GS1〜3&レストラン ゆきあそび (琉夏) 昨夜から降り続けた雪は、たった一晩ではばたき市を真っ白に染め上げた。 積もった雪を素手ですくう。 ふわふわの雪をキュッと丸めると指先が痛みを感じるほど冷たい。 珍しくデートに遅れてる琉夏くんを待つ間、公園入口の柵にちっちゃな雪だるまを作って時間を潰していた。 指先が痛むのも構わず雪玉を作り、胴体に頭を乗せ、小石で目を作る。 形も大きさもてんでバラバラだけど、どこか愛嬌のあるみっつの雪だるまが出来た頃、ようやく琉夏くんが姿を現した。 「美奈子ゴメン。アレ、俺待ってる間こんなの作ってたんだ。カワイイ」 カワイイ、を雪だるまでなく真っ直ぐ私の目を見て言うものだから、何て返していいか困った。 「可愛いでしょ、みっつあるんだよ。琉夏くんと琥一くんと私みたい」 「じゃあ俺こっちの雪だるまでお前がこっち。ほらコイツらくっつきあってる。ラブラブだ」 琉夏くんが胴体が密着しあってる雪だるまを指差す。 「琥一くんだるま、ヤレヤレって呆れたような表情してるよ」 「コウ一人じゃ寂しいよな、横にホットケーキでも置いといてやろ」 つめてーなんて言いながら、琉夏くんは雪だるまの横にホットケーキの形っぽいものを作る。 ひとつ作ったら気分が乗ってきたらしく、今度はコウの好きな牛肉だ、と楽しそうに雪に手を伸ばしている。 ふっと、琉夏くんの頬に触れたいな、と思った。 かじかんだ指先にあたたかな息を吹き掛け、温度を取り戻そうとしてみる。 「美奈子、寒い?」 「あ、ううん。雪さわってたら指が冷たくなっちゃって」 「俺も俺も。ジンジンする」 冷たい手で冷たい手を包んでも意味は無いかもしれないけど、私は琉夏くんの手を両手で包み、はあと息を吹きかけ、指先に唇を押し当てた。 唇同士が触れ合う感触とは違って、男の人の手の逞しさを唇で感じる。 花屋のバイトで少し荒れた手が心から愛しかった。 琉夏くんの動く気配。頭にちゅ、というリップ音と共に琉夏くんの唇が触れる。 「あ、いいこと考えた」 チョット待って、と琉夏くんが片手で雪をすくった。 いいことってなんだろう、と首を傾げる私を見て琉夏くんがニッと笑う。そしてあろうことかその雪を自分の唇に押し付けた。 一瞬雪を口に入れたのかと思ったが、すぐ雪を払いのけ冷たい手で私の手を握る。 「唇も冷たくなっちゃった。ちゅーしてあっためて?」 今の私の顔、きっと琥一くんだるまと同じ表情してるだろうなと思った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |