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silent child


 何も返せない僕。
 とりあえず、ご飯を黙々と食べた。

 ご飯を食べ終わり、「ごちそうさま」をして、席を立つ時、お母さんにこう言われた。

「受験は競争なんだから、仕方がないわ。
 大和君の分も、憲太が頑張れば喜んでくれるわよ。」
(大和が居ないなんて、無理だよ……)
「うん……、頑張る。」
 あんなに泣き喚いていたのに……、結局、僕には、理数科をやめたいなんて言えるわけもなかった。

 ちっとも変わらない、理数科を受ける予定の僕のまま……、再び部屋に戻る。

 ベッドに座って、今度は落ち着いて考える。
 冷静になってみれば、やめるだなんて大和に宣言したって、僕には実際にやめることなんて出来ないってことに気付いた。
 お母さんだけでなく、矢口先生にだって言うことは出来ないから……。それに、前回の三者面談で、進路は理数科で決定ってことになっちゃっている。
 大和はCが維持出来れば理数科、無理だったら普通科ってことで話がついてたから、変えただけ……。

(どうしよう……)
 大和と離れるなんて、嫌だ。
 でも、理数科をやめるだなんて、大和以外には言えない。唯一、言えた大和にだって、猛反対されケンカ中。

 どうしようなんて言ったって、どうもならないってことを、僕はちゃんと知っている。
 それでも、大和と離れたくないんだ。離れるってことを、認めたくない。
 普通科にしたって、絶対に大和と同じになれるなんて確証はないってことも、分かっているけど……。

 それに――、将来のことなんて、全然考えていなかった。
 行ける所に行って、大和と一緒に居られれば、それだけで良かった。
 だけど……、大和の言ったように、将来の職業まで同じにするなんて、きっと無理な話。そしたら、やっぱり大学だって、同じ所には行けない。

(将来なんて、分からないよ……)
 でも、ちゃんと考えなきゃいけないってことも知っている。


 マサキは、音楽の専門学校に行くって言ってた。音楽の勉強が出来て、ちゃんと高卒の資格も貰える所。
 きっと、マサキの将来の夢は、音楽関係の仕事に就くこと。

 ダイキは、この辺りで一番、偏差値の低い高校を受けるって言ってた。でも、偏差値が理由じゃなくて、軽音部が盛んだってことで選んだんだ。
 きっと、ダイキの将来の夢は、バンドマン。

 大和も、よく分からないとは言ってたけど、とりあえずは勉強したいって言ってた。選択の幅を狭めないようにって……。

(僕は……、どうしよう)
 皆より、大分出遅れてしまったような気がする。

(カレンは、どうするんだろう?)
 まだ、カレンの進路を聞いていないことに気付いた。
 参考になるかもと思って、カレンへとメールを打ってみる。


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