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アリーナコート
ついに新幹線でこの地へやってきた。
テニプリキャラがわんさかいる楽園に。
――東京駅。
夢にまで見た世界が、私の意識をくすぐる。
ただ一つ、トラブルの予感。
遠山の金ちゃんが見当たらない。
現在、時間軸に直すと原作では金ちゃんがはぐれた回だ。
場所がわかっていても個人情報を守るため、口は固く縛る。

「もしもし、謙也……さん」
「何や、改まって」

忍足くんとの電話を終えた謙也を呼び寄せた。

「金ちゃん間に合うよね? 何なら誰かを変装させて整列だけしてもらえば」
「あの赤髪とタンクトップ、誰がまねできんねん」

わざとらしくとぼける私の話を、疑いもせずに流す。
仕方なしに私も流すつもりで、はまり役をあちこち探した。
そうすると目に飛び込んできたのがモノマネ上手な……。

「あ、あのお方とか」
「あほ。ユウジはレギュラーやっちゅーねん」

一氏くんを指さしたら、あほ扱いされた。
駅の構内でああだこうだ言い合う謙也と私を、通行人は冷めた目で見ていく。
恥ずかしながら、自分は視線を注ぐ側の人間で、注がれる側は慣れていない。

「何とかなるやろ! 気長に待っとこうや!」

オサムちゃんの言葉に頷き、謙也と離れた。
緊張する。
肩が凝る。
立ちくらみには萌え補充を。
萌え……そうだ。
最近不足がちなベストショットを求め、そこら辺りをうろついてみる。

「くえっ」

お尻を何者かに掴まれ、ギョロちゃんもびっくりの跳ね技を披露した。

「邪魔や」
「おおお女の股の反対部分を平然と掴むか君は!」

振り返れば財前くん。
邪魔だからって女のお尻に手を伸ばさなくていいと思う人、手上げて。
かえって卑猥な言い回しで応じる私に、財前くんは無表情で質問を投げかけた。

「どこ掴んでほしかったんや」

千歳くんらが見ているそばで、どう答えれば変態度を軽減できるか悩む。
触ってほしい所。
とりあえず今、君の手に狂いはなかった。
よくやった。
これ以上触られてオッケーな敏感部分はゼロ。
しばらくして、何も答えないのが最良だという考えに至った。
私のお尻など安いもの。
触りたくば勝手に触れ。
開き直り、笑顔を作る。

「痴漢行為だよ」
「優しく叩いただけありがたいと思え」

やっぱり腹立つ。
上から目線の態度に軽い怒りを覚えつつも、向けられた千歳くんの微笑みによって抹消できた。
やっぱりかっこいい。
その後みんなでバス停へ行き、アリーナコートを目指すこととなった。
大丈夫だよね。
金ちゃん、バスに乗って合流してたし。

「このバスに乗って行くんやで。先頭はレディーファーストちゅーことで桧之、ゴー!」

胸を張ってバスに乗り込む。
東京の人に混じり、なんだか変態度が増す一方な気がする。
変わった行動は避けないと。
そんで、青学とか氷帝とかたくさんキャラに会うけど平常心でいよう。
特に、あの人に会っても取り乱してはならない。
ごちゃごちゃ頭を動かしているうちに、私の目にある光景が映った。
あれは、原作で読んだ真新しい建物。
バスから降りて、とてつもなく大きく空気を吸う。

「東京、アリーナコート……やっとここまで来たー!」

全国大会の会場を前に、胸が躍る。
ここで数々の激闘が繰り広げられ、頂点の座も決まる。
私が追ってきた漫画の展開を、現実より先に知るなんて。
わくわくしてきた。
ただもう一つ、トラブルの予感。

「ありゃ?」

四天宝寺中学校男子テニス部御一行が、行方不明となってしまった。





To be continued.
20110325

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あきゅろす。
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