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silent child

 恐いけど……、めちゃくちゃ嫌だけど……、仲間と一緒なら、少しはがんばれそうな気がする。

「憲太、どうするー?」
「ケンタッ、どーすんのー?」
(僕は……)
「……っ、……行くっ。」
 行くにしても行かないにしても、恐くて恐くて堪らなかったけど、僕は、仲間と一緒に行く決意をした。
 恐いけど、一人じゃない。仲間が居る。

「よぉーしっ! 皆で行くぞっ!!」
「よっしゃーっ!! 4中に初乗り込みだぁー!!」
 大和とマサキは気合を入れていた。
 二人を見ながら、そう言えば、マサキは他校生だったな、とか、僕達私服なのにいいのかな、とか、秋休みなのに学校に入れるのかな、とか変な心配ばかりしていた。

「こういう時こそアレっしょ! ほらほら、手ぇ出せぇー!」
 マサキは自分の手を前に出す。
「はいはい。」
 大和もその上に手を重ねた。
「ちっ……、相変わらずハズイ奴等。」
 文句を言いながらも、ダイキも手を重ねた。

 僕も、皆の上に手を重ねた。

「騒いで騒いで騒ぎまくれっ!! noisy boys、4中に突撃だぁーー!!」
「「「「おぉーーっ!!」」」」
 円陣組んで、皆で気合入れたら、少しは恐怖も薄まってきた気がする。

「突撃ーっ!! 急げ急げっ!!」
 そのノリのまま、スタジオから飛び出ていく皆。僕も慌てて後に続く。

 店内まで走ったところで、カウンターにテツさんを発見した。
「テツさん、メンゴーーッ! また後でちゃんと戻ってくるからっ! ヨロピクーッ!」
「テツさん、ゴメンッ!! こいつちょっと預かっていてっ!!」
「悪いっすけど、ヨロシクー。」
 テツさんの返事も聞かず、勝手に荷物をテツさんの足元に置き出す皆。
(テツさん、ごめんっ!!)
 心の中で謝りながらも、僕も相棒をテツさんの傍に置いた。
「こっ、こらぁーーっ!! 待ちやがれっ!! こんのっ、クソ餓鬼どもーーっ!!」
 テツさんの怒鳴り声をバックに、僕達は走り去った。


*****



 3時50分――。
 僕達は、応接室の窓の前。壁を挟んだ校舎裏の地べたに座っていた。
 窓を薄っすらと開けているから、声が聞こえるはず。お母さんと矢口先生はまだ来ていない。
 でも――、直に始まっちゃう。
(恐いっ! 恐いっ!! 恐いよっ!!)

 恐くて堪らなくて、必死に肩から伝わる体温を感じていた。
 肩をくっつけて、右には大和、左にはマサキが居る。壁に背中を預け、横一列。
 ダイキは僕の正面で、ヤンキー座りをしていた。
 僕は、仲間に囲まれて居て、一人じゃないってことを、必死に感じていた。


バタン
 ドアの開く音。僕の心臓と一緒に、僕の体は飛び跳ねた。


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