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GS1〜3&レストラン
さらさら (琉夏)
「あ、寝癖」

琉夏くんの言葉に、バッと素早く髪の毛を押さえた。
朝起きたらついていた寝癖。
簡単に直ると思っていたがかなり頑固な寝癖で、デートに出かけるギリギリまで頑張ったというのに結局直らなかったのだ。
毛先の一筋だけが違う方を向いているだけだからパッと見はわからないよね、なんて思っていたのに琉夏くんには一目でバレてしまったらしい。

「珍しい。寝坊でもした?髪の毛、ハネててかわいい」

琉夏くんが微笑み、私の髪の毛を手ですくって風に流す。
サラサラしてる、と嬉しそうに何度も何度も。

「洋服に気合入れておいて髪の毛がこれじゃあガッカリだよね…」
「全然。いつも完璧じゃなくたっていいじゃん、美奈子はどんなだってかわいい」
「ありがと」

口が上手い琉夏くんは、相手が私じゃなくても同じようなことを言うのだろうな。
思わず浮かぶ苦笑い。
それを見た琉夏くんの顔からすっと微笑みが消え、真顔になった。

「どうしてそんな風に悲しげに笑うのかな、お前」
「えっ…そんなことないよ」
「ある。時々さ、泣きそうな笑顔してる。俺のせい?」

違う、けど違わない。
私が勝手に傷ついてるだけだ。
琉夏くんはちっとも悪くない。

「琉夏くんの髪って凄く綺麗だよね」

空気を変えたくて、背伸びして太陽の光を受けてキラキラ輝く琉夏くんの髪に手を伸ばす。
サラサラと気持ち良く指の間を通り抜けていく琉夏くんの髪の毛。
琉夏くんはされるがまま、憂いを含んだ眼差しでじっと私を見下ろしていた。

「いつかバッサリ切りたくなった時はさ、美奈子に切ってもらいたいな。駄目?」
「ええっ」
「お前の手で変わるんだ。責任重大だぜ」

よっぽどポカンとした顔をしていたのだろう。
私の顔を覗き込んだ琉夏くんが、楽しげにハハッと短く笑った。

それは、私の抜けそうで抜けないちっぽけな心のトゲをふっと消し去ってくれるような、そんな笑顔だった。






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