silent child
10
『弦を弾いたと同時に自分まで弾けちゃって……、結局は、こんなんなっちゃったんですけどね、アハハ。』
彼は無邪気な笑顔で笑っていた。テレビの中の人達も、隣の大和も。
さっきまで奇抜に見えたギタリストの彼が、今はキラキラと輝いて見えた。
彼らの曲もまた凄かった。大音量で一斉に叫んだり、演奏しながらステージを走り回ったり。ステージの下にいるファンも頭振り回して、飛び跳ねて。
凄く――生き生きしていた。
「大和……、このバンド、何て言うの?」
僕は顔に熱が集まっていくのを感じていた。
*****
「いらっしゃいませー!」
あのバンドを知った翌日――、僕は生まれて初めて楽器屋さんに来ていた。
入った瞬間目に入ったのは、譜面台やら足台やらの小物類。
少し店内を進めば、目的の物に直ぐに巡り会えた。
僕が見に来たのは――、エレキギター。
エレキギターにも色々な種類があるのだと初めて知った。値段もピンからキリまで。0の数を間違えてるんじゃないかってくらい高額のギターも飾られていた。
「いらっしゃい。何探してんの? エレキ? アコギ? それともエレアコ?」
突然話しかけられて、ビクッと体が飛び跳ねた。恐る恐る振り返れば、僕の体はまた飛び跳ねた。
両サイドにギザギザの刈り込みいれた、いかにも恐そうなお兄さんが立っていたから。しかも、耳は千切れてしまいそうな程の大きな穴が開いていて、そこに鉄の塊が押し込められている。
僕はお兄さんと喋れるはずもなく……、真っ赤になって、またエレキをじっと見つめた。
「そっか。エレキか。俺もエレキ派だぜ? ガンガン大音量で演奏するとスカッとすんだ。」
変なヤツだと思われて、相手されなくなると思ったのに……、お兄さんは極普通に返してきた。
「そうだなぁー。俺的にはこのへんがおススメー。もうちょい銭出せるってんなら、こっちのがもっとイイけどなぁ。」
僕が喋れないことには全く触れずに、詳しく説明してくれる。実は凄くイイ人なんだって気付いた。
人を見かけで判断してはいけない。正にその通りだと改めて思った。
「なんならちょっと弾いてみる?」
(とんでもない!)
僕はますます真っ赤になって、下を向き、辛うじて判断出来るくらい、僅かに首を左右に振った。
「遠慮すんなって! 試し弾きはタダなんだから! 試さな損損!」
お兄さんは、その辺から椅子を引っ張ってきて、僕を無理やり座らせる。そして、メタリックレッドのエレキギターを僕に手渡す。膝に乗せられた瞬間、意外に重たいことに少しビックリした。
「はい。」
そう言って、オレンジ色のピックも僕に握らせる。
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