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silent child


 謝ろうとしていたはずなのに……、大和の突き放すような言い方に、また感情が膨れ上がってきて、収まりがつかなくなる。

「いいっ!! 普通科を受けるんだっ!!」
 ムキになって、また叫んでいた。

「意味ねぇーのに。」
 大和も冷たく返してくる。

「煩いっ!! 僕は絶対にっ、普通科を受けるんだっ!!」
「ふーん。」

「絶対に絶対なんだからっ!!」
「そ。もう、何も言わねーよ。」

「「……。」」

 その後は――、お互いに無言だった。
 いつもはあっという間に感じるスタジオまでの道のりも、今日は凄く長く感じた。

 楽しいはずのギターも、いまいち楽しくない。セッションしてみても、気分は盛り下がったまま。

 こんな大喧嘩は幼稚園以来。
 いつもは大和が、途中で意見を譲ってくれるから、こんなに大きなケンカに発展することはない。
 今回のケンカは……、いつもとは違う。
 お互いに意見を譲ることの出来ない今回は……、長いケンカになる予感がした。


*****



 スタジオから帰る間、いつも通り大和は隣に居た。
 いつもと違うのは、お互いに、始終無言だってこと。まったり出来るはずの沈黙も、今の僕達には、かなり気まずい気分にさせるってこと。

 こんなの、嫌だった。
 でも、大和と離れるのも嫌だった。

 家に帰ってきて直ぐ、ベッドに直行した。
 必死に堪えていたものを、吐き出してしまいたかったから。

 いつものように、ベッドの上で体育館座りをする。
 そこでまできて、僕は漸く泣いた。
 溜まっていた涙が、次々に溢れ出してくる。
「ふぅ……っ、……ぇっ。」

――大和とケンカをしちゃった。
 そんなものしたくなかったのに……。


 僕が泣いていると、なぜかいつも直ぐにやってきてくれた大和。
 今日は絶対に来ないって知っている。僕の頭をぽんぽんと叩くこともないし、僕をぎゅっと抱きしめてくれることもない。
 そう思ったら……、益々泣けてきた。
「ぅ゛ーっ、や、まとぉーっ。」

 僕は知っている。
 大和が、いつもよりちょっと厳しく言ったのは全部、僕のためだったってことを。カッとなって大嫌いだなんて言っちゃった、僕だけが悪いんだってことを……。 僕が大和に謝るべきだってことを……、僕はちゃんと知っている。

 でも――、怖いんだ。
 大和の居ないクラスで、学校生活を過ごすってことが……、怖くて堪らないんだ。

 だって――、僕にはまだ、喋ることは出来ないから。
 だって――、僕には自分から、友達を作ることが出来ないから。

 そんな学校生活が、どんなになるかなんて想像がつく。


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あきゅろす。
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