silent child
10
言わなきゃ。僕の番なんだから。
言わなきゃ。これから仲間になるんだから。
言わなきゃいけないって、ちゃんと分かってる。言わなきゃ仲良くなれないって、ちゃんと分かってる。言いたいって、心の底から思ってる。
それなのに――、声が出ないんだ。
マサキと、石川君と、マリオの視線に耐えられなくなって、僕の頭は下がっていく。僕の顔は赤くなっていく。
「なぁ、お前はー?」
「なぁ、どうしたんだよ?」
マサキは、僕が黙っているのが不思議みたいで、何度も聞いてくる。
ピーちゃんを思い出した。
あっ君を思い出した。
ケイ先生を思い出した。
あんなに後悔したのに……。
こんなに心に残っているのに……。
――どうして僕は変われないの?
情けない僕。ダサい僕。変わっていない僕。
そんな自分にムカついて、そんな自分がやっぱり嫌いで……、僕はもっと顔を赤くした。
「コイツは、憲太。4中3年。」
「おじさんの生徒で、ギターだよん。」
横と後ろから、僕を助ける音が飛んできた。振り向かなくたって分かる。大和とマリオ。
「ふーん。ケンタな! ヨロピクー!」
マサキはさっきと変わらない無邪気な笑顔で、僕の肩をコツンと叩いた。
いいヤツだなって思った。僕が普通と違うってことに気付いたはずなのに、何も態度を変えないから。
――良かった。受け入れてもらえた。
そう思って、安心して顔をゆっくりと上げる。
そうしたら、正面に居た石川君の視線とぶつかった。
石川君は、僕を……、睨んでいた。鋭く吊り上った目で、僕をグリグリと抉るように……。
僕はドキッとした。今度は顔が青くなる。
――石川君は、僕を受け入れていない。
声に出して言われなくても、顔を見れば分かる。さっきからずっと、僕の方を睨んでいる。
大嫌いな矢口先生の言葉を思い出した。
このままじゃぁ、この先通用しない。
いつまでも大和には甘えていられない。
そんなこと……、分かっている。僕は、このままじゃいけない。僕は、変わらなきゃいけない。僕は、甘えたままじゃいけない。
大和や、マリオに頼って、受け入れてもらえたかもしれないなんて、ずうずうしく、甘えた考えを持ったことを……、反省した。
「まぁ、自己紹介も終わったことだし、雰囲気見るために、軽く演奏してみような?
分厚い方の教本出して。全員P32は習っているはずだから、皆でやってみるぞい。」
「ワクワクするー!」
「そうだなっ!」
マサキと大和は既に興奮しながら、僕と石川君は黙々と、それぞれの準備にかかった。
「皆、準備いいな?」
(どうしよう……)
準備したものの、僕の体は固まっていた。
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