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暇人のつどい
翌日、部活後解散して帰宅する。
ボウリングに行く人は、昼ご飯を食べて待ち合わせ場所に向かう予定だ。
楽しみな日曜日の午後。
まさか期待を突然の知らせに打ち砕かれようとは、考えもしなかった。

「用事できてしもた。すまん、今回俺不参加や。他の奴は行くやろうからよろしゅう」

無言で家に押しかけた財前くんに携帯電話を手渡され、受話体勢に入った矢先のこと。
私の耳に届く用件が理解できず、深く息を吸い込み一時停止した。

「最近部長付き合い悪いわ。彼女おるって噂やで」
「ぶえーっ!?」

リアクションを取ったはずみで、全部吐いた。

「音量下げろや大声女。悔しかったら自分も彼氏作れ」
「ノリで叫んだだけさ。そうだ、財前くんも行こ」
「暇人のつどいになんで俺が参加せなあかんねん」
「やっぱり口じゃかなわないー!」

家を飛び出し、白石くんに教えてもらってうっすらと覚えた道順をたどる。
そのあやふやな記憶で着いてしまうんだから怖いものだ。
集合場所はボウリング場の入り口。
そこに一つの影が見えた。

「あれ、小石川の健二郎くんじゃありませんか。おはようございます。盛り上がってますか」

「今はこんにちはやろ」あたりのツッコミが返ってくるかと構えて待つ。

「小春たちも来る言うてたけど来ぃひんな。先行っとく?」

しかし、不意打ち完全スルーときた。
これが空気を読んだ結果なら黙って納得しよう。
同時に妙な不安感が募る。
あと手を挙げたのは二人だけ。
私は小石川くんと交わした言葉の数がまだ少なく、話しづらい偏見を持っている。
ただ、どこかの誰かさんより打ち解けやすそうで“テニプリキャラ丸ごと仲良し計画”に支障はない人だと思う。
建物内に抜き足差し足忍び足でついていった。

「ドンマイ。次いけるで」

ふたを開ければ、さんざんな腕前。
苦笑い気味の小石川くんに励まされ、改めて自分の下手さを知る。
ボウリングってこんなに難しかったっけ。
部員と遊べる嬉しさ一心で来た自分がばかだった。
未経験の素人バンザーイ……じゃなくて、どれほどフレームを進めてもストライクやスペアが取れないどころか、投じた瞬間にガター続きのオチ。
ある意味笑いの精神を貫く姿を晒す。

「絶対ピンに嫌われてるよ」
「投げ方が悪いな。これでやってみ」

うなだれる私の隣に来て、持ち方から指導してくれた。
落ち込んだ時はこういう優しさが身に染みる。
今度お礼に好きな物をあげよう。
じっと十本のピンを見つめる。
その直後だ。
何者かによって横から放たれたボールが、使用中のレーンを転がっていく。

「ストラーイク!」

陽気な声が上がる。
しかもピンを残さず倒してしまい、視界の行き場を失う。
ルール違反にも程がある大問題だ。
試しに振り返って正体を確認しなければ気が済まない。

「小春に近づくな」
「こらユウくん。後ろから見てたらケン坊と希紀ちゃん、ラブラブやったわよ」

もう……何とでも言ってくれ。
はちきれんばかりに膨れた鞄をかつぎ、毎度お馴染みの二人が道化師の格好で騒いでいた。
君らは街をさすらう大道芸人か。

「横取りするなや」
「今のはお前のモノマネや。ちょうど二対二やし、さっさと始めるで!」

仕切り役は一氏くんに決まったようだ。
よくよく考えれば小石川くんとほんのわずかに仲良くなれた気がするし、この人ともぜひ距離を縮めたい。
ほぼ実現不可能な願望なのだけれど。





To be continued.
20100325

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あきゅろす。
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