silent child
10
注目を浴びるのは、僕も苦手。
沢山の視線を浴びたら……、勝手に顔が熱くなって、勝手に頭が下がっちゃうんだ。
でも、これは――、怖いって感覚とは違う。何かは分からないけれど……。
苦手なのは一緒だから、注目されるのが嫌で変われないっていう、カレンちゃんの気持ちもよく分かる。
手紙を読んで、凄く悲しかった。それに、悔しかった。
――どうして変わったことで、笑われなきゃいけないの?
変わった子が、皆の当たり前と違うから?
皆にだって、コンプレックスや、苦手なこと、出来ないことだって、あるはずなのに……。
勉強の苦手な子が、成績を伸ばせば、周りから褒められる。
運動おんちの子が、体育で活躍すれば、周りに認められる。
勉強が出来ることや、運動が出来ることは、当たり前じゃないから?
皆の当たり前とちょっと違う子だけ、変化を褒めないなんて、認めないなんて……、そんなの不公平だと思う。
そんなことを考えていれば、益々顔が熱くなる。悲しくて、悔しくて……、喉が熱くなる。目が熱くなる。
だけど、僕は泣いちゃいけないと思う。
だって――、僕は、カレンちゃんの目標だから。
だって――、僕は、僕のために……、カレンちゃんのために、頑張らなきゃいけないから。
カレンちゃんが、その子の変化を凄いと思ったように……、例え、変化を笑う人がいたとしても、変化を褒めてくれる人だってちゃんといるんだ。
僕は知っている。
僕が変わった時に、褒めてくれるだろう人達を……。大和にダイキにマサキ、そして、カレンちゃんが、褒めてくれるだろうってことを、僕はちゃんと知っている。
カレンちゃんの周りにだって、きっとそういう人達が居る。
――私のことを応援して下さい。
カレンちゃんからの、手紙の最後の言葉。
情けない僕は、今まで応援されてばかりいた。
あの4文字を、貰ってばかりいた。
だけど今度は――、4文字を贈る側になりたい。
熱くなった頬を、両手で軽く叩いて、気合を入れる。
その勢いのまま、ベッドから立ち上がる。机に向かって、便箋を用意したところで、マサキから貰ったメモの存在を思い出した。
カレンちゃんのメアドが書かれたメモ。
女の子とメールなんて、したことない。
(どうしよう……)
暫くメモと、睨めっこをしていた。
ちょっと迷ったけど……、カレンちゃんに、あの4文字を、早く贈りたかった。
だから、勇気を出して、メールをぽちぽちと打ち始める。初めてのことに緊張して、何度も、書いては消してを繰り返す。
一時間くらいたった頃、漸く完成した。
そこからまた、送信ボタンを押すまでに一時間かかったってことは……、僕だけの秘密。
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