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silent child


 Eなんかじゃ、矢口先生が受けていいなんて言うはずないし……、普通科でさえ、合格率は50%。お金のかかる私学を避けるためには、本当だったら学校を変えて、安全牌を取るのが普通だ。


「普通科で出すよ。」
 大和の声と同時に、遠くでクラクションの音が響いた。

 それでも、僕の耳にはしっかりと答えが届いていた。
 だけど、僕の頭は理解するのを拒んだようで……、思わず、聞こえなかった振りをしていた。

「え? 何?」
「俺、普通科受けるよ。」
 聞き返したって、事実は変わるわけはない。

 小さい頃から、ずっと一緒に居た大和。
 僕には、離れるなんて考えられない。
 大和の居ないクラスで、学校生活を送るなんて考えられない。

 理数科だったら1クラス。絶対に一緒になれるはずだった。だけど、受けられないものは仕方がない。
 普通科は……、クラスが沢山。
 このまま僕が理数科を受けたら、大和と一緒になれる確率は、0%。
 普通科に変えたら、確率は10数%。

 それなら僕は――、迷わずに普通科を選ぶ。


「じゃぁ、僕も普通科にする。」
キィーーーーッ
 大和が急ブレーキをかけて止まった。だから、僕も慌てて急ブレーキをかけて止まる。

(何……?)
 意味が分からず、僕は大和へと振り返った。
「何で?」
 大和の声はさっきまでとは変わっていた。ちょっと硬くなって、ちょっと低くなった声。機嫌が悪くなってきた証拠。

「何で怒ってるの?」
(喜んでくれるんじゃないの?)
 大和の機嫌が悪くなったことが、不思議で堪らなかった。
 僕が普通科に変えたら、一緒に居られる可能性が高くなるのに……。

「何で、普通科に一々変えんの? 理数科に十分入れる成績なのに、意味ねぇーじゃん。」
(何でって言われても……)
 理由なんて、ただ大和と離れるのが嫌だから。
 確率だなんだって言ったって……、今まで同じクラスにしてもらえていたように、普通科にしたとしても、先生達が考慮して、同じクラスにしてくれるんじゃないかって……、どこか甘えた気持ちもあった。

 大和の顔から、笑みが引っ込んで、僕も何て言っていいか分からなくなる。

「今までのように、同じクラスにしてもらえるわけじゃないんだぜ? 今回は受験なんだからさ……。あの矢口先生が、調査書に、不利になるようなことを書くと思うか?
 そういう理由だったら……、変えるなんて言うなよ。」
(そんなこと言われたって……)
――この僕に……、大和と離れたまま、学校生活を送るなんてこと、出来るはずがないじゃんか!

「嫌だっ!! 普通科にするっ!!」
 大和と離れることが恐くて、分かってくれない大和に腹が立って……、ムキになって、顔を真っ赤にして叫んだ。


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あきゅろす。
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