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silent child

「ケ・ン・タん! 愛しの彼女から、愛の告白のお返事ですよぉー!!」
「んー。」

(……って、違うっ!!)
 てきとうに相槌を打った後で、マサキが冷やかしていることに気付いた。慌てて否定しようとしたら……、
ベンッ!!
ビシ――ッ!!
 大和の方から痛そうな音が飛んできた。

「つぅっ。」
「大和っ! 大丈夫?!」
「何やってんだかー。」
 大和の1弦が切れて、びよんびよんとしなっていた。
 僕も一番細い1弦はよく切ったりするけど、大和は滅多に切ったりしないから驚いた。ベースの方が弦が太いっていうのもあるけど。

「わ、わりぃ。張り替えるわ。」
 大和は気をとり直して、新しい弦を取り出した。
(ビックリした)
 驚きのあまり練習する手も止まり、一息つきながら、大和が弦を張り替えるのを、じっと観察する。

「人目を忍んで手紙を届けてやっているマサキ様に感謝したまえよ、ケンタッ!
 つぅーか、文通っていつの時代だっつーの。渋ー。」
「だって……。」
(他にどうしろって?)
 マサキから封筒を受け取りながら、そんなことを思う。
 これで、カレンちゃんからの手紙は3通目。
 何だかんだ言って、協力してくれるマサキに感謝している。住所も何も知らないから、同中のマサキに頼むしか方法が無い。

(今時、文通って変?)
(大和もそう思ってるのかな?)
 大和はさっきから無言で、きりきりとペグを回し、弦を張っていくことに集中しているみたい。

「そんな奥手な二人のために……、なぁーんとぉー!このマサキ様が、暖簾ちゃんのメアドをGETしてきてやったぞー!! 次からメールでいいってよー。ケンタ、見事にメル友へ昇ー格っ!!」
(メル友?)

ビシ――ッ!!
 マサキの方に一瞬目を向けている間に、大和の弦は再び、びよーんとしなっていた。
「大和っ! またっ?!」
 どうやら大和は勢い余って、ペグを回しすぎちゃったみたい。
 張り替えで切るなんて……、大和、どれだけ力んじゃったんだろう。

「わりぃー。弦買ってくるわ。」
 弦を二回も切ってしまった大和は落ち込んでしまったように見える。
 予備も無くなってしまったため、店内へと買いに行ってしまった。

 オリジナル曲を初披露するってことで、練習と言えど、今までよりも、変に力が入っちゃうのかもしれない。
 僕も大和に負けないように、熱を入れて練習しよう。


*****



 前回もらった、カレンちゃんからの手紙には、顔を出せなくなった理由と、頑張りたい理由が書いてあった。

 理由が自分で分かっているカレンちゃんは凄いなと思う。僕の場合、どうしてって聞かれても、自分では分からないから。


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あきゅろす。
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