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silent child


「まっ、ケンタにも色々事情があんだろ?大輝ぃー、あんま苛めちゃやぁよ?」
 大和の隣でマサキも苦笑していた。
「ちっ、うぜぇっ! ピーチクパーチク泣きやがってよぉ! 煩くてしゃーねぇっ!」
 マサキの隣で、ダイキはそっぽを向いていた。

 泣き叫ぶ僕は、仲間に囲まれていた。
 正面に立つ大和にぽんぽんと頭を軽く叩かれれば、もう止まらない。

 いつものやりとりが始まる。
 僕は大和に抱きついて叫びまくった。

 お母さんに言いたかった……、伝えたかった……、聞いて欲しかった、僕の気持ち。ずっと喉に引っかかっていた本当の気持ちを大和にぶつける。
 大和は一つ一つに「うん」を返してくれる。

 僕は大和の前でだけ、泣くことが出来るはずだった。
 僕は大和の前だけで、気持ちを思いっきりぶつけることが出来るはずだった。
 大和の前でだけ、僕は僕になるはずだった。

 だけど――、今はダイキが居る。マサキが居る。仲間が居る。
 仲間が居る前でも、僕は僕だった。

 叫び続ける僕を見て、マサキは呆気にとられていた。ダイキはもう慣れたのか、すました顔をしていた。
 だけど、ちゃんと聞いてくれていた。僕の言葉を……、僕の気持ちを。

 そんな大和にマサキにダイキが大好き。
 そんな仲間が大好き。

 僕は洗いざらい話した。
 お母さんは僕を知らないこと。
 お母さんが学校に乗り込むこと。
 僕には、それが恐くて堪らないこと。


「ふーん、すっげぇ母ちゃんだなぁ。つーか、ケンタがヤマトにべったりな理由が漸く分かったような気がする。」
 落ち着いてきた僕は、マサキの言葉を聞いて、急に恥ずかしくなった。慌てて大和から離れる。
(またおホモダチって言われる……)
 また馬鹿にされるんじゃないかって思って、ダイキをちらって見たら……、何だか難しい顔して考え事しているみたい。

「何つーかさ、ヤマトもケンタも分かり合ってて、信頼し合っていてさぁ。お互い大切に想ってんだなぁとか、長年一緒に居るだけあるなぁとか。二人の世界には、入る隙間がねぇやみたいな? うーん、仲間としてはちょっとジェラシー。」

 冗談っぽく言うマサキだけど、僕はもっと恥ずかしくなって、顔を真っ赤にした。
(そんなの……っ)
「「僕(俺)達、幼馴染だから(さ)。」」
「ほらー。そうやって息ピッタリなところとかぁ。」
 予想外に、大和とハモってしまい、益々恥ずかしくなった。
 僕からしたら、マサキ達の方が仲が良いと思う。よくお互いに貶し合ったりしているけど、いくら冗談だとしても、本当に信頼し合ってないと出来ないことだと思うし。

 そんなことを考えていたら、ダイキが急に喋り出した。
「お前等、学校に乗り込むぞ。」


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