silent child
9
10分もしない内に、カレンから返事がきた。
『ケンタ君、こんばんは。
私は、実はもう、高校に合格しているの。推薦で、南高校の芸術科に決まったんだよ。
私はやっぱりピアノが好きだから、将来はピアニストになりたいなって思っているよ。だから、音楽コースのある芸術科に入って、もっと技術を磨きたかったの。
ケンタ君は、ギタリストになりたいのかと思っていたんだけど、違った?
でも今は、大学で他の勉強をしながら、プロになる人もいたりするんだから、学校選びには直接関係ないかもしれないね。
勉強をしながら、ギターを続けるっていうのも有りだと思うよ。
それと、ケンタ君は、本当に大和君が好きなんだね。好きな人と一緒に、ずっと居たいって気持ちは、私にも分かるよ。
でもね、大和君の、好きな人に、自分のせいで後悔させたくないって気持ちも分かる。
だから、どっちの味方も出来ないや。ごめんね。
私には、お互いに想い合う二人が羨ましいな。私も早く両思いになれるように、頑張るね!
ちょっとは参考になったとしたら、嬉しいな。』
カレンはやっぱりピアニストか、なんて思いながら画面をスクロールしていく。
勉強しながら、ギターをやるっていうのも有りなんだなとか、僕と大和の気持ちがよく分かっているな、とか関心しながら読んでいたら……、最後の方がちょっとおかしいことに気付いた。
(私“も”両思いになりたいって何っ?!)
(好きって、そういう好きじゃないからっ!)
(そんな言い方、まるで僕達が……)
恋人みたいじゃんか、とか思いながら、顔が一気に真っ赤になった。
(違う違うっ! 唯の幼馴染っ!)
(カレン、勘違いしてるっ!)
冬なのに、顔がめちゃくちゃ熱くて、とりあえず手で扇いでおく。
カレンに、誤解だってことを直ぐに返信したら、「冗談だよ、落ち込んでいるから元気だそうと思って」って返ってきた。
カレンにまんまと嵌められちて慌てちゃった自分が、何だかおかしくて、声を上げて笑っちゃった。
すっかり落ち込んでいた気分も、カレンのおかげで少しは復活してきた。
――元気をくれたカレンにお礼を言おう。
感謝の5文字を送信したら、「早く仲直り出来るように、頑張れ!」と応援の4文字が返ってきた。
それを見て、僕は苦笑。
仲直り……、出来るといいけど……。
ため息が、1つ零れた。
(早く仲直りしたいな……)
*****
次の日の朝――。
大和はいつも通り、家の前で待っていた。
そのことに、ちょっとほっとする僕。
「おはよう。」
とりあえず、恐る恐る挨拶をしてみる。
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