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GS1〜3&レストラン
I'll be there for you(同棲中琉夏バンビと琥一)
「話があるんだ」と琉夏に呼ばれ、二人の暮らす家を訪れた琥一は、ソファに腰を下ろすと同時に出されたコーヒーと婚姻届に一瞬呼吸も忘れて目を見開いた。

「琥一くん、私達ね」
「結婚するからご報告。あれ、声も出ないほど感激してるの?コウ」

のほほんと笑う琉夏と美奈子に対し、琥一は眉間に深い皺を寄せ、口をあんぐり開けたまま唖然としていた。
おーい、と琉夏が琥一の目の前で手を振ると、ようやくハッと意識が戻る。

「てめェバカルカ、まさかデキちまったとかじゃねーだろーな!」

琉夏の兄として、美奈子の幼馴染として、というより、二人の保護者のような気分で琥一は琉夏に怒鳴りつける。
しかし琉夏は即座に首を振って琥一の言葉を否定した。

「ナイナイ。だってゴムしなきゃ絶対しない!とか本気で言うんだぜ?一回お預け食らって歯軋りしながら深夜コンビニにBダッシュした」
「ちょっと琉夏くん変な話しないで!」

もう、と頬を染め琉夏の腕を引っ張る美奈子に、琉夏はもちろん、厳しい顔をしていた琥一も頬を緩めた。
それで少し冷静になった琥一は、出されたコーヒーに口をつけてから口を開く。

「おめーら同棲してんだし、結婚なんてまだ先でもいいじゃねーか。あんま焦んな」
「同棲してるんだから結婚しても変わんないだろ。美奈子の苗字が変わるくらいだ。あと、生でデキる」
「相変わらずチャランポランなヤツだなおい。大黒柱としてやっていく覚悟あんのか?美奈子泣かせたら承知しねーぞ」
「お兄ちゃんはコエーな。俺、美奈子の為だったらなんでもするよ」

琉夏の言葉は、表面だけのものじゃなく本心から言っている。
顔はへらりと笑ってはいるが、瞳は真剣に美奈子との将来を見据えていることが見て取れた。
若すぎる二人とはいえ、二人の真剣な気持ちと琉夏の美奈子への揺るぎない深い想いは、若さからくる一時の勢いだけで言っているのではない。
結婚の覚悟を確認する必要など無いなと琥一は苦笑いを零した。

「それで?結婚式はどーすんだ」
「式?美奈子ドレスとか着たい?」
「できれば」
「オイオイ待て、そんなことも話し合わずに結婚なんて言ってんじゃねーよバカ」

琥一に言われて初めて気がついたと言わんばかりの二人の態度に、琥一はヤレヤレとため息を吐く。

「婚姻届出すことしか頭に無かった。これ出せば夫婦になれるって。見てコウ、五枚ももらってきた」
「そんなに必要ねーだろ」
「予備」

テーブルにバサリと乗せた五枚の婚姻届の一枚に、琉夏と美奈子の名前と住所が書いてあり、捺印してある。
それを琥一に差し出したのは美奈子だった。

「琥一くん、婚姻届の証人になってくれないかな?」
「あ?」
「証人。二人分の署名捺印がいるんだってさ。コウに証人の一人になってもらいたいって美奈子が」
「そりゃかまわねーけどよ…」

差し出された婚姻届を受け取ると、美奈子は花が綻ぶような、心に素直に染み込む優しい笑みを浮かべた。
美奈子のこの笑顔は昔から琉夏と琥一だけに向けられる、特別な笑顔だった。

「私のお兄ちゃんになるんだね!琥一くんとの繋がりがもっと強くなった気がする。嬉しい」
「オニーチャンだってさ、コウ。あ、鼻の下伸びてる。嬉しいんだ」
「伸びてねぇ!」

美奈子を自分の手で幸せにしたいと、昔はそう思っていた。
気持ちを言葉にする勇気も無かった淡い気持ちは、いつしか姿を変え、別の形で幸せに結びついた。
琉夏と美奈子が愛し合い、その二人が琥一に絶大の信頼と親しみを持って素直に好意をぶつけてくる。
きっとこの先ずっと変わらないだろう。

最高の関係じゃねーか。琥一は目元に滲むものをぐいと手で拭う。
そして二人に笑顔で言った。

「おめでとう」




♪The Rembrandts/I'll be there for you
アメリカのドラマ"Friends"の主題歌。
フレンズ大好きです。
男女の友情を越えた友情、硬い結びつきと爆笑もののやり取りが最高!
琉夏バンビ琥一もこんなだったらいいなと。
「まあるい時間」の前の話っぽい。


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あきゅろす。
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