silent child
4
聞かなくたって、何でそう呼ばれているなんて分かる。本当の名前がカレンで、前髪がそれっぽいから……、ノレンって呼ばれてるってことだと思う。
通称ってことは、皆がそうやって呼んでいるってことだよね。
――それって、イジメじゃないの?
僕だって、ダンマリとか言われると、凄く嫌な気持ちになる。きっとこの子だって……、暖簾ちゃん、なんて言われるのは嫌に決まっている。
でも――、そんなことを思いつつも、僕も似たことをしているってことに気付いた。
名前が丸尾で、髭がそれっぽいからって、マリオって呼んでいる僕。
面と向かって言っていたとしたら、マリオ……、丸尾先生も傷ついていたかもしれない。
ちょっと反省した。
――これからは、ギター弾いていない時でも、心の中で呼ぶ時でも、いつでも丸尾先生って呼ぶようにしよう。
「なぁなぁ、ケンター! 中、読んでみろよっ! ファンレターじゃなくて、ラブレターかもしれないじゃん!!」
マサキがそう勧めてくる。
「ラブレターッ?!」
大和もなぜか必死に体を前に乗り出して、僕を見つめてくるし、ダイキも興味津々って感じでこっちを伺っている。
(嫌だっ! 僕は一人でゆっくり読むんだ!)
そういう気持ちを込めて、ぶんぶん頭を横に振って、手紙をまた、厳重に仕舞い込んだ。
その後は、「後で絶対教えろよ!」と皆に散々言われ続けた。
特に一番煩かったのが、大和。
「絶対だからな?!」と何回も念押しをされて、段々と面倒くさくなってきた。
(何をそんなにムキになっているんだろう?)
途中からは、てきとうに聞き流して、頷いていたってことは、もちろん秘密。
他の3人は沢山貰っているくせに、僕の時だけやたら騒ぐのは……、不公平だと思う。
*****
家に帰って、即行で部屋に閉じこもり、ベッドの上で体育館座りをする。この体勢が一番落ち着くから。今は、心臓の音が煩くて、ちっとも落ち着けないけど……。
(初ファンレターかぁ)
封筒を見れば、やっぱりにやけてくる。
綺麗にシールを剥がし、ゆっくりと封筒を開けた。
中から出てきた便箋も、可愛い淡いピンク色。丸っこい小さな字もやっぱり可愛くて……、あの女の子の声を思い浮かべながら、一文字一文字ゆっくりと丁寧に読んでいく。
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