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silent child

 
 10分もしない内に、カレンから返事がきた。


『ケンタ君、こんばんは。

 私は、実はもう、高校に合格しているの。推薦で、南高校の芸術科に決まったんだよ。
 私はやっぱりピアノが好きだから、将来はピアニストになりたいなって思っているよ。だから、音楽コースのある芸術科に入って、もっと技術を磨きたかったの。

 ケンタ君は、ギタリストになりたいのかと思っていたんだけど、違った?
 でも今は、大学で他の勉強をしながら、プロになる人もいたりするんだから、学校選びには直接関係ないかもしれないね。
 勉強をしながら、ギターを続けるっていうのも有りだと思うよ。

 それと、ケンタ君は、本当に大和君が好きなんだね。好きな人と一緒に、ずっと居たいって気持ちは、私にも分かるよ。
 でもね、大和君の、好きな人に、自分のせいで後悔させたくないって気持ちも分かる。
 だから、どっちの味方も出来ないや。ごめんね。
 私には、お互いに想い合う二人が羨ましいな。私も早く両思いになれるように、頑張るね!

 ちょっとは参考になったとしたら、嬉しいな。』


 カレンはやっぱりピアニストか、なんて思いながら画面をスクロールしていく。
 勉強しながら、ギターをやるっていうのも有りなんだなとか、僕と大和の気持ちがよく分かっているな、とか関心しながら読んでいたら……、最後の方がちょっとおかしいことに気付いた。


(私“も”両思いになりたいって何っ?!)
(好きって、そういう好きじゃないからっ!)
(そんな言い方、まるで僕達が……)

 恋人みたいじゃんか、とか思いながら、顔が一気に真っ赤になった。

(違う違うっ! 唯の幼馴染っ!)
(カレン、勘違いしてるっ!)

 冬なのに、顔がめちゃくちゃ熱くて、とりあえず手で扇いでおく。

 カレンに、誤解だってことを直ぐに返信したら、「冗談だよ、落ち込んでいるから元気だそうと思って」って返ってきた。
 カレンにまんまと嵌められちて慌てちゃった自分が、何だかおかしくて、声を上げて笑っちゃった。

 すっかり落ち込んでいた気分も、カレンのおかげで少しは復活してきた。

――元気をくれたカレンにお礼を言おう。
 感謝の5文字を送信したら、「早く仲直り出来るように、頑張れ!」と応援の4文字が返ってきた。

 それを見て、僕は苦笑。
 仲直り……、出来るといいけど……。

 ため息が、1つ零れた。
(早く仲直りしたいな……)


*****



 次の日の朝――。
 大和はいつも通り、家の前で待っていた。
 そのことに、ちょっとほっとする僕。

「おはよう。」
 とりあえず、恐る恐る挨拶をしてみる。


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