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silent child


 今でも忘れることの出来ない思い出がある。
 “あっ君とピーちゃん”……、下手に仲良くなろうとして失敗した思い出。

 あれは小学校2年の時だった――。


*****



 僕のクラスは大和のクラスより早く終わっちゃった。だから、廊下の前で大和を待つ。

「先生、みなさん、さようなら。」
「「「さようならーー。」」」

 大和のクラスも終わったみたいで、次々とみんなが出てくる。
(いた! 大和だ!)

「大和! 一緒に帰ろう!」
 見つけた瞬間、大和に駆け寄って誘いをかける。僕と大和の家は隣同士。だからほとんど毎日一緒に帰るんだ。

「わりぃー、憲太。今日もクラブなんだぁ。」
「えぇーー! またぁーー!」

 最近大和はサッカークラブに入った。そのままクラブへと直行する大和とは別ルートになってしまう。
 断られるのが続けて三回目になる僕は、なんとなく引き下がるのが嫌だった。
 だから僕は、大和の腕に自分の腕を無理やり組んでこう言った。

「じゃぁ、僕が遠回りして帰るから、一緒に帰ろう! ね!」
「でもなぁ。なんだか悪いじゃん。また今度一緒に帰ろうぜ?」
「ヤダ! 絶対一緒に帰る!」

 大和は渋っていたけれど、僕はどうしても一緒に帰りたかった。

「分かったよ。一緒に帰ろう。」

 結局、大和は笑顔でそう言って、僕のわがままを許してくれた。そんな優しい大和が僕は大好きなんだ。

(久しぶりに大和と二人で帰れる!)
(嬉しいなぁ、何を話そうかなぁ)

 そう考えていたら――、
「大和君、早くクラブ行こうよ!」
 僕と同じくらいの身長の子が、僕が組んでいない方の大和の腕を、掴んで言った。

「あっ! あっ君。
 今日、コイツも一緒だけどイイ?」
(えっ、その子も一緒なの? 嫌だなぁー)

 一瞬、そう思っちゃった。だけど――、
「うん! もちろんイイよ!」
 あっ君が迷わず笑顔で返事をしたのを見て、ちょっと反省した。

 きっとあっ君はイイ子なんだな。もしかしたら、仲良くなれるかもしれない。


 そんな期待を胸に抱いて、3人で校門を潜った。

 真ん中はもちろん大和。右腕は僕と組んで、左腕はあっ君と組んでいる。
 歩道一杯に広がって歩く僕達は迷惑かもしれないけど、僕は腕を外したくない。きっと、あっ君も同じ。

 人見知りの僕は、ちっとも話せない。
 だから、大和とあっ君が仲良く話すのを聞いていた。

 そんな僕に気を使って、あっ君は頻繁に僕に話しを振ってくれる。

――凄くイイ子。本当に仲良くなれそう。

 喋れない僕は、顔の動きだけで必死に反応を返しながら、そう思った。


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