そんなに食べたら太っちゃうよ」
「ならさ、食後に運動すればいい。つきあってくれる?」
「ウォーキング?ストレッチ?」

琉夏くんが運動なんて珍しいなと思って聞けば、思わずドキッとするような熱を孕んだ瞳が私に向けられた。
その情熱的な眼差しに、琉夏くんが何を言おうとしてるのかわかる。

「もっとイイコト。できれば一晩中…駄目?」
「………琉夏くんのばか」

二人の会話が一瞬途切れた時、お待たせしました、と注文した飲み物が私達の目の前に置かれた。
砂糖とミルクを入れて湯気の立つ香り高い紅茶に口を付ける。
アイスクリームのたっぷり乗ったソーダ水を前に、琉夏くんは子供のように目を輝かせていた。
さっきまでの眼差しはどこへいったんだろう。ふっと笑みが漏れる。

「琉夏くん、ひとくちちょうだい」
「あれ、ダイエット中だから甘いものすすめないでって言ってなかった?」
「…食後に運動するんでしょ」
「アイスお前に全部やる。ほら口開けて」

豪快にスプーンに乗せたたっぷりのアイスを私の口元へ嬉々として運んできた。
大きく口を開けてそれを頬張る私を見つめる琉夏くん。
その優しい瞳の奥で、私への欲望がジリジリと燃えているのが見えた。
きっと琉夏くんも私の瞳に同じものを見ているだろう。

好きな人に求められて火照る身体にアイスクリームがひんやり染みた。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!