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silent child


「えっ?」
「はっ?」
「だっ、大輝っ!! おまっ、まさか先公をフクロにしようとか考えてねぇだろうなぁ、おいっ?! もしくは校舎破壊っ?! いくら不良っつったって、そこまでイッちゃたヤツじゃなかったはずだろー、なぁ?! 目を覚ましやがれーーっ!!」
 僕と大和が目を点にしている間に、マサキは凄い形相でダイキを揺すっている。

「ばっ!! ちっげぇよっ!! このウジウジ野郎が気になって仕方ねぇって言うから偵察に行こうって言ってんじゃねかっ!! このボケナスッ!!」
(ウジウジ野郎……)
 そんなんじゃない、って言ってやりたいけど……、本当のことだから言い返せない。
 ダイキは、掴みかかっているマサキを邪魔くさそうに跳ね除けた。マサキの行動に余計機嫌を悪くしたようで、目をこれでもかってくらい吊り上げ、口元をひくひくさせている。

「なぁーんだ、驚かせんなよなぁー?」
「ちっ……。」
 邪険に扱われても、マサキはへこたれずに、ダイキの肩をふざけた調子で小突く。ダイキは苛立った様子で舌打ちしているけど、マサキにさせたいようにさせていた。
 やっぱり……、なんだかんだ言っても、二人は仲が良いんだなぁって思う。


「偵察か。それもアリなんじゃない、憲太?」
「えっ、何?」
 大和に突然ふられても、何のことだか着いていけない僕。

「だからさ、こっそり立ち聞きしちゃおうってこと。何言われたか分からないまま、家で親を待ち構えているよりもさ、立ち聞きしておいて、心の準備をすまちゃった方が、まだマシじゃねぇ?」
(そう……なのかな……?)
 僕には、どっちの方が良いかなんて分からなかった。先に知ったとしても、後で知ったにしても……、恐いのは変わらないから。
 正直言えば――、どっちも嫌だ。

 本気で、火事とか地震とか何か起きてしまえばいいのにって思ってしまう僕がいる。
 そんなことが実際起こってしまったら、誰かが怪我してしまうかもしれないのに……。
 自分で自分のことが嫌な奴だと思う。
 だけど――、それほど恐いんだ。それほど嫌なんだ。

「そうだよっ! 皆で偵察に行こうぜっ! そしたら、母ちゃん対策も一緒に考えてやれるしさ、なっ! 前もって対抗策考えておいた方がケンタも気が楽だろっ?」
(それは……、確かに……)
 いきなりお母さんに問い詰められるようなことになったら、きっと僕は上手く対抗できない。下手な態度を取って、お母さんを余計に怒らせることになってしまうかもしない。

「それにさ、その先公がケンタのこと悪く言いやがったりしたら、俺がぶっ飛ばしてやるんだっ!!」
 さっきはダイキを必死に止めようとしたくせに……、今度は自分がそれをやるって言っちゃってるマサキが、何だかおかしかった。
 それに……、凄く嬉しかった。


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