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ジャッカル視点
あれから(いつからかは聞かないでくれ)練習に練習を重ねてきた。
立海大附属は、全国大会連覇のみを目標に日々成長している。

「今日も偵察軍団が陣取ってるっスね」

そんな身の引き締まる環境下、堂々と遅刻した赤也。
罰で受けているスクワットの最中、周りに話を振った。

「毎年のことだ。目立つのはやはり全国各地の学校から集まったマネージャーだな」

答えたのは柳だけ。
こいつは罰を罰と受け取らず、一丁前に何でもやってのける。
生意気に器用な奴だ。
まあ、それくらいでなければレギュラーなど務まらないか。

「柳先輩はどれが好みっスか?」
「答える必要はない」

即答し、その場を離れた。
いきなり何を言うんだと思い、俺はベンチに座り込む。
柳に切り捨てられてこちらへ近づく赤也は、顔がにやけていた。

「相変わらずお堅いなぁ」

先輩をからかってばかりの後輩は手が焼ける。
遅刻したり、他校に喧嘩売ったり、赤目になったり。
今もスクワットは終わっていないだろうに、もう足が止まった。
真田に怒られるのはいつも俺。
想像するより先に少しうつむき、促してみる。

「練習に戻ったほうがいいぜ赤也。真田が戻る前に」
「へーい。あ、丸井先輩はこないだの女に興味ありますよね」

こないだの女と聞いてすぐわかった。
桧之希紀とかいう変な女だ。
よくフルネームで覚えていた自分に、ささやかな二重丸をあげたい。

「俺は知らねぇけどそうなのか?」
「だってあの女にもらったガム買い占めて部室に置いてるし」
「そのガムが美味かっただけだろ」

本人は見当たらないし、部室あたりにいるかもしれない。
あいつは自分の話をされると、必ず輪に入ってきてうるさいから。
確かあの女が来た時、ブン太一人様子がおかしかった。
でも興味というわけじゃなさそうな……。

「おもしろい話しとるのう」
「仁王」

突如輪に加わったのは違う男だった。

「仁王先輩も見ましたよね。ロッカーのガム山」
「見てないぜよ」

部室のブン太のロッカーは赤也の言うとおり、最近ガムで埋め尽くされた。
詳しく聞き出そうと嘘をつく仁王から、危険な匂いが漂う。
しばらく話題はその女の件で持ち切り。
四天宝寺の奴らが来たことを他のみんなに伝えてなかったのもあるけど。
仁王は説明が進むにつれて、怪しい笑みを浮かべ始めた。
良からぬ企みが鋭い目の奥で動いている気がする。

「それにしても単純ばかなあいつが……。きっといい女じゃろ」
「いや、ブン太は食いもんくれたら誰にでも懐くぞ」

俺には犬が飼い主に懐くような、そんな感覚に見えた。

「桧之希紀でしたっけ。真田副部長も女がマネージャーならいっつもご機嫌になるんじゃないっスかねぇ」

自分の置かれた現状に気づいているならこの言動はできまい。
眼前にマネージャー軍団。
背後に迫る黒い影。

「俺がどうした」

低い声が降ってくる。
赤也はひたすら逃げ回り、謝るも許してはもらえない。
罰を三倍増しにされ、大きな悲鳴を上げた。
やはり弱点は真田だな。

「なぁ、ジャッカル」
「何だ?」
「今年の四天宝寺は見物じゃな」
「言っとくが、マネージャーは変だぜ」

涼しい顔で他校に興味を示した仁王に、釘を刺す。
そうだ、ブン太を呼びに行こう。
重い腰が起きたところで俺は退散した。





To be continued.
20110117

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